第29話_未来が見たくはないか?
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029_未来が見たくはないか?
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中国のダンジョンボンバーによって、山東省にある原発の
さすがにここまできたら、中国も事実を隠しきれるものではない。
一番被害があったのは言うまでもなく中国だが、その余波によって韓国の南側に放射能が到達して大騒動になっている。
日本は九州や中国地方が放射能の影響を受けると考えられていたが、自衛隊と海上保安庁の艦艇がエネルギーコアを載せて展開したことで放射能を防いだ。
「韓国も我を張らずに、日本を頼れば良かったのに……」
日本政府は韓国の西側にエネルギーコアの防衛ラインを築く案を提案していたが、韓国政府はそれを断ってきた。
どういった理由か、俺には分からない。日本などに頭を下げたくないと思ったのかもしれない。国民がこのことを知ったら、韓国国内はかなり荒れるんじゃないかな。
「
「共産党の支配が揺らぐと言うのですか?」
「米国政府はこれを機に、共産党の一党独裁を崩そうとしているようです」
「そんなことを俺に教えていいのですか?」
「世渡さんは、私のブレーンですから」
総理は何を言ってるのか? 俺はいつからブレーンになった? そんなこと一度も聞いたことがないし、了解したこともない。
「私は民間人です。冗談はよしてください」
変なことに巻き込まれないように、否定しておく。
総理は俺を便利に使いたいようだけど、そうは問屋が卸さないからね。
「それで総理は……日本政府はこれからはどうされるのですか?」
「支援を表明し、中国と韓国の反応を待ちます。もっとも、中国政府が何かを言って来ることはないと思いますが……」
米国の工作が功を奏せば、中国で何かしらの動きがあるだろう。それまでは積極的に何かをすることなく静観するらしい。
「韓国のほうは支援を求めてくると思われますか?」
「さぁ……どうでしょうか?」
曖昧
この状況だから韓国も体面を気にせずに支援を要請してくる可能性はないとは言えない。だけど韓国と日本は歴史問題や領土問題で関係が拗れている。
こういう時はそういう問題を棚上げにして、国民のために何が優先されるかを考えるべきだと思うんだが、簡単じゃないらしい。
「それで、北朝鮮にはなんと?」
聞いていいか分からないが、とりあえず聞いてみた。韓国同様に北朝鮮も影響を受けているからさ。
「一応は人道的支援を申し入れますが、食料や燃料を寄こせとか制裁を解除しろと言うだけでしょう」
食料や燃料は支援になるだろうが、それは違う気がする。
援助してほしければ援助する側に配慮するべきだ。ただ駄々をこねればいいわけじゃない。
さて、日本はエネルギーコアによって放射能の影響はなかった。
これからも1年か2年か知らないが、展開し続ければ影響を抑え込むことはできる。だけどそれでは原因の排除はできない。
そのことに気づいている人はいるだろうか? さすがに居るよね?
「あのエネルギーコアというものは、福島の除染作業にも使えるのでしょうか?」
誰か気づいた人が居るようで、総理が真面目な顔で質問してきた。
中国の除染じゃなくて、福島の除染に使おうという案が出たようだ。
「放射能による汚染であれば、問題なく使えますよ」
「「「おおおっ」」」
とても嬉しそうに、総理たちが握手し合う。
「その除染作業にエネルギーコアを使っても?」
「総理の良いようにしてください」
「ありがとうございます! これで福島は救われます!」
立ち上がって深々と頭を下げた総理に倣い、全員が頭を下げた。
せっかくだから、もう1つ教えておいてあげるか。
「あのエネルギーコアは吸収したエネルギーを別のエネルギーに変換することも可能ですよ」
「?」
総理は何を言っているのかという顔をした。
「そ、それは電力に変換することも可能だということでしょうか?」
発言したのは総理でも大臣でもなく、50歳くらいの男性官僚だと思う。大臣の後ろで椅子に座っていた人だ。
経産大臣の後ろに居るから経産省の人かな?
「あ、これは失礼しました……」
発言権がないのか、腰を浮かせて前のめりになっていたところで冷静になって、頭を下げて座り直した。
「ゴホンッ。今の質問について、世渡さんの見解をお聞かせください」
総理が俺に回答を求めてきた。
「そちらの方が仰ったように、電力に変換できます。もちろんのことですが、放射能のような有害物質を放出することはないです」
「「「っ!?」」」
俺が総理で、エネルギーを有効利用するなら。
原発に使うウランなどの物質から直接エネルギーを吸収させ、それを電力に変換することもできる。
さらにこれまで出た核廃棄物からも放射能を吸収させるね。ガンマ線とかなんとか線も結局はエネルギーだ。
そして極めつけは、温暖化対策にも使える。地球を覆う暖かい空気から熱を奪うのに使えるんだよ。熱もエネルギーだからね。
エネルギーコアは色々使えるんだ。それに官僚や政治家が気づくかどうかだね。
ただし、ダンジョンからは超エネルギー物質が産出されている。今頃は学者たちがそのエネルギーを研究しているから、そのうち良い活用法が見つかるだろう。だからエネルギーコアは放射能の除染とかに有効活用するのがベターだと思う。
総理たちとの面談が終わり、俺の転移用に与えられている部屋に向かう。
その際に気難しそうな案内係の女性が、俺をチラチラ見て来る。まさかとは思うが、俺に惚れたか?
「何か?」
「……あの、先ほどの話は本当でしょうか?」
「話?」
「福島の除染作業のことです」
なんだ、俺に惚れたわけじゃないんだね。俺も年上の女性は好みじゃないからいいけど……。
「俺が何を言おうが、信じるかどうかは貴方たち次第です」
「そ、そうですか……」
とても陰鬱な表情をするんですけど?
ちょっと気になってしまい、女性を神眼で見てみた。
なるほど、この女性は福島出身なんだ。だから福島の除染が気になるんだね。
この神眼は鑑定眼をランクアップさせていき、行きついたスキルになる。
その情報量は大変なもので、その人の人生を見ることさえできる。
ちょっと反省した俺は、転移用の部屋に入ってから彼女に視線を向けた。
「除染はできますよ」
それだけ言うと、俺は転移した。
「え、あ……」
彼女の戸惑った声が聞こえたが、その後のことは分からない。
少しは彼女に希望を与えられただろうか。そうだといいと思う。
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