第10話

「で、久しぶりの学校はどうだったよ」

「地獄ですよ、地獄」

 放課後。俺はいつものようにリオさんのライブへと足を運んでいた。あんなことがあったおかげで、今日は家で引きこもってやろうとも考えたが、誰かと話せる環境にいないとどうにかなりそうだったんだ。

「今までサボってたツケだよ。それに、周りの言うことなんか気にすんなって」

 陽気な声で彼女は言うが、あの状況でも同じことが言えるのだろうか……いや、リオさんなら言いそうである。こんなことで彼女の強さを再確認することになろうとは。

「ったく辛気くせえな……ついてこいよ」

「ついてくって、どこにです?」

「いいとこだよ」

 いいとこって、なんだ? ホテル? いや、まさかリオさんに限ってそんなこと……。でも、バンドマンならワンナイトの経験だってあるかもしれないし。

「なぁ、一応聞いとくけど、変なこと考えてねぇよな?」

「へ、へへ変なことってなんですか!?」

「図星じゃねえか。その予想だけは外れてるからな」

 そう言うリオさんの顔が少し赤らんでいたのは、俺の見間違いなのだろうか。

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