断章 ピーク越えの一時
十一時から十四時にかけて提供しているランチタイム。
つい先程その時間を終えたここ喫茶店守花では、僕ら従業員が壁やカウンターに寄っ掛かり疲労の一息を零していた。
「疲れたね。守」
「そうですね。平日とは言え世間は夏休みですから」
「加えて、今日はあたしらだけだしね」
「仕方ありませんよ。みんな思い出作りだったり、進路だったりで、色々あるんですから」
カウンター席のテーブルに顔を付ける店長の黒崎華。だらしなく見えるが、正直こうなっているのは仕方ない。
ここ数日、彼女は僕・白花守と共にある青年に特訓をつけていた。それに加え、今日は夕方まで二人で店を回さなくちゃいけない状況にある。
どんな人間であれ、ここまで忙しければこんな状態にもなる。僕も今日はよく肩を回している。
「そう言えば、今頃だよね。例の任務って」
テーブルにつけていた額をふっと上げる華さん。
「そうですね。時間ですと今頃か?もう終わっているか?今のところネットニュースにはそれらしき記事や呟きは上がっていませんね」
「・・・そっか」
エプロンのポケットから取り出したデバイスで最新の情報を閲覧していると反応を見せる華さんの静かな声が流れてきた。
「心配ですか?」
「ううん。仮にもあたしらが鍛えた子だ!ルナもいるし、大丈夫だよ。相手が神様でもない限り」
「・・・ですね。何処ぞの組織のトップでもない限り」
そんなやり取りをしつつ僕はコーヒーを淹れたカップを一つ、華さんのいる席へと運ぶ。
「はい、どうぞ」
「ん、ありがとう」
そう言ってテーブルから起き上がった華さんは、カップを受け取るとそのままゆっくりと口に含んだ。
「じゃ、この後も頑張りますか。あの子たち、今日も来るだろうし」
「・・・ですね」
華さんの気合いを入れ直す声に応えつつ僕は、自分が持っているカップに口をつけるのだった。
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