第9話

「あの……すみませーん」

 講義後。俺は教務室を訪れていた。受付の人に話を通し、担任を呼んできてもらう。これまで来ていなかった分の資料なり講義の情報なりが欲しかったからだ。

「はいはい……って君は……」

 担任が出てくると、俺の顔を見て驚く。そりゃそうだ。今まで来ていなかった人間が急に顔を出して呼びつけるんだ。何を言われるか分かったものではないだろう。

「どうしたの、急に」

「い、いやぁその。今までの資料とかってもらったりできないかなぁと思いまして……」

「資料? そんなこと急に言われてもないよ」

 見てもいないじゃないか、とは口が裂けても言えない。反抗的な態度を取ったところで、状況は悪化するだけだからだ。

「そこをなんとか……ある分だけでいいんです」

「とは言うけどねぇ。君が来なかったのが悪いんでしょ?」

 何も言い返せない。どれだけ厳しい言葉でも、それが正論であることは事実だからだ。

「それに、他の子にコピーさせてもらえないの?」

「そう、ですね……」

 いきなり揉めたとも言えないしなぁ……。ここは黙って引き下がるしかないか。最悪、講師の先生に頼みなおせばいい話だし。

 期待したものを得られないまま、俺は学校を後にするのだった。

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