第22話_A班対キングスライム

 ■■■■■■■■■■

 022_A班対キングスライム

 ■■■■■■■■■■



 A2が槍を突き刺すと、スライムの核が破壊されて動かなくなり地面に吸収されていった。

「あ、アイテムボールです!」

 地面に残ったのは、赤色のアイテムボール。レア度としては、1番低いものだ。それでも低級ポーションなど有用なアイテムが出る。


 A5がバックパックにアイテムボールを収納する。アイテムボールの回収は彼女の仕事になっている。

 A2は物理のダメージ源、A4は魔法のダメージ源、A1には盾を持たせてモンスターの攻撃を受け止め、A3はもしもの時に結界で皆を守り、A5は高いDEXを使って弓で攻撃だ。


 土日を除き、毎日ダンジョンでスライムを相手に戦っている研修者たちの戦闘スタイルは固まっている。スキルがなくてもスライムならステータスポイントの振り方次第で戦える。その5人のレベルは14だ。そろそろ大丈夫だろう。


「今日はこのままボス部屋を踏破する」

「「「「「はい!」」」」」

 スライムを倒しつつ、5人はボス部屋に到達した。


「A1。ボスモンスターはなんだ」

「はい。キングスライムです」


「A2。その特徴は」

「物理攻撃が一切効きません」


「A3。どうやって戦う」

「A4の火魔法でダメージを与えます。A1とA2が前でキングスライムを牽制し、A4に近づけないようにしてもらいます」


「A4。戦闘時に気をつけることは」

「キングスライムの触手と溶解弾です」


「A5。触手と溶解弾への対処は」

「触手は2メートル程しか伸びませんから、弾くか距離を取ります。溶解弾は決して受けてはいけませんから、回避するしかありません」


「A1とA2は決して溶解弾を受けるな。攻撃よりも避けることに重きを置け」

「「はい」」


「よし、15分休憩だ」

「「「「「はい」」」」」

 A3がバックパックから水とクッキーを取り出して、4人に配った。摂りすぎに注意しながらクッキーでエネルギー補給し、水で喉を潤す。


 この研修者パーティーでは、A3とA5が荷物持ちをしている。A3とA5の2人の女性が荷物持ちの役割をしているのは、攻撃役アタッカーのA2とA4、そして防御役タンクのA1に重たい荷物を持たせるわけにはいかないからだ。


 女性だから荷物を持たない。そんな我が儘はダンジョンの中では許されない。男女関係なく、やれることをやる。それがダンジョンで生き残るために必要なことだ。


 15分後、5人はボス部屋に入った。すぐにA1が前に出て、A2がそのバックアップとしてキングスライムを前後で挟む。

 そして2人して物理攻撃を行うが、当然ながらダメージは与えられない。


 キングスライムから無数の触手が伸びて来る。それを弾きながらA1とA2が攻撃を引きつける。

 そこにファイアボールが飛翔し、キングスライムに命中する。キングスライムはダメージを負い、ゲル状の体を揺らした。


 溶解弾を射出。A4への攻撃だが、そこまで速度はない。警戒しておけば躱せるが、A4は大げさに避けた。

 A4はあまり攻撃を受けたことがないから、こういう時に雑な回避になる。


「やったわね!」

 A4が再びファイアボールを放ち、キングスライムに命中する。

 怒ったキングスライムがA4のほうへ移動しようとするが、すぐにA1が回り込んで移動を阻害する。A4が場所を移動してファイアボールを放つ。いい感じにHPを削っていく。


 A5「HP申告お願いします」

 A1「5割!」

 A2「9割」

 A3「A1にポーション使います!」


 HPが半分に減ったA1に、A3が駆け寄って下級ポーションを使う。A1もキングスライムからやや距離を取って、A3の安全を確保する。その間、A2がキングスライムを引き受けるわけだ。


 A3がA1に下級ポーションをぶっかける。ポーションは飲むほうが効果が高いが、かけても効果を発揮する。乱暴なようだが、戦闘中だとこれが正しい使い方だ。

 ちなみに、マナポーションは飲まなければ意味がない。かけて効果があるのはHPを回復させるポーションのほうだ。


 サササッとA1から離れたA3。A1もキングスライムへ再度接近して、攻撃を仕かける。


 A2「おらっ!」

 A1「はっ!」

 A1の剣がキングスライムに弾かれたところに、ファイアボールが命中。これが決め手となってキングスライムは動かなくなった。

 でろーんと地面に広がったゲル状の体が、地面に吸収されていく。その後には赤色と青色のアイテムボールが残った。


 A3「やりました!」

 A2「青色は初めて見たな」

 2人がアイテムボールを拾い上げて、A5に渡した。


 A4「あ、レベルがあがりました!」

 5人ともレベルが上がったようだ。これで実習に関しては、不合格はなくなった。


 A1「クラスも得ました、教官殿」

 始めてボスを倒したことで、クラスを得た。


「多分、研修者の中では、お前たちが一番最初にクラスを得たはずだ。よくやった」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

 ボス部屋から第2エリアへ移動した俺たちは、そこから転移して地上に戻った。

 この転移はダンジョンの中にある転移キーの効果だ。


 ダンジョン内でボスを倒して次のエリアに入った辺りにある灯篭のようなオブジェが転移キーになる。これに触れると、登録されてダンジョンの入り口前に転移するか選べるのだ。

 ダンジョンの入り口にも同じ転移キーがあるが、それに触れると登録したエリアに移動できるという便利なものである。


 俺の時もあったが、完全に無視していた。ダンジョンの中に灯篭があるな、程度にしか思わなかった。あの時は10日という時間のほうに気がいっていたんだよ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る