第40話_家族サービス

 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+

 うわー、ヤバいです!

 書き貯めがもうないです!

 あぁぁぁ……どうしよう……。

 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+



 ■■■■■■■■■■

 040_家族サービス

 ■■■■■■■■■■



 ふー。コージのおかげで家に帰ったのは朝だった。あのクラブの後にカラオケとか、あいつどんだけ遊びたいんだよ。

 始発で帰ってきたから母さんが起きていて、かなり目を吊り上げていた。


「あんたが帰ってくるからって、お父さん夜遅くまで待ってたのよ」

「悪かったよ」

「そうやって不貞腐れて、まったく……」

 朝ご飯の支度をしながら、ぶつぶつ言うのは以前も変わらない。懐かしい光景だ。


「もう、聞いてるの?」

「ああ、聞いているよ」

「ところであんた、いつになったら結婚するのよ」

「ぶっ……なんでそんな話になるんだよ」

 飲んでいたコーヒーを噴き出してしまったじゃないか。


「もう、汚いわね。自分で拭きなさいよ」

 母さんが投げた布巾が顔に命中。いいコントロールで。

 そそくさとコーヒーを拭いていると、みそ汁が出て来た。おお、久しぶりの母の味だ。


「早く孫の顔を見せてほしいものだわ」

「相手がいないから、無理」

「そんなこと言って、本当に居ないの?」

「居ないよ」

 こればかりは俺1人ではどうにもできない。


「まあいいわ。これ飲んだら早く寝ちゃいなさい。昼から買い物行くんだからね」

「買い物なんて母さんと三波みなみで行けばいいじゃないか。なんで俺が……」

 母さんの買い物は長いんだよ。付き合うの疲れるから嫌なんだ。どうせ妹の三波も行くんだから、2人で好きなだけ買い物すればいいじゃないか。


「いいから、さっさと飲んじゃいなさい!」

「はーい」

 みそ汁を飲み、階段を駆け上がって自分の部屋に飛び込んだ。

 ベッドに倒れ込むように身を預けると、一気に睡魔が襲ってくる。




 昼過ぎに起こされ、無理やり買い物に付き合わされた。


「これなんかどうかな?」

「いいんじゃないか」

「この服、色が派手かしら?」

「いいと思うよ」

 否定なんかしない。否定しなくても長い買い物が、否定したらもっと長くなる。


 父さんはベンチに座って天を仰いでいる。俺も座りたいが、母さんと三波が許してくれない。

 買い物の荷物も俺が持つ。父さんは疲れ果てているが、母さんたちの面倒は俺がみているんだから荷物くらい持てよ。

 こんなところでスキル使ったら騒ぎになるかな? まあ、たまの母親孝行だ。我慢するさ。


「あれ、世渡理事……ですか?」

「ん?」

 可愛らしい顔にボブカット。この子はたしか……そうだ涼宮杏佳すずみやきょうかさんだ。


「やあ、涼宮さん。あなたも買い物?」

「ウインドウショッピングしてました」

 JDSOで働いている時はビジネススーツをビシッと着込んでいるけど、今日はフェミニンな可愛らしい服を着ている。とても似合っているね、その服。


「いつぞやは花束をいただきまして、ありがとうございました」

「エレベーターを譲ってもらったお礼だから、そうやってお礼を言われるとまた何か贈らなきゃいけないよ(笑)」

「あ、すみません」

「冗談だから、流してくれるかな」

 生真面目なんだね。そういうところ、好感持てるよね。


「丈二の知り合い?」

 母さんが顔を出してきた。

 そんなにマジマジ見るなよ、涼宮さんに失礼だろ。


「仕事のね」

「あら、そうなの? 私は丈二の母です。いつも丈二がお世話になります」

「あ、いえ、私のほうがお世話になっております。私は涼宮と申します」

「そう、涼宮さんていうの。ふーん」

 そういうの止めろよ、失礼だろ。


「お兄ちゃんがいつもお世話になっています。妹の三波です」

「こちらこそお世話になっております」

 三波まで出て来た。そんなにマジマジと見るなよ。


 なんか母さんと三波、それと涼宮さんが意気投合した。きゃっきゃと話が弾む。

 俺、父さんの横に座って、休憩。ああ、疲れた。


「おい、あの子はお前の彼女か?」

「バカ言うなよ。職場の子だ。あまり喋ったこともないよ」

「そうか、父さんはあんな可愛い嫁が欲しいな」

「……そ、そのうちな」

 そのうちはいつくるのだろうか? 自分で言っていて、まったく来る未来が思い浮かばない。


「ごめんね、母さんたちがうるさくて」

「いえ、とても楽しい時間でした」

 涼宮さんにはまた何かを贈っておこう。

 また花では芸がないな。でも他に何を贈ればいいのだ? お菓子か? それくらいしか思い浮かばなんだが……。

 そうか、今聞けばいいんだ!


「今度、菓子でも差し入れさせてもらうよ。甘いものは好きかな?」

「そんな、気にしないでください」

「どうせたまにしかあそこいんは行かないから、たまに寄った時くらい何か持って行くよ」

「そ、そうですか……ありがとうございます。甘いものは好きです。でも太ってしまうから、あまり食べられなくて……」

 太るのを気にしているのか。だったら甘さ控えめのものを贈ろうかな。


 涼宮さんを見送って、振り返ると母さんと三波がにやにやしていた。

「な、なんだよ?」

「良い子だね。逃がしたらダメだからね」

「お兄ちゃんにしてはいい趣味の人じゃん」

「二人とも何を言ってるんだ。まったく……」


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る