第42話_オファー

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 042_オファー

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 ダンジョン管理省が設立されることが公式に発表され、それに伴ってJDSOは吸収されることに。どこが吸収したのかというツッコみは要らない。俺も思っていることだから。

 実際にはJDSOが母体になって、職員もそのままスライド採用される。


 俺はこれでJDSOから解放されると思ったんだけど、そんなに甘くはなかった。

「世渡理事には人材育成局の局長に就任してもらいたいのです」

 高台寺理事長からのオファーだ。


「公務員になるつもりはありませんので、お断りします」

 きっぱり断ったぜ。


 そもそも俺は国家公務員採用総合職試験を受けたことさえないから、当然ながら合格してない。つまり官僚にはなれないのだ。(勝手にそう思っている)


「それなら大丈夫です。人材育成局は省外部局として、民間人によって運営していただきます」

「省外部局? そんなものがあるのですか?」

「総理が特別に設置するそうです」

 総理の判断かーい!


 あの総理、結構フットワーク軽い。そしてどうしても俺を取り込もうと考えている。困ったものだ。

 これ、断ってもしつこいんだろうな。


「公務員法でしたっけ? あれにひっかかりませんか?」

 副業禁止とか、なんだかんだとか。

 俺、面倒なの嫌なんですけど。そういった鬱陶しいことから解放されるために、田舎に引っ越したんだから。


「大丈夫ですよ。公務員ではない民間人ですから」

「断っても別のポジションを提案してくるのでしょうね」

「理解してもらえると、楽で助かります。そんなわけで、人材育成局の局長、引き受けてくださいますね」

「職務の内容によります」

「そこは黙って頷くところですよ」

「嫌です」

 職掌も理解してないのに、OKできるわけがない。

 OKした後に、総理の補佐官みたいなものですとか言われたら暴れるぞ、俺。


 人材育成局は簡単にいうと、ダンジョンハンターとJDMA職員の育成・管理が主な職掌になるらしい。

 局員は全員民間人から登用されるらしい。


「人材育成局の局長、引き受けてくださいますね」

「嫌です」

「なぜですか?」

 忘れてもらっては困る。俺がJDSOの理事を引き受けたのは、拒否権を持っていたからだ。決定権はなくても拒否権があれば、気に入らないことにNOと言って潰せる。ただの中間管理職になんの魅力があるんだ? そんなものをありがたがる俺じゃないんだよ。


「さすがに拒否権は難しいでしょう。まがりなりにも国の組織ですから」

「ですから、総理にはそう言ってお断りをお願いします」

「それで納得してくださったらいいのですが……」

「そこは高台寺理事長の魅力で……総理を掌の上で転がす手腕に期待してます」

「やってみますが、無駄だと思いますよ」

「俺にも引けないものがありますので(ニコッ)」

 いい笑みで答えておいた。


「本当に事務次官しませんか?」

「もっと嫌です」

 高台寺理事長は疲れ切った顔で部屋を出て行った。わざわざ岐阜県の山の中までやってきたのに、すみませんね。




 高台寺理事長から人材育成局の局長のオファーを受けてからしばらくは、平穏な日々が続いた。

 自衛隊員の戦力アップ研修を行いつつ、そろそろやってくる台湾からの研修者たちの受け入れ準備も進めていた。


 しかし自衛隊員って、本当にすごいよね。何がすごいかというと、俺の無茶ぶりにも文句を言わずにYesとしか言わないんだよ。モンスターの群れに文句一つ言わずに、突っ込むんだよ。

 死にそうなら助けるつもりだけど、今回の研修メンバーは死を恐れない一線級の自衛隊員―――レンジャーが集められたようだ。


 レンジャーは本当に特別な隊員らしく、レベルもないのにバカみたいな戦闘力を持っていた。レベルの恩恵でゴリ押しの俺なんかより、よほど素晴らしい戦闘センスを持っていると思う。そんな彼らのレベルが上がると、手のつけられない化け物になりそうだ。


「教官殿! 第10エリアボスの討伐を確認。アイテムボールの黒と黄がドロップしました!」

「ご苦労様。怪我人は?」

「軽傷2。他3名は無傷です!」

 第10エリアのボスをほぼ完勝するだけの力を持っている。それがレンジャーという化け物なのだ。

 何気に第10エリアの踏破は、俺以外で初めての快挙になる。さすがだね。


 そんなレンジャーたちとダンジョンから出ると、チャタとフウが待っていてくれた。

 2匹とも可愛らしくお座りして、つぶらな瞳で俺を迎えてくれる。


「よしよし。待っていてくれたんだな」

「アンッ」

「ワウンッ」

 わしゃわしゃと2匹を撫で回す。

 この時間が一番幸せだよ。

 あと土いじりも楽しい。農夫でいいんだけどね、俺。


「教官殿! 私たちはこれで解散しますが、よろしいでしょうか?」

「あ、ごめん。解散していいよ。明日の朝一で、レベルとスキルの報告をよろしくね」

「はっ! ありがとうございました!」

「「「「ありがとうございました!」」」」


 レンジャーたちは最後まで礼儀正しいな。

 俺も見習わなければ……あそこまではいいか。多分無理だ。


 

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