第2章
第5話
「んー……」
夜の公園での出来事から一週間。
俺は自室とリオさんのライブを往復する生活を送っていた。歌詞の制作なんて当然したこともない俺は、彼女の意見を聞きながらとにかく書きまくることしかできなかった。
それでも結局作業は進まず、ただただ時間だけが過ぎていく。改めて前を向き走り出したはいいものの、ブランクというものからは逃れられないらしい。
そうしてあーだこーだと言っていると、スマホが鳴る。この着信音は智だ。
「もしもし?」
『あー、孝明? 今日空いてね?』
「悪い、今ちょっと作業しててさぁ」
『作業? どうしたんだよ急に』
さて、どう説明したものか。電話越しで一から十まで伝えるのも面倒だしなぁ……。
「ちょっと久しぶりに書きたいなって思ってさ。ほら、俺たちずーっとサボり続けてきたじゃん」
本当にザックリと事だけを話す。だが、それに対しての受け答えが返ってこない。
「どうした?」
『あー、いや別に。ならいいや』
「あ、おい」
こちらが何かを言う間もなく、通話は終わりを迎えた。いつものように遊びへの誘いだったのだろうか。だったら少し悪いことをしたかもしれない。
「って、違うだろ」
両の頬を平手でたたく。リオさんの手伝いをしながらまた走り始めると決めたのは自分だ。たとえ智には悪いと思っても、そこに戻ろうと考えてちゃいけないんだ。
できるなら智にも同じように歩き始めてほしいけど……まぁ、それは無理な相談だろう。奴はそもそも創作畑の人間じゃない。遊ぶための猶予期間を延ばしたい。かつ、一人暮らしをするために親から離れた都会がいいなんて理由で来た典型的な遊び人なのだ。俺がいくら説得をしたところで、ウザがられて疎遠になるのが目に見えている。
というわけで自分の作業に没頭するのが最善……なのだが、少しの出来事で何かがひらめくわけもなく。完全に手詰まりだった。こうなるととるべき手段は一つ。
「……学校へ行こう」
サボりにサボったツケを取り返すなら今しかない。藤原孝明のリベンジ計画が幕を開けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます