第4話 ヒトの優しさ
検査を終え部屋に戻って来た僕は、ベットに腰を掛け一息ついた。
部屋に戻ってくるまでの
さっきまでいた検査室と僕のいる部屋までは、曲がり角はあるものの同じ階だったため、この建物が何階建てなのか?どこの病院なのかも分からなかった。
「お待たせー!」
部屋の扉が勢いよく開き、アストレアさんが戻って来た。
「じゃ、行こうか」
「……どこに?」
僕は今、病院の前にいます。
(どうしてこうなった?)
アストレアが部屋に戻ってくるなり「じゃ、行こうか」と言い、どうしてそうなったのか?と事情を聴く前に、流れるように私服に着替え病院の外に出たところだ。1人で部屋を出たところ看護師と鉢合わせしたが、「お大事に」と言われただけだった。
(……退院ってことで良いんだよね?)
「とりあえず行くか」
病院の前で立ち尽くして居ても仕方ないので、アストレアが待っている駐車場まで歩くことにした。
駐車場まで行くと
「待ってたよ~。さぁ、乗って乗って」
アストレアが自分の車に乗るよう促す。そんな優しい彼女を前にして、僕は少し考えてしまう。
ルナ=アストレア。彼女は、
恩人だからって普通ここまで、他人のことを思ってくれるものだろうか?
1日にも満たない時間だが、彼女が優しい人なのが分かる。けどだからってその優しさに甘えていいのだろうか?
いつの間にか僕の視線は、アストレアから地面のアスファルトに向いていた。アスファルトに残った水たまりが、
「ありがとう」
そんな言葉が落ちた。
僕の言葉に彼女が反応したのが、分かる。
「ここまでで大丈夫だよ。これ以上君に迷惑をかけるわけにもいかない。あてはないけど、とりあえず残った記憶で何とかしてみるよ」
勢いに乗った筆のように僕の口から言葉が流れる。
言ったことは、嘘ではないけど本心ではある。彼女は、優しい人だ。でもその優しさに甘える続けるわけにはいかない。
地面に向けた視線を彼女に向けること無く僕は、その場で振り返り背を向け歩きだした。
!
歩き始めた足は、一歩目で止まった。
右腕から体温が伝わってくる。冷たい体温が、
自分の右腕に視線を送ると、誰かが掴んでいた。その手は力強く振り解くことも出来ないほどに。僕の腕よりも細く白い手が。
「……自分のことを迷惑だなんて思わないで。私は、」
振り向くとアストレアがいる。彼女の綺麗な目に僕が映ってる。そして僕の目に映っている彼女は、とても だ。
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