第18話 対策会議
「始めます」
膝ほどの高さのテーブルに備えられているタッチパネルの操作を始める颯さん。
部屋の明かりが消え、窓際中央に設置されている支部長席の前に複数の画面が展開される。
部屋にいる全員の視線が展開されている画面に向く。
「これは…」
「これは当日のイベント会場の図面を含め、未島さんから頂いた情報を簡単に纏めてたデータになります」
思わず口から出た反応に颯さんが丁寧に説明してくれる。
展開されているデータの中で一番大きく映し出されていたのは、イベント会場の図面だ。
「3階建てか」
「はい。御覧頂いてる通り会場は3階建ての造りになっています。お客さんが入場してくる1階の入口・各階の通路とそれに繋がる階段が左右に一か所づつ、イベントスペースは舞台に対して弧を描くように客席が設置されています」
膝の上で肘を立て図面を凝視する松原さん。展開されている図面について解説を行う颯さん。
「イベントの開始時刻は午後1時30分。初めに先行公開されるという新作アニメの上映が約45分ほど。その後5分ほど間を入れてから監督やキャストなど関係者によるトークショーとなります。こちらは30分~40分と予定しており、早くて14時30分、遅くとも15時にはイベントは終了する予定です」
「つまり護衛の時間は最低でも1時間30分」
「その通りです。…ですが、」
耳にする当日の流れにだいたいの予測時間を口にする僕。その言葉に同意する颯さんだが、彼のその返答は歯切れが悪く苦い表情を見せていた。
「予告通りならね」
颯さんが口にしようとしたであろう言葉を僕は、隣で真剣な表情を映しているルナ。彼女の口からその続き耳にした。
「予告通り?」
その言葉を復唱すると頭の中で先ほど目を通した予告文が蘇る。
【予告状:成瀬継実へ、10日後のイベントにて貴方の命を貰います】
”イベントにて”その予告通りならイベント中、
思考を巡らせる僕の眉間にしわが寄る。
「アストレアさんの言うとおりです。予告犯がイベント中だけでなくその前後の時間も含むと考えていたら我々が想定している時間より長くなります」
険しい表情を見せる颯さん。
「まぁ、昔の人たちは帰宅するまでがイベントだ。とか言うのもあったらしいからな」
「……」
その言葉が部屋に流れたからか。妙な沈黙が部屋の空気を支配した。
「え、知らない。この言葉⁉」
僕らの反応に目を丸くする松原さんが預けていた背中をソファから離す。
「…何年前の言葉ですか?それ」
颯さんが冷たそうな目を松原さんに送る。
「え、20世紀後半から21世紀の…」
「そんな100年以上も前のこと言われても分かりませんって」
「あ、マジ」
松原さんの意外なモノを眼にした表情に対し、颯さんは呆れたのか?頭を抱えている。
「…だが、その考え方は頭に入れておいて損は無いだろう」
静かにそれを口にしたのは、支部長の凩さんだ。
「はい。そのことに関しては私も同意です」
凩さんの言葉に頷く颯さん。
「それでは続けます」
颯さんのパネル操作によって、イベント会場の図面と入れ替わるかたちで別の画面が展開されていく。
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