★★★ Excellent!!!
どこまでも生々しい日本版ドラゴン学 鯨ヶ岬勇士
イギリス・ドイツ産のワームに目を見た相手に畏れさせるワイバーン、ナッカーホールに住むナッカーやコカトリスなどなど......とドゥガルド・A ・スティール『ドラゴン学』シリーズの日本版を思わせる作品でドラゴン好きにはたまらない傑作でした。
しかし、ドゥルガドが翻訳した(という設定の)ヨーロッパのドラゴン研究者の視点で描かれている『ドラゴン学』とは異なり、観客向けに『ジュラシック・パーク』シリーズで山羊をT-REXの檻に放り込むような演出をする、高い宝石は用意できないのでレジンで代用するなど、どこまでも日本的な仕事が続く点が外連味があって楽しめます。それだけではなく糞掃除から寝藁の手入れといった飼育員特有の仕事と悩み、ワームの発音など慣れない作業を獣医学部出身者や熱意ある飼育員に囲まれて行うという“不思議”かつ“どこかにあり”そうな仕事を、“普通”の公務員である主人公の目を通すことで感情移入しやすくなっており、ドラゴンだけに目から鱗でした。
他にもファンタジー作品では取り上げられ難いドラゴンが及ぼす影響(高熱の燃える糞尿を出す、井戸を使って自慰行為をして毒の精液で水脈を汚すなど)についても取り上げられているのは魅力的です!
それだけではなく、ドラゴン退治の英雄が持つ不可思議な理不尽さ(ドラゴンの死と引き換えに改宗を迫る聖ゲオルギオス、地上にサタンを不法投棄する大天使ミカエ…
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