第二節 過去から続いてること
第9話 存在しないハズのモノ
「よっしゃー!レベル100…やっと1体目だ~」
嬉しさとまだ続く地獄に対してのため息が口から洩れる。
ソファの上で携帯ゲーム機から画面を逸らし、天井を映す。
僕
居候の分際で遊んでるんじゃねぇ!とはたから見れば思うことだろうが、別に遊んでいるわけでは無い。これは仕事だ。
何故僕がゲームをしているのかと言うと話は、一週間ほど前に
――――― 一週間ほど前
「はいこれ。灯くんのデバイス」
ルナ=アストレアの家に住み始めてから2,3日経過したころだ。
仕事から帰って来た彼女が、ポケットから取り出した板状の機械を僕に渡した。
【デバイス】
この島に住むほとんどの人が持つ携帯端末。通信・通話機能や買い物などで使う決済機能は勿論のこと。他にも様々な機能が備わっている万能な電子機器だ。
渡されたデバイスの電源を入れ、ホーム画面が映し出される。
画面をスクロールし、プロフィールデータの入ったアプリをタップ。アプリが起動し、画面に登録者名が表示された。
【登録者:海道 灯】
デバイスには、僕の名前が登録されている。
「このデバイス?どこで」
頭の中にある1つの疑問をルナに投げる。
このデバイスは、ルナと会う前に既に無くなっているはずだ。でも今無くなったはずのモノが僕の手にある。
「え~と…拾った?」
「なんで疑問形」
ルナは、首を傾げ「ん~」と目を細め難しい表情をする。一息、深呼吸を挟みルナは説明した。
ルナによるとこのデバイスは、厳密には僕の持っていたモノでは無く。僕のデバイスからデータを移した別のデバイスだそうだ。
僕を助けた日に半分に割れて落ちてたモノを回収し、機械に詳しい知り合いに修理を依頼していた。ただ…移せたデータは、プロフィールデータと他1つだけだと。そういうことらしい。
「ごめんね。ちゃんと返せなくて…」
デバイスを見ている僕の表情を目にしたからか?ルナが謝る。
ルナが悪いわけじゃない。
本来帰ってくるはずの無いモノが、今僕の手にある。それだけ十分じゃないか。
「ううん。ありがとうルナさん」
僕の言葉に俯いた表所の彼女が、顔を上げパッと明るくなる。
プルルルル。
部屋の中で機械音が鳴り響く。
「もしもし……」
ルナは、ポケットから取り出したデバイスを耳にあて通話を開始する。僕は、デバイスのデータが他に残ってないか画面をスクロールしたり、初期からある数種類のアプリをタップすることにした。やがて僕は、とある画面で手を止めた。
手を止めたのは、連絡先が保存されているアプリだ。
アプリには、1人の名前があった。
「これは、…」
デバイスの画面に指が近づく。
「灯くん!」
その時、ルナの声が僕の手を無自覚に止めた。
「手伝ってくれない?」という彼女の声に僕は、「…何を?」と返答する。
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