第31話_青森ダンジョン
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031_青森ダンジョン
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日本には、
青森県(八甲田山・森型)、新潟県(春日山城跡・城型)、東京都(奥多摩湖畔・宮殿型)、岐阜県(藤橋・洞窟型)、和歌山県(十像岩・海中型)、岡山県(前島・洞窟型)、鳥取県(鳥取砂丘・砂漠型)、大分県(血の池地獄・熱帯洞窟型)、熊本県(阿蘇中岳・洞窟型)、沖縄県(玉陵・墳墓型)
北から攻めることにした俺は、青森県に入った。
まだ雪が残る青森だが、雪の中でも問題なくダンジョンに辿りつけることも視察するポイントの一つだ。
仰々しい視察団で行くとJDMAの各支部の業務の邪魔になると思った俺は、岐阜支部で偽名のダンジョンハンター登録をして1人で向かった。
権力を私的に使ったわけではない。その証拠に偽名に関しては伏せているが、各ダンジョンの支部長には連絡してある。
道はしっかり整備されていてる。雪の除雪もバッチリだ。
バスは1時間に最低2本、最大6本が出ている。午前0時から午前5時までは、1時間に1本出ている24時間体制だ。これなら交通に関する問題はかなり少ないだろう。
俺は朝11時過ぎのバスに乗ったが、結構な混雑ぶりだ。
さすがに都会の通勤ラッシュのような押し合いへし合いとまではいかないが、座席の8割は埋まっている。
ダンジョン前でバスを降りた。青森支部の目の前だ。
周辺には2軒のコンビニ、数軒の食堂、ホテル、それと小さいながらも病院まである。岐阜支部よりも充実している。これは負けてられないな。
昼時ということもあり、コンビニと食堂はかなり混雑している。
せっかくだから、食堂の列に並ぶ。昨夜遅くにホテルにチェックインしたから、まだ地元の味を味わい尽くしてないのだ。
並んでいるダンジョンハンターたちの会話を聞いていると、方言がかなりキツい。標準語を使う人と方言バリバリの人の会話を聞いていたが、方言のほうは何を言っているのかさっぱり分からない。それなのに標準語の人と普通に会話が成立しているのだから、凄いと思ったよ。
やっと席についてメニューを見てみる。昨夜は海鮮だったから昼は肉が食いたい。
お、これがよさそうだ。バラ焼きとせんべい汁定食!
注文から3分くらいで定食が俺の前に。
バラ焼きは鉄板に牛バラ肉とタマネギが載っていて、ジューッと食欲を誘ういい音をさせている。
すでに焼いていたものを鉄板に載せただけだと思うけど、かなり美味そうに見える。
まずはせんべい汁を……優しい味だ。
野菜がたくさん入っているから、野菜の甘さが汁にしっかりと出ている。
せんべいにその汁が染みて、これも美味しい。
よし、メインディッシュだ。
バラ肉と玉ねぎを一緒に口に放り込む。……美味い!
バラ肉は程よい弾力があって、醤油ベースの味付けに最適だ。しかも玉ねぎの甘さが肉の旨味を引き立たせている。
これ、めちゃくちゃ米に合う! 米の上にバラ焼きを載せて、かき込む。バラ焼きのタレがついた米をさらに口に。これだけで十分美味い。
青森ダンジョンは青森支部のすぐ横に入り口がある。
腹いっぱい食った俺は、すぐにダンジョンに入った。
食事制限はしないが、ダイエットはすると決めた。森型ダンジョンである青森ダンジョンに入った瞬間、俺は走り出した。
ダンジョンの入り口は、巨大な岩の穴だ。そこに入るとなぜか外に出る。実際には外ではなくダンジョンの中だ。
森には巨木も多く、モンスターが身を隠せる場所が多い。今日はチャタも居ないから、自力でモンスターの気配を探りながら走った。
この青森ダンジョンで出て来るモンスターは鳥や獣などのモンスターが多い。さらにアイテムボールのドロップ率も、岐阜ダンジョンに比べるとかなり良い。
面白いことに青森ダンジョンのアイテムボールからは、肉が出て来ることが多い。食料だ。
食料自給率が極端に低い日本にとって、こういった食料を産出するダンジョンは貴重だと俺は思う。
しかもかなり良い肉が出て来るから、人気があるダンジョンだ。
肉は鑑定系のスキルで安全が確認されている。もちろん、国でも科学的に安全性を確認している。それでもダンジョン産の肉は食べたくないという人も居るが、俺の舌はダンジョン産の肉のほうが美味いと言っている。食わず嫌いはいけないと思うんだ。
他には薬草も採取できる。この薬草はポーションの材料になるもので、これがないとポーションは作れない。
ポーションはアイテムボールからそこそこ高い確率でドロップするが、ダンジョンハンターが多くなれば、不足するものだ。実際に各支部で不足気味になっているから、JDMAでは職員にスキルを取得させたりスキルホルダーをスカウトしている。
1分ほどでボス部屋に到着した。第1エリアは狭いから、俺が走ればこれくらいの時間で到着する。
チャタが居ればもっと速く辿りつけただろうが、俺ではこのくらいが限度だろう。
チャタが居ないからその分多く走れると、思うようにした。
第1エリアのボスはファングドッグという大型犬くらいのイヌ型のモンスターだ。
これを妖魔喰で一刀両断する。
称号・ダンジョン探索者の効果(経験値1000倍)でも、モンスターが弱すぎてレベルが上がらない。まあこんなところでレベル上げするつもりはないから構わない。
第2エリアから第5エリアまで一気に駆け抜けた俺は、第6エリアの転移ポートに触れてダンジョンを出た。
途中で薬草をいくつか採取したから、青森支部で換金しようと思う。アイテムボールも16個あるから、これも砕いたらアイテムが出て来る。
「それでは、こちらでアイテムボールを砕いてください」
職員の指示に従ってアイテムボールを砕く。
アイテムボールを砕く用の部屋は、ちゃんと用意されている。岐阜支部にもあるやつだ。
俺が持ち込んだアイテムボールは、赤が12個、黄が3個、青が1個だ。
赤から砕いていく。最初は鶏肉が100キロ。巨大鶏ではなく、切り分けられた肉で、全部胸肉だった。
俺は胸肉よりもモモ肉のほうが好きとだけ言っておく。
赤の12個のうち、10個は鶏肉だった。鶏肉は胸肉とモモ肉のどちらが、100キロから200キロでランダムに出た。今回は鶏肉の胸肉が1100キロ、モモ肉が500キロだ。
ボンジリや砂肝など別の部位も時々出るらしいが、第5エリアまでの赤アイテムボールは鶏肉の胸が一番多く、次いでモモが多いらしい。
他の赤からは、下級ポーションと鉄の剣が出た。鉄の剣はなんの変哲もない片手用のショートソードだ。
黄の3個からは下級マナポーション1個と鶏モモ肉600キロ、スタンランスが1本だった。
スタンランスは10パーセントの確率で麻痺を与える槍だ。10パーセントでもモンスターが麻痺する効果は浅いエリアでは優秀だ。買取額は30万円になった。
最後は青アイテムボール。出て来たのは熟成霜降りカルビ肉だった。重量はなんと3トン。アイテムボックスがない奴が、ダンジョンの中でアイテムボールを砕いたらシャレにならない重量だ。
熟成霜降りカルビ肉は100グラム300円で買い取ってもらえるから、900万円になった。
国産で同じグレードの肉だと、100グラム1000円から1500円くらいのものだから少し買い取り額が安いかもしれない。
でもあまり高く買い取ると、小売り価格がその分高くなって売れないからしょうがない。
「青のアイテムボールは浅いエリアでは滅多に出ませんので期待していましたが。良いものが出ました。おめでとうございます」
職員が良い笑顔だ。
この青森ダンジョンでは1日に40から50トンの肉が産出される。今後、ダンジョンハンターが増えたらもっと増えるだろう。
鶏肉、豚肉、牛肉だけではなく、シカやカモなど他の動物の肉もある。
ダンジョンハンターはまだ浅いエリアにしか入ってないため、深いエリアに入るようになればより多くの肉が得られると期待されている。
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