第19話_研修
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019_研修
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「先日は失礼いたしました!」
A2が腰を深々と腰を折って、頭を下げる。どうやら、ダンジョンに入るのを諦めてはいないようだ。
「お前が迷惑をかけているのは、俺ではなくA班の4人だぞ」
「はい。4人にも迷惑をかけました。すみませんでした」
清々しいほどに下手に出るA2。
「モンスターと戦えるんだな?」
「はい。戦います!」
「俺は構わないが、お前たちはどうする? A2が足を引っ張って、規定のレベルに達しなかったら、お前たち全員不合格だぞ」
4人はどうしようかと、お互いの顔を見合う。
「私はいいと思います。せっかく出逢った5人ですから、力を合わせて皆で合格しましょうよ」
赤毛のA5がそう言うと、A1とA3は苦い顔をした。A4はどうしたものかと考えこんだ。
A3「彼が足を引っ張ったら、私たちも合格できなくなるかもしれませんよ」
A1「リスクはできるだけ減らしたいところではあるが……」
A4「でも1回の失敗で彼を見放すのは、いけないと思います」
色々意見が出る。A1とA3は明らかに嫌がっているが、A4とA5はA2にチャンスをと言う。
話し合って、結論が出る。
「A2を連れて行って構わんのだな?」
「「「「はい」」」」
「皆、ありがとう」
A2はなんとか仲間外れにならずに済んだ。
「あー、言っておくぞ。今回のことはA2だけの失敗じゃない。全員で警戒しておきながら、誰もスライムに気づかなかったんだ。これは全員で責任を取るべきことだ」
「「「「………」」」」
「ここでA2を放逐するようならここで全員を不合格にしてやったんだが、なんとか合格だ。1カ月の間、お前たちは助け合っていかなければいけない。分かったか」
「「「「「はい!」」」」」
俺はA班の5人と共に、ダンジョンへ入っていく。
「突くんじゃなく、叩け」
5人には槍を持たせている。剣は意外と扱いが難しいし、モンスターにかなり接近する必要がある。それに対して槍ならモンスターから2メートルくらいは離れられる。
スライム相手なら、この2メートルは安全距離になる。
「「「「「はい!」」」」」
バンッと何度か槍で叩かれたスライムは、破裂してダンジョンに吸収された。
俺の時はスキルでブーストしていたこともあって簡単だったが、普通の人が戦うとこんな感じで何度か叩く必要がある。
「「「「「おぉぉぉっ」」」」」
初めてモンスターを倒した5人から歓声があがる。
「気を緩めるな。警戒しろ!」
「「「「「はい」」」」」
気を緩めなければ、スライム程度はなんとでもなる。
幸いなことにA2はスライムを見ても恐慌に陥ることはなかった。それどころか5人の中では一番良い動きをしていた。
「今回はなかったが、稀にアイテムボールがドロップする。もしアイテムボールがドロップしたら、使わずに持ち帰れ」
「「「「「はい」」」」」
かさばるアイテムもあるため、アイテムボールのまま持ち帰ったほうがいい。
「さて、今の戦いでレベルが上ったと思うから、ステータスを確認してみろ」
レベルが0から1に上がるのはすぐだが、1から2、2から3に上がるには、それ相応の数のモンスターを倒さないといけない。
A4「あ、本当にレベルが上がっているわ」
A5「私も上がってます」
5人のレベルが無事に1になった。前回の時は俺がスライムを倒したため、ノーカンになっている。それに、俺もさすがにスライム1匹でレベルがあがることはない。
A班は奥へ進む。すぐにスライムが出て来た。今度も青だ。
5人はスライムを囲んで槍でボコって、スライムはダンジョンに吸収された。アイテムボールはない。
モンスターによってアイテムボールのドロップ率は違う。スライムの場合は、100分の1とかなり低い。
第20エリアに居るようなゴーレムだと20分の1くらいになるが、これだって多いとは思わない。
アイテムボールのドロップ率は、ダンジョンマスターである俺なら変更できるが、あまり高いドロップ率にしてしまうと他のダンジョンとのバランスが悪くなってしまう。
それにボスに関しては100パーセントドロップだ。それでいいだろう。
ダンジョンによって違うが、岐阜ダンジョンの第1エリアのモンスターのレベルは1から15。
第1エリアを踏破する頃に、5人のレベルは15になっているだろう。かなりの数のスライムを倒さなければいけないが、そこは気合入れて狩りを行ってほしい。
赤いスライムが出て来た。俺の時は一瞬で倒してしまって、赤スライムの強さが分からなかった。
A1「うわっ!? こいつ火を吐くぞ!」
赤スライムは火を吐くが、その火が届くのはせいぜい1メートルくらい。それ以上離れて攻撃すれば特に問題ない。
A1は驚いているが、このことは事前の講習でちゃんと教えられていたはず。減点だな。
A5「一気に畳みかけましょう!」
この5人の中でリーダーシップをとっているのはA5。戦闘力はA2。共に民間人だ。官僚たちは勉強ばかりしてきたためか、運動というか戦闘は得意ではないようだ。だけどこの研修に参加したのは、自分の意志のはず。嫌々参加されてもこっちが嫌だから、強制するなと言ってある。それでも強制するのが、官僚かもしれないけど。
5人はしっかりと距離をとって槍でボコって赤スライムを倒した。赤だろうと青だろうと、第1エリアで出てくるスライムの対処法は同じだ。距離をとってボコるだけ。
初日で5人のレベルは5になった。昨日は1体も倒さずに撤収したからノーカンだ。
レベルは高くなればなるほど上がりにくくなるため、これから我慢のレベル上げが続くことになる。
研修用の教室で、研修者全員が集められた。
「ステータスの内容と、取得可能なスキルを全て提出してください」
大槻さんが研修者全員の情報を提出するように指示を出す。それに異を唱える研修者は居ない。それをしなければ、JDMAの幹部候補としてここに居る意味がないのだから。
そもそも、スキルはレベルを上げないと取得できない。元々スキルを持ってる可能性はかなり低い。それは自衛隊員の多くをダンジョンに入れて確認している。
今回の60人の中に、ステータスが与えられた時点でスキルを所持している者は居なかった。
さて、提出された取得可能スキルの中に、面白いスキルがいくつかあった。
JDMAの業務に必要なスキルの取得が優先される。その上で面白いスキルがあった研修者は相談しながら、取得するスキルを決めていく。
レベルが15になれば、★5のスキルが3つ取得できる。★3であれば5つだ。そういった調整もされつつ、最初のスキルを取得させた。
俺が担当するA班の5人に関しては、A1は鑑定、A2は戦闘スキルの槍士、A4は火魔法、この3人はいい具合にバラけた。
JDMAの業務には、アイテムや人物の詳細を知る鑑定が絶対に必要になる。だが全員が鑑定を取得する必要はなく、業務に必要なスキルを全体でバランスよく取得すればいい。
さらにJDMAの業務は、新人ダンジョンハンターの戦闘研修を行うというものがある。その時にA2とA4のような戦闘スキルは役に立つ。
そしてA3とA5だ。この2人は面白いスキルを取得した。
A3が取得したのは結界だ。結界は一定範囲を隔離するというもの。これがあると、ダンジョン内の休憩などにとても役立つ。それだけではなく、誰かを閉じ込めることもできる。使い方次第で、彼女を中心とした場所が拠点化できたりする。いいスキルだ。
それとA5が取得したスキルは武器錬成。これは珍しいスキルで、滅多に取得可能リストに挙がらないものだ。
この武器錬成は材料と錬成窯があれば、色々な武器が造れるというものだ。錬成窯は稀にアイテムボールから出てくるアイテムで、俺も2つ持っている。
俺が預かるA班から特殊なスキル持ちが2人も出たが、これは意図したものではない。取得できるスキルはランダム性と個人の才能に依存するもので、俺がそこに介入することはできないのだ。
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