断章 月が去ったあと
コンクリートを叩く足音が、あたりに響く。
足音の主は、白い看護服に身を包んだ女性
彼女は階段を下り終え、そこから一番近い部屋の前に行き、ノックもせず扉を開け中へと入っていった。
彼女が入った部屋には様々な電子音が鳴っており、空中には色々なデータを表示しているパネルが展開されてた。
部屋の奥でそれらを操作するコンソールの
「おし!勝てる!あと少しだ!」
「先生。何をされているんですか?」
「うわっ⁉」
薬が耳元で
影が操作していた小さな機械からは、[GAME OVER]を意味するBGMが流れている。
崩落した本のほうへ視線を向ける彼女。やがて埋もれていた影が姿を
「けっほ、けっほ、急に
「別に脅かしたつもりはありませんが」
埃に当てられながら先生と呼ばれる男性が言うも、その言葉に彼女は淡々と返す。
「あー!ほら見ろよ。お前のせいで負けちまったじゃねぇか!やっと勝てるところだったんだぞ!」
「知りませんよ。そんなの」
少し泣きそうな顔で男性は、薬に[GAME OVER]と映っている画面を見せる。しかしそんなことは無視して、薬はポケットから一枚のメモとディスクを取り出した。
「月のほうの女神からです」
「
男性は薬からその2つを受け取り、メモのほうを確認する。
【
急で悪いんだけど海道くんの現状について調べておいて。
薬ちゃんから聞いてると思うけどあの子今記憶が曖昧みたいだからよろしく。
こっちで調べておいたデータは、ディスクに
楽は、自身の手を
「めんどくせ~」
口から一瞬の感情が
楽の前に読み込まれた次々とデータが展開されていく。
「薬。とりあえず
「了解しました」
後ろで控えていた薬に指示を出す。それに薬は、ただ返答した。
少しの沈黙のあと、扉の開閉音がした。
「厄介なことになったな~」
楽は一人になった部屋で、コンソールのキーを打ちながら
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