第14話 依頼人

 「どうぞお席へ」


 未島さんに促せれ僕とルナは、先に座っている3人の隣の席に着いた。席に着く際、ルナが一瞬隣の席の人と会話をしているのが眼に映った。

 ルナの隣に座っている紺色の制服を着た男性。ルナとどんな関係なのか気になったが、僕らが席に座ったのを確認した未島さんが依頼内容を口にする。


 「…これを見てください」


 未島さんは手元のクリアファイルからプリント用紙を1枚ずつ取り出し、僕らへ渡してきた。ただ…プリントは4枚しか印刷してなかったため僕はルナに渡されたプリントを彼女と一緒に目を通すことなった。

 それはそうだ。本来ここに僕が来ることは予定外なのだから。

 僕はルナの持つプリントを覗き込んだ。


 【予告状

  成瀬継実へ

  10日後のイベントにて貴方の命を貰います】


 コピーされたプリントには、新聞紙や雑誌の文字を切り取って張り付けた文が記されていた。


 「これって…」


 「殺害予告か」


 あ、先に言われた。

 僕と同じこと。いや僕らが感じたことを誰かが口にした。

 その声が聞こえて来たほうは、僕が座る席の同じ列で丁度反対側に座っている人物からだった。

 離れた位置のためよく顔は見えなかったが、その人の言葉には重さを感じた。

 彼の言葉に未島さんは、依頼内容の説明を続ける。


 「はい。このメッセージが送られてきたのは3日前でして、皆さんには当日のイベントで彼女”成瀬継実”の護衛をお願いしたいのです」


 僕らに対して未島さんは、深く頭を下げる。


 護衛…


 その単語に考えてしまう。僕の記憶は不完全な状態だ。ルナに頼まれた依頼も命が関わるも無かった。自分に出来るのか?そんなことを考えてしまう。

 ふと僕の視線が机を境に目の前に座っている彼女・成瀬さんに向く。

 成瀬さんは俯いていて暗い表情を浮かべており、その身体が恐怖に対して少し震えているの。

 こと。依頼内容の重さに僕の決断に迷いがあった。


 「承りました。僕ら【特別犯罪対策課とくべつはんざいたいさくか風鳥かぜとり支部しぶ】にお任せください。完全に彼女をお護り致します」

 「よろしいですよね?支部長」


 「ああ、」


 席についていた1人が立ち上がり、依頼を受けると未島さんに対して答えた。

 

 「はやてさん。ありがとうございます」


 未島さんも依頼を受けてくれた人にお礼を言う。

 依頼を受けると答えた颯と呼ばれるその人は、ハキハキとした声で見た目は20代くらいの男性だ。

 僕の視線が再び成瀬さんのほうへ戻る。

 (僕に彼女が護れるのか?)

 僕の肩に手が置かれる。置かれた手のほうを向くとルナの真剣な表情があった。


 「どうする?この依頼受ける?」


 ルナは、僕の耳元に僕にだけ聞こえる声で僕に聞くのだった。

 

 

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