おすすめです。
主人公は神官ですが、ヒール魔法がどうこうではなくて、雰囲気は漫画ヘルシングのイスカリオテの神父に弟子がいたらこんな感じでしょうか。アーメン。
信念と信仰と祝福の力で困難と戦うという所に胸をうたれます。
読みはじめは、いままでと異なる世界観に戸惑いますが、入り込むと抜け出せません。
少年神官は愛らしくも責任感が強いダークヒーロー
他のキャラクターも素晴らしく生き生きと書かれています。
追記
追加せずにはいられない。第4部青年期以降も素晴らしい。奇跡の力の代償は重く、すべての記憶を失って、使徒として再生した彼の、ニヒルでやんちゃな感じもいいけれど、第4部もまさに終盤、その力強さと深い愛が物語となっていて、のめり込みます。こんな素晴らしい物語に出会えてありがとうといいたい。
どの登場人物たちも滅茶苦茶に軸がある。そして大抵は頑固者たちです。
人が持っている根っこの部分はそれぞれ違うので、一度和解しても決裂することがよくあります。但しそれらは浅い物語によくある、展開の都合上に見えるような不自然なものではなく、個々人の軸に起因するものなので決裂に納得ができます。そういう物語は内面を掘り下げるあまり重厚で読むのに体力を使いしんどいことがありますが、この物語は主人公の苛烈さ故、突っ走る爽快感のほうが大きくライトに読めます。
非常に魅力的な登場人物が多い中、輪をかけて好きなのは主人公です。
台詞だけを見れば傲慢・苛烈といったいけ好かない野郎で、実際に突っ張ってます。
しかしその端的で苛烈な言い回しと、自ら体どころか心も投げ売って他者を救おうとする献身ぶりが彼の言動に説得力を生んでいます。
俺TUEEやライトすぎる展開に飽きた、分厚いファンタジーと格好いい神官主人公を見てみたいと思われたなら非常にオススメです。
宗教をテーマにした作品ですが、書き手の引き出しの多さ、人間を描き出す視点の鋭さには恐れ入ります。
神が実在する世界で、人間として生きることの困難さ、人間の度し難さをこれでもかと描き出した作品です。
それでいて作品が痛快さを損なわず、ある種の心地よさを覚えるのは主人公の果断な性質あればこそ。
しかし彼もまた人であり、決して迷わないが常に悩み苦しむ、それが素晴らしい。
彼が語る示唆に富んだ言葉の数々も説法としての説得力に満ちており、思わず唸らされます。
本作で神とされるアスクラピアはギリシャ神話におけるアスクレピオスにネメシスを足したような存在で、これもまた人間の二面性を反映しているかのよう。
主人公を取り巻くキャラクターも愛憎、禍福、恩讐の中でもがき苦しむ者たちです。
登場する者たちにこの作者様がどのような未来と結末を与えるのか、まだ未完ですがこの先も非常に楽しみにしています。