第18話_A2の悲劇
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018_A2の悲劇
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シアトルのダンジョンボンバーが終息してから3日後、裏山ダンジョン───正式には岐阜ダンジョンと言うが、その岐阜ダンジョンの第1エリアに5人の研修者と共に入った。
研修者は12班に分かれて、俺と自衛隊の各分隊がレベル上げを行う。最低でもレベルを15まで上げるのが、今回の目的だ。
もちろん座学もあるが、座学に関しては大槻さんが講師をしている。俺は体を動かすほうで、ちょっとだけお手伝い。
研修者たちは気合を入れないと、レベル15にならない。そしてレベル15にならなければ、この研修は合格にならず、合格しないと幹部になれない。
彼らは必死で努力するだろう。特に官僚はここで不合格になった場合、元の省庁に帰っても居場所がない。
「ステータスを得たか」
「「「「「はい!」」」」」
5人は呆然とした表情だ。ステータスのようなファンタジーなものを見たのだから、その気持ちは分かる。
「ボーっとしてないで、ステータスを用紙に書き写せ。さっさとしろっ」
「「「「「はい!」」」」」
用紙を回収して確認したが、俺の初期値よりもいい。ちょっと納得いかないが、誤差範囲だと思うようにしよう。
さて、研修だから、俺も講師らしいことをしようか。
「ダンジョンの中で最も警戒しなければならないのは何か? A1、答えるんだ」
研修者にはA1からA5の番号が振られている。A班の1番から5番という意味だ。
「はい。モンスターに警戒するのは当然ですが、それ以上に罠に警戒が必要です」
A1とA2は30前後の男性、A3からA5までは3人共20代の女性だ。5人中3人は官僚、2人は民間人。この研修の最後にある試験に合格したら、晴れてJDMAの幹部として各支部に配属される。
「OK。次A2。基本的に第1エリアに罠はない。だが、ダンジョン内では何が起こるか分からない。昨日はなかったからと言って、今日もないとは限らない。そこで罠を発見するために必要なことはなんだ」
「罠のトリガーには特徴があります。岩や石の色がわずかに違ったり、その部分にだけ魔力が多かったり、不自然にモンスターが居なかったりなどです」
罠のトリガーには、ある特殊な力が込められている。それを魔力と呼んでいるが、MPと言うほうが正しいのかもしれない。どうでもいいけどさ。
「よし。次はA3。このダンジョンの第1エリアに出るモンスターはなんだ」
「スライムです」
「スライムを倒すのに効果がある攻撃は」
「属性がある攻撃ですが、私たちは使えませんので距離を取って槍などで攻撃するほうが良いでしょう」
「よし。次はA4。お前たちの武器は槍だ。攻撃系スキルを取るまでは、その槍が相棒だ。5人が槍を扱う注意点は」
「槍の長さを把握し、槍で味方を攻撃しないように十分な距離を取ることです」
「よし。次A5。スライムはどういった攻撃をする」
「第1エリアに出るスライムは密着して私たちを溶かします。ボスは触手を伸ばしてきますし、溶解液を飛ばしてきます。第2エリアのスライムも溶解液に気をつけなければいけません」
「よし。そういったことを念頭に置き、これからダンジョンの中を進め。俺は後ろからついていく」
「「「「「はい!」」」」」
基本的には軍隊のような厳しい実戦訓練になる。モンスターは訓練だからと言って、手加減はしてくれないからな。
第1スライムを発見した。研修者たちはまだ認識していない。スライムが天井に居るとは思っていないようだ。
俺は何も言わずにそのままついて行く。
ボトリッとスライムがA2の頭に落ちた。いきなりのことで、A2は恐慌状態。他の4人はどうしたらいいのか分からないようで、あたふたしている。
「おい、そのままだとA2は死ぬぞ」
「し、しかし、どうしたら!?」
これくらいであたふたするなんて情けない。
「A2が動かないように押さえつけろ」
「「「「はい」」」」
4人がかりでA2を押さえつけて動かないようにする。俺は
スライムの核はA2の目の前にあったから、妖魔喰もA2の目の前に。それが怖かったのか、A2は白目を剥いて気絶した。しかも、お漏らしつきだ。
これはダメかもしれないな。
A2が気絶とお漏らししたことで、最初のダンジョン内研修は戦うことなく終了した。
A2の犠牲によって他の4人に、モンスターが地面ばかりに居るとは限らないと知らしめることができた。だがA2はトラウマになった可能性がある。このまま研修を続けるのか、諦めるかはA2次第。無理に戦わせるつもりはない。
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