第5話_キングスライム

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 005_キングスライム

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 チャタが緑スライムを発見し、俺が倒した。どんな色でもスライムでは苦戦することはないようだ。


『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

 2レベル上がって7になった。


 これで分かったが、チャタが倒すと経験値は普通しか入ってこないが、俺が倒せば1000倍になって入ってくる。

「しかし、1000倍なのに意外とレベルは上がらないんだな」

 普通ならスライムを2000匹倒したことになるのに、たったレベル7だ。このシステムはレベルが上がりにくいようだ。


 俺とチャタは交互にモンスターを倒しながら進んだ。

「む、これは……どっちだ」

 十字路に出た。ゲームなら正解の道はどれか1つだが、このダンジョンではどうなのか?


「アンアン」

「右へ行けと言うのか?」

「アン」

 チャタが言うので、右へ進んだ。


 5匹のスライムを倒した直後、巨大な扉があった。その扉にはスライムの絵が描かれている。しかも、王冠を乗せたスライムだ。中にこのキングスライム(仮)が居るのかな?


 疲れはない。歩いた距離は1キロもないだろう。スライムとの戦闘も苦労してない。

 モンスターがスライムだったのが良かった。倒しても罪悪感もない。これがチャタのような可愛い犬や動物だったら精神的なダメージを負っていたかもしれない。もっと嫌なのが、人型のモンスターだ。人型だけは出てきてほしくないものだ。


「これはダンジョンのボスというよりはこのエリアのボス、所謂中ボスだと思う。どちらにしろ、ボスだから強いと思うぞ。覚悟はいいか?」

「アンッ!」

「任せろか。頼もしいな」

 俺はその扉を押した。ギギギッと耳障りな錆びた音を立てて、扉が開いていく。


「うん。予想してたよ」

 そこは体育館くらいの広さの部屋で、中央にはキングスライム(仮)が鎮座していた。

 これまでに出逢ったどのスライムよりも大きく、体長は2メートルくらいある。


「俺の背丈よりもデカいスライムとか、どんな嫌がらせだよ」

 愚痴ってから息を大きく吐いて、俺の足にピタリとくっついているチャタを見る。

「行くぞ」

「アンッ」

 ダッシュ。俺よりもチャタのほうが速い。疾風迅雷は伊達ではないか。


 キングスライム(仮)が俺たちに向かって何かを射出した。チャタは余裕で躱したが、俺はそれをギリギリで避けた。

 後方に着弾したそれがジュワッという音を立てた。

「溶解弾だ。当たるなよ!」

「アンッ!」


 チャタは心配なさそうだが、問題は俺か。あんなのに当たったら、いくら高いVITでもただでは済まないぞ。

 チャタは左から、俺は右から挟み込むようにキングスライム(仮)に攻め込んだ。


 キングスライム(仮)は触手を無数に伸ばしてきた。

「普通のスライムが弱かっただけに、新鮮だ!」

 触手を妖魔喰バクロで切り飛ばそうとしたが、弾くだけで切れない。コンニャクのようにグニャグニャで厄介な触手だ。


 チャタは触手を噛んだり爪で引っ掻いているが、触手はかなり丈夫で傷はつかない。

 俺に4本、チャタに6本の触手が襲いかかる。4本でも捌くのが大変なのに、チャタはよく6本も相手をするな。しかも、チャタはきっちりと反撃している。


 5分程の攻防、俺とチャタの攻撃がまったく効いていない。

「まさかこいつ!? チャタ、時間を稼いでくれ。回避に専念してくれればいい」

「アンッ」

 チャタのスピードはキングスライム(仮)を翻弄できる。大丈夫そうだ。


 キングスライム(仮)から距離を取ると、ステータス画面を立ち上げる。

 スキルポイントを消費してあるスキルを取得する。


「鑑定眼!」

 くっ、やっぱりだ。キングスライム(確定)はスキル・物理攻撃無効を持っていた。

 俺とチャタには攻撃手段が物理攻撃しかない。めちゃくちゃ相性が悪い奴じゃないか。

 物理ではない攻撃スキルを取得するしかないと、スキルを選ぼうとして思い出した。


 あれを使ってみるか。ふーっと息を長く吐き、俺は覚悟を決める。

「酒呑童子!」

 ユニークスキル・酒呑童子を発動させた刹那。俺の体は血液が沸騰するような感覚に襲われる。


「ウガァァァッ」

 一瞬、意識が飛んだような気がした。だが、悪くない気分だ。なんと言うか、高揚感のようなものがある。

 妖魔喰の鏡のような刀身に自分が映る。目は黒から真っ赤になって鋭く、髪はショートの黒からボサボサロングの紫に変わり、額に2本の立派な角、口には上下2本ずつの牙、肌の色は青白くなり、服も時代がかったものになっていた。

 さらに身長も伸びたようで視線が高い。腕は以前の倍くらい太く、入れ墨がところどころに見られる。


 まさに鬼。これが酒呑童子か。

「纏え、地獄の炎」

 真っ青な炎が妖魔喰を包む。


「行くぞ!」

 一気に間合いを詰めた俺を、触手が迎え撃つ。

 妖魔喰で触手を切る。同時に2本の触手を切り飛ばすことができ、その触手の切り口から真っ青な炎が立ち上る。


「チャタ」

「アンッ」

 阿吽の呼吸。チャタは俺の言いたいことを汲み取って、キングスライムから距離を取った。


 俺は触手を切った勢いを殺さず、体を回転させてキングスライムの本体を切りつけた。

 キングスライムの体に深々と傷ができ、その傷口に巨大な炎が立ち上る。

 炎はキングスライムを一瞬で飲み込み、その巨体を蒸発させ消滅せしめた。


 酒呑童子、さすがはユニークスキルなだけはある。


『あなたはこの世界で最初にボスモンスターを討伐しました』

 あると思ってたよ、謎の声さん。


『この世界で最初にボスモンスターを討伐したあなたに、称号・先駆者を付与します』

『この世界で最初にボスモンスターを討伐したあなたに、ステータスポイントを50ポイントとスキルポイントを10ポイントを付与します』

『ボスモンスターを討伐したあなたに、クラス・鬼神を付与します』

『クラス・鬼神を得たことにより、ユニークスキル・滅天使を付与します』

『クラス・鬼神を得たことにより、ステータスポイントを300ポイントを付与します』

『ボスモンスターを討伐したことで、ユニークアイテム・妖魔喰が進化しました』

『レベルが上がりました』×多

 レベルアップの声が何度も鳴り響いた。


 

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