断章 留守電

 時刻23時半ごろ。 とある車内にて。


 暗く静かな空間。運転席のほうで、電子音が鳴る。

 ルナ=アストレアが、デバイスを操作している。

 操作していたデバイスを自身の耳にあてる。


 「プルルルル」「プルルルル」


 デバイスから流れ出る呼び出し音が、小さな車内に響き渡る。

 少しして、デバイスから電子音が流れて来た。


 「相手の端末にお繋げできませんでした。何か御用がありましたらメッセージをお願いします。」


 相手のデバイスに繋がらず、ルナの表情が暗くなる。そんな彼女の表情を車内の暗さが、誰にも分からないようにしている。

 ルナは、耳にあてているデバイスに声を送る。


 「もしもしお姉ちゃん?聞いてよ朗報だよ!やっと見つけたんだ例の子!」


 「実はさ、今日人助けをしたんだ。でさ、その助けた子が、例の子だったんだよ。ビックリだよね!」


 「いや~、私の運ってホント最強だよね!ただ…少し問題があったんだけどさ」


 「心配しないで、大丈夫だから。…また何かあったら連絡するね」


 ルナは、笑いながらメッセージを送る。でも少し寂しそうな表情を浮かべていた。


 「たまには、そっちから連絡してよね!じゃ、おやすみ」


 メッセージを送り終え、デバイスの通信を切る。

 通信を終え一息つく。

 ルナは、自身の着ている上着の内ポケットからおもむろに1枚の紙を取り出した。

 取り出された紙はボロボロで、その紙には1人の男性と2人の少女が写っていた。

 右手に持ったその写真を見るルナ。ふと彼女の口から声が零れた。


 「……マスター。私は、」


 こぼれ落ちた言葉はすぐに消え、ただ物音もしない静かな時間。


 

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