第42話
「ってことで……お疲れさまでしたー!」
「お疲れ様です!」「お疲れ」
「お疲れっす!」「おっつー!」
審査会後。リオさんたちの終了を待ったのち、ネバーロールの面々と店長でライブハウスに集まっていた。要は打ち上げだ。信也さんが先導の元、各々がプラコップに入れられた飲み物に口をつける。
「んじゃ、早速だけど……報告会といきますか」
「ですね……どっちからにします?」
「タカのほうから聞きたいかな」
リオさんが真っ先に口を開く。ライブ後でドーパミンが溢れているのだろう。いつもより食い気味に話を振ってくる。そして彼女の一言で皆の視線は俺のほうへと集まった。
「俺は……なんとか佳作に選ばれました!」
「っつーとなんだ? 成功ってことでいいの?」
「大丈夫です」
「やったじゃんタカち! おめでとう!」
「うっさ……とにかく、おめでとうタカ」
「おいマツリ! お前飲み物こぼしてる」
「いいじゃないっすか! めでたい報告の前では些細なことっすよ」
店長の声が大きすぎて聞こえづらいが、皆俺の結果に喜んでくれていた。いやまつりさんは一度冷静になってほしいけど。
とはいっても、俺が報告できることなんてこれだけ。肝心なのはリオさんたちのほうだ。
「俺の報告は以上なんですけど……ライブはどうでしたか?」
ライブに出演した三人が何かをこらえるような顔を突き合わせる。その表情からは、結果を察することができない。
「なんと……」
「なんと」
「なんとぉ!」
「なんと……って焦らさないでくださいよ」
「ごめんごめん。結果はさ……」
リオさんが息を吐く。そして……。
「ギリッギリだめだった!」
「え……」
ニカッと歯を見せながら、リオさんは言った。
心にガツンと衝撃が走る。少し期待はしていたけど、ダメだったのか。まぁでも結果が報われなくても、やれることはやりきったんだ。悔しさはあっても、後悔なんてものはないだろう。だからこそ、彼らは笑っているのだから。
「まぁ、ダメって言ってもさぁ。惜しかったんだよ……な?」
「そうっすよ。あと一割くらい埋めることができりゃ成功だったんすから」
「そうなんですか?」
「本当だよ。だから、後悔はしてない」
それだけできれば上々だ。トレイルロード時代のファンがいてくれたとしても、受け入れてくれるかは別問題だし。胸を張っていいだろう。
「あと、あの曲。社員さんからは褒められてたよ」
「そうそう、なんだっけ? 小林……とか言ってたっけか?」
小林さん。確か電話対応してくれた時に、最初に出てくれた人だ。今回の話を上司にかけあってくれたのも彼である。そっか。あの人も観に行ってくれてたんだ。俺の我儘に付き合ってくれただけでも感謝なのに……。
「とにかく! 結果がダメでもお前たちの可能性が潰れたってわけじゃない。また頑張ってりゃ次があるさ」
「ま、その次が女王様のお気に召すものだったらね」
「なんか言った?」
「い、いえ滅相もございません! タカちなんとかして!」
「知りませんよ……自分で言ったことなんですから自分で責任取ってください」
「看病してあげたのに!?」
「それを盾に使います!?」
仕方なく店長とリオさんの間に入る。バカなことをしながら、長い夜は更けていくのだった。
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