第1章
第1話
「なぁ
「ん? あー……」
キンキンに冷え切った部屋の中で、コントローラーを巧みに操作する。
これが
隣で智がなんか言っているような気もするが、指の動きに意識を取られているせいで頭に入ってこない。すでに十回はクリアしたであろうRPGをいまだにやり続けているのは、金がないくせにバイトをしないからだろう。親の仕送りで最低限の生活が保障されているとはいえ、学校にも行かずにただボーっとする自堕落な生活。当事者としては天国のような状態だが、真面目に通っている同級生に合わせる顔がない。
「おいっ!」
「うわぁっ!?」
不意を突いた大声に、俺は思わずコントローラーを投げ捨ててしまう。耳元で叫びやがったのか、脳が激しく揺れているような感覚が俺を襲った。
「いきなり叫ぶなよ! 鼓膜破れたかと思ったわ!」
「お前が全然話を聞かねえせいだろうが! そろそろ予定あるから帰ってくれって!」
「あー、悪い悪い。んじゃま、お邪魔虫は帰りますよっと」
「何おっさんみたいなこと言ってんだ。老けるぞ」
「うっせ」
軽口を叩きあいながら、俺は立ち上がる。何があるのかは知らないが、家主に出て行けと言われて居座るような度胸は俺にない。散らかしていた荷物をまとめ、俺は奴の家を出た。
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