第47話_査定局と人材育成局の局長
■■■■■■■■■■
047_査定局と人材育成局の局長
■■■■■■■■■■
大臣室を辞して自分の部屋に戻ると、俺に続いて涼宮さんと10人が入って来る。
「査定局と人材育成局にそれぞれ配属された方々になります」
涼宮さんが1人ずつ紹介してくれる。男性が7人、女性が3人だ。
この人らは俺が総理に要望した窓際に飛ばされた優秀な人たちだ。
査定局と人材育成局に5人ずつ配属されて、俺を補佐というか代わりに仕事をしてくれる人たちだね。
「俺が身分不相応な役目を引き受けるに際し、総理に優秀な人材をと頼みました。皆さんにはここでその能力を遺憾なく発揮していただきたいと思います」
「1つよろしいでしょうか」
えーっとたしか三橋さんだったかな。資料に目を向ける。
51歳の渋面のオジサマで、査定局の幹部―――実質的に査定局を差配する人だ。
「どうぞ」
「査定局の職掌は把握しましたが、実際に我々は何をすればよろしいのでしょうか?」
「各部局から申請された予算を承認するのが仕事です。俺のところに上がって来る前に、内容を精査して気に入らなければ容赦なく蹴ってください。皆さんの好きなようにやってくれて結構です」
三橋さんが眉根を寄せる。好きなようにやったら、問題になるとでも思っているんだろうか。
「本当に好きなようにしてよろしいのですか?」
「ええ、結構です。その責任は俺が負います。あ、私怨や私利私欲で仕事をするのは止めてくださいね。私怨や私利私欲で仕事をしたら容赦なく貴方たちを切りますので、それだけは覚えておいてください」
「承知しました」
俺の言質をとったと思っているのかな。取られて困るようなことはないからいいけどね。
「人材育成局のほうは、ダンジョン管理省とダンジョン管理組合(JDMA)の人事と研修、ダンジョンハンターの研修などを所管します。問題行動が多い人がいたら、容赦なく処罰してください。一応最初は警告をしてからですけどね。あとこちらも私怨や私利私欲で仕事をしないでください。貴方たちの行動は俺が監視しますので、よろしくお願いしますね」
基本的に査定局も人材育成局も職務に忠実であれば、好きなようにやってもらっていい。その責任は俺が取るからさ。
「もし圧力を受けた際は、報告してください。そういったことに対処するために俺がいると思ってくれて結構です」
皆さんが仕事をしやすいように、俺が壁になる。俺の仕事をやってもらうのだから、それくらいはしないとね。
「俺は基本的に岐阜にいますので、何かあれば連絡ください。緊急時は電話、それ以外はメールでいいでしょう。他に質問がなければ仕事を初めてください」
8人は部屋を出て行き、3人が残った。
残った3人は、先程の三橋さん、人材育成局の梶谷さん、それから涼宮さんだ。
「毎週月曜日の午前中に定例会議を行いたいと思います。業務の報告や、週報に対する質疑応答、あとは局長の指示などをそこで聞きたいと思います。よろしいでしょうか」
細かい話を俺と詰めるために、査定局と人材育成局を実質的に動かす三橋さんと梶谷さんが残ったようだ。
三橋さんのほうが年上だからか、基本的に喋るのは三橋さんらしい。
梶谷さんは三橋さんとは対極の容姿で、小柄で頭髪がかなり薄い。頼りない印象を受けるが、できる人のはず。総理がそういった人選をしたのだから。
「了解です。会議は基本リモートで行いますが、月始めはここで行いましょう」
「ありがとうございます」
「会議に関係なく、何かあったら
報告、連絡、相談は社会人の基本です。
細々した確認などをして、三橋さんと梶谷さんは部屋を出て行った。
さて、残ったのは涼宮さんだ。彼女の資料に目を通すと、涼宮さんは俺の秘書らしい。
局長に秘書がつくのかと疑問に思ったが、俺がちょっと特殊な勤務体系だから秘書をつけてくれたらしい。
「こちらは世渡局長専用のPCになります」
まず渡されたのは、ノートパソコンだった。
「業務に必要なアプリが入っています」
スケジュール管理とリモート会議用のアプリが入っていて、その操作について教えてもらった。
「これは世渡局長用の専用携帯です」
スマホが出て来た。
「公式の連絡はこちらで行います。現在登録されている連絡先は―――」
総理や2人の副大臣など、主だった人たちの連絡先が入っている。もちろん秘書の涼宮さんの連絡先(公用)もね。
「スケジュール管理表は携帯からもアクセスできます」
ふむふむ、OK理解した。
「準備が整い次第、私も岐阜へ向かいます」
「ん? 岐阜に?」
「世渡局長の秘書ですから、近くにいないと仕事になりません」
「でも田舎だよ?」
山の中だから、都会っ子の涼宮さんには退屈な場所じゃないか?
「月初の会議の時は、私も東京に戻って来させていただきます。気にしないでください」
それでいいなら、構わないけどさ。
地元の人には失礼だけど、ド・田舎だよ。俺は好きであそこに移住したが、都会育ちの人には寂しい場所だよ。
俺はあの静けさが好きだ。最近はうるさくなったけどさ。
こうして俺は査定局と人材育成局の局長として、この国のダンジョン政策の一翼を担うことになった。
否が応でも政治にかかわってしまうようだが、まあやれることをやるよ。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
<完結>
ここまでお付き合いいただき、ありがとうごあじました。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
裏山にダンジョンが出来たから攻略したら、ダンジョンを管理する組織の理事になって総理に意見を言う立場になったんだけど? 大野半兵衛(旧:なんじゃもんじゃ) @nanjamonja
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます