第2話 月はそれを消させない
激しい降る雨が、吹き荒れる風が、鳴り響く雷が、外の環境を支配していた。
時刻は、14時半を過ぎたところ。おやつ前の時間だというのに真っ黒な雲が、空一面に広がり、太陽の光さえも届かないほど外は真っ暗だ。
この時間。いつもなら沢山の人々や車が行き交うこの道も今日は、その影すら無かった。…ただ一台を除いて。
古臭いエンジン音が、段々とその道に鳴り響いてきた。
肩先までかかる黒のメッシュが入った白い髪に、目鼻立ちの整った綺麗な顔の女性。
彼女の名前は、ルナ=アストレア
ルナが運転する古い車が「ブロロロー‼」排気音を落としながら、水たまりを蹴り上げて行く。
風が車を強く揺らす。車内に聞こえるほどの強い雨粒が窓を叩く。そのせいか?運転席にセットしている携帯端末【デバイス】から流れる音声は、擦れてルナの耳に届けられていた。それほど車外の状況が悪いものとルナは、認識していた。
外の状況が悪くても信号機は、機能していた。信号は、ちょうど赤を示していた。ルナは、ふと運転席にある小さな収納スペースに手を伸ばす。
中に入っていたのは、口の開いたエネルギーバーの箱が一つ。しかし手に取った箱は、軽く。中を覗いてみると空っぽだった。
(…しまったー⁉補充し忘れた!)
空っぽの箱を片手に肩を落とすルナ。そんな彼女にはお構いなしに、信号は赤から青に変わる。ルナはアクセルを踏みなおし、荒れた外を進んで行く。
「はぁ~。そもそもなんでこんな日に限って、依頼が来るかな~?しかも3件」
「私じゃなかったらやばかったよ!いや、マジで!」
ため息と疑問を
信号が変わってから少し経ち、とある橋の
運転席の窓越しからルナの目に映っていたのは、1つの影が橋の
こんな最悪な天気の中、何をしているのか?
まさか?と思いルナが興味本位で見ていると、次の瞬間その影は、欄干から飛び降りた!影が落ちてから少しして雨よりも大きな水の音がルナの耳に流れる。人が落ちたという現実が彼女の白い目に映る。
「…ちょ、待って、待って、マジで⁉」
ルナは、シートベルトを外し車から降りる。車外に出た彼女を荒れた天気が襲う。ルナは、そんなことを気にせず橋の車道と歩道を分けるガードレールを飛び越え、その人が落ちた場所を見下ろす。しかしそこに人影は、無かった。
ルナは、落ちた人を助けようと欄干に上に立ち、氾濫した川へ飛び込もうとする。しかしルナは、一瞬止まった。
助けようと思った時だ。彼女の頭の中で一つの記憶が
ルナは、自身の頭を左右に振って記憶を
ドヴォン‼
真っ暗で何も見えない水の中。ルナは、その空間内のあらゆる方向を見渡す。が落ちた人は、見当たらない。それでも時間は、少しづつ経過していく。
(…埒が明かない)
人の命が、かかっている。
暗闇の水中で、ブクブクと、冷静に一定量の息を吐くルナ。
(久しぶりに使うか!)
暗闇で彼女が目を閉じる。
視界を彼女自身が持つ、暗闇が覆う。
彼女は両手を合わせ、心の中で詞を唱える。
(白き月が照らすは、未来示す道。その未来は、望む形へと昇華して、我が力と成る)
詞を唱えるルナが、段々と光に包まれる。その光は、球体を形成し、やがて光の球体を内側から切り裂くようにして、ルナが現れた。
切り裂かれた光は、水中で四散した。
光から現れたルナは、人の姿ではあったが、所々変化していた。
彼女の元々白かった眼は、左のみ銀色に変化していた。加えて大きな剣を右手に持ち、反対の左手は、トカゲや本・映画で観るような恐竜に近い鋭い爪の生えた特徴的な手に変貌していた。
ルナは左手を前に出し、小さな銀色の光を作り出した。光はルナの手から離れ、ある方向へと進んで行った。
光が進むほうへ、ルナも後に続く。
段々と光に人影が映り込む。
(いた!)
人影を確認したルナは、速度を上げその人のほうへ向かう。
光に映ったのは、若い男性だった。
水中を漂う青年
‼
青年を脇に抱え、ルナは浮上して行く。
・・・・・・
浮上しようとした時だ。
ルナとルナが抱えている青年を捉える様に、誰かの視線が2人に向けられる。その視線に、一早く気づくルナ。
「これは、あんたの
暗闇にいるその存在にそう言うと、ルナは浮上して行った。
ぷはっ!はぁはぁはぁ、
「君!大丈夫!」「ねぇ!」
水中から上がってきたルナは、抱えていた青年に声かける。しかしルナの呼び声に青年の返答は無い。
ルナは橋に止めておいた車に戻り、青年を乗せ、Uターンし病院のある
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