第二節 過去から続いてること

第11話 存在しないハズのモノ

 「よっしゃー!レベル100…やっと1体目だ~」


 嬉しさとまだ続く地獄に対してのため息が口から洩れる。

 ソファの上で携帯ゲーム機から画面を逸らし、天井を映す。

 僕 海道かいどうともりは今、居候いそうろう先であるルナ=アストレアの家で、昼間からソファに寝そべりながらゲームをしている。家主のルナは、仕事のため外に出ている。

 居候の分際で遊んでるんじゃねぇ!とはたから見れば思うことだろうが、別に遊んでいるわけでは無い。これは仕事だ。

 何故僕がゲームをしているのかと言うと話は、一週間ほど前にさかのぼる。


――――― 一週間ほど前


 「はいこれ。灯くんのデバイス」


 ルナ=アストレアの家に住み始めてから2,3日経過したころだ。

 仕事から帰って来た彼女が、ポケットから取り出した板状の機械を僕に渡した。

 

 【デバイス】

 この島に住むほとんどの人が持つ携帯端末。通信・通話機能や買い物などで使う決済機能は勿論のこと。他にも様々な機能が備わっている万能な電子機器だ。


 渡されたデバイスの電源を入れ、ホーム画面が映し出される。

 画面をスクロールし、プロフィールデータの入ったアプリをタップ。アプリが起動し、画面に登録者名が表示された。


 【登録者:海道 灯】


 デバイスには、僕の名前が登録されている。


 「このデバイス?どこで」


 頭の中にある1つの疑問をルナに投げる。

 このデバイスは、ルナと会う前に既に無くなっているはずだ。でも今無くなったはずのモノが僕の手にある。


 「え~と…拾った?」


 「なんで疑問形」


 ルナは、首を傾げ「ん~」と目を細め難しい表情をする。一息、深呼吸を挟みルナは説明した。

 ルナによるとこのデバイスは、厳密には僕の持っていたモノでは無く。僕のデバイスからデータを移した別のデバイスだそうだ。

 僕を助けた日に半分に割れて落ちてたモノを回収し、機械に詳しい知り合いに修理を依頼していた。ただ…移せたデータは、プロフィールデータと他1つだけだと。そういうことらしい。


 「ごめんね。ちゃんと返せなくて…」


 デバイスを見ている僕の表情を目にしたからか?ルナが謝る。

 ルナが悪いわけじゃない。

 本来帰ってくるはずの無いモノが、今僕の手にある。それだけ十分じゃないか。

 

 「ううん。ありがとうルナさん」


 僕の言葉に俯いた表所の彼女が、顔を上げパッと明るくなる。

 

 プルルルル。

 部屋の中で機械音が鳴り響く。


 「もしもし……」


 ルナは、ポケットから取り出したデバイスを耳にあて通話を開始する。僕は、デバイスのデータが他に残ってないか画面をスクロールしたり、初期からある数種類のアプリをタップすることにした。やがて僕は、とある画面で手を止めた。

 手を止めたのは、連絡先が保存されているアプリだ。

 アプリには、1人の名前があった。


 「これは、…」


 デバイスの画面に指が近づく。


 「灯くん!」


 その時、ルナの声が僕の手を無自覚に止めた。

 「手伝ってくれない?」という彼女の声に僕は、「…何を?」と返答する。


 


 


 



 

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