第4話_モンスターとの遭遇
■■■■■■■■■■
004_モンスターとの遭遇
■■■■■■■■■■
俺とチャタは裏山のダンジョンに入った。
ダンジョンの中は光源もないのに、うす暗い程度で真っ暗ではなかった。
見た目は洞窟にしか見えない。
チャタは俺の横をトテトテと歩いている。歩き方がまた愛らしい。緊張が和らいでいく。
「アンッ」
そのチャタが立ち止まって、吠えた。毛を逆立てて「ウーッ」と唸っている。何か居るようだ。
目を凝らしてみると、何かが動いているのが分かった。
「モンスターか?」
俺は刀を抜いた。
「チャタはここで見ていてくれ」
「アン」
チャタはお座りして、「ハッハッハッ」と舌を出している。
戦いの前に和んでしまいそうになった俺は、気を引き締めた。
「俺がこのダンジョンを踏破しないと、全人類が死滅する。やってやるぞ!」
近づいていくと、モンスターの姿が明らかになる。
「スライムか」
体長50センチくらいの、青く透き通った涙型の体のモンスターだ。動く度に体がプルルンとなる。
スライムは俺に気づいたようで、こっちに向かって来る。
動きは緩慢でかなりゆっくりに見えた。おそらく身体強化や質実剛健でAGI値がかなり上昇しているからだろう。
俺も動く。一気に詰め寄り、刀でスライムを切る。刃を潰した刀だが、スライムを真っ二つにしてくれた。
動かなくなって地面にべちゃりと広がったスライムが、地面に吸収されるように消えてなくなった。
「モンスターは消えてなくなるか……。ん、これは」
スライムが吸収されたその後に、卓球の球のような青色のものが落ちている。
「青色のスライムから青い球が落ちた? ふむ、分からん」
「アン。(パクッ)」
「ちょ、チャタ、ペッしなさい!」
チャタが咥えた球を取ろうとしたが、時すでに遅しだった。球は割れて光になって消え……なかった。
「えぇ……」
球が割れて光が飛び出し、その光がチャタを包んだ。その光が消えると、チャタが銀色の鎧に包まれていた。
「マジか……」
触った感じは金属の鎧だ。
「それ、重たくないか?」
「アンアン」
チャタは尻尾を振って俺の周りを走り回った。
重くも動きにくいこともないようだ。
『あなたはこの世界で初めてモンスターに遭遇しました』
またあの声だ。
『この世界で最初にモンスターと遭遇したあなたに、ユニークスキル・極アイテムボックスを付与します』
ファンタジーの定番スキルが来た!
『この世界で最初にモンスターを倒したあなたの武器を、ユニークアイテム・
「はい?」
その瞬間、腰に佩いていた模造刀に血管のようなものが浮き上がって全体を包んだ。あまりのキモさに、模造刀を捨てそうになった。
チャタは光だったけど、模造刀は血管かよ!?
青黒っぽい鞘は赤黒い鞘に変わり、黒だった柄は真っ赤になった。
「これ、抜くのが怖いんですけど……」
でもいざという時に抜けなかったら洒落にならないので、確認する。
カチャリッと鯉口を切り、スーッと刀を抜く。
「良かった、普通の刀だ」
鏡のように美しい刀身に波紋。
「ん、これは」
刃が潰れていない。真剣だ、これ。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
「ぬおっ!?」
「アンッアンッ」
いきなり大量の声に驚いたが、まさかチャタもか?
ステータス画面を開くと、俺のレベルが5になっていた。チャタのほうを見ると俺と同じ5だった。
俺がモンスターを倒したら、眷属のチャタにも経験値が分配されるようだ。
このダンジョンがどれだけ深いか分からないため、早く奥に進みたい。だけど、モンスターが居る以上は、警戒しながらダンジョンを進まなければならないジレンマがある。
「アンッアンッ。ウゥゥゥッ」
「どうした、モンスターか?」
目を凝らしてもモンスターの影はない。チャタの吠えている方向を見ると、上に向かってだったので見てみる。
「天井にも居るのかよ……」
天井で蠢いているのは、スライムだ。ただし、今度のスライムの色は赤色だった。
「なんか火属性っぽいな」
「アンッ」
「チャタがやるのか?」
「アンアンッ」
「天井に居るんだぞ、大丈夫か?」
「アンッ!」
任せろと言っているように聞こえた。ダンジョンに入ってから、チャタの言っていることが何となく分かるようになってしまった。
元々チャタはお利巧だったけど、さすがに言っていることが分かるほどじゃなかった。
これはチャタが俺の眷属として、登録されたからだと思う。
「チャタ、行け!」
「アンッ」
タッタッタッタッタッと駆け出したチャタが、ジャンプしてさらに何もない空間を蹴って加速した。かなり速い!?
「あれが立体機動というやつか」
一気に赤いスライムに迫って、その牙でスライムを噛みちぎった。
「そんなものを食べてはいけません!」
思わずそう言ってしまった。でも、赤スライムを食べてチャタがお腹を壊したら悲しいじゃないか。
今の一撃が致命傷になったようで、赤スライムはボタッベチャッと地面に落ちて消えた。
「今度はあの球は出ないのか」
何も残っていない地面、そして赤スライムが居た天井を見たが、何もない。
「つまり、あの球はランダムで出てくる可能性が高い。もしくは、最初の報酬的なものか?」
でも、最初の報酬は頭の中に響いた声からもらった。とするなら、ランダムという可能性が高いな。
「そう言えば、レベルアップの声が聞こえなかったな」
ステータスを見てもレベルアップしていない。
チャタが倒した場合は、ダンジョン探索者の経験値1000倍の恩恵は受けられないのか? それとも、必要経験値がかなり上がったのか?
「次のモンスターを俺が倒せば、ある程度分かるか?」
name 世渡丈二
race 人間
lv 5
class
HP 20+50+100+300
MP 20
STR 15+10+100
VIT 15+10+50+100
AGI 15+10+100
DEX 15
INT 5
MIN 5
ST.P 20
SK.P 10
title 【ダンジョン探索者】 ★★★★★
unique skill 【酒呑童子】 ★★★★★
unique skill 【極アイテムボックス】 ★★★★★
異空間に収納スペースを確保する。容量無限。時間経過任意指定。
skill 【身体強化】 ★★
skill 【頑強】 ★★★
skill 【質実剛健】★★★★
unique item 【妖魔喰】 ★
ただの模造刀が世界で初めてモンスターを倒したことで、進化した姿。モンスターを倒せば倒すほど進化する。
name 世渡チャタ
race 柴犬/世渡丈二の眷属
lv 5
class
HP 8+300
MP 8
STR 12
VIT 12+50
AGI 12+20+150
DEX 12+150
INT 2
MIN 2
ST.P 25
SK.P 5
skill 【威嚇】 ★★
skill 【立体機動】 ★★★
skill 【牙爪強化】 ★
skill 【回避】 ★★
skill 【疾風迅雷】★★★★
unique item 【魔装アーマー】 ★★★
装備者の体形に合わせた鎧を纏う。VIT値を+50ポイントする。
愛読ありがとうございます。
『フォロー』と『応援』よろしくです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます