第26話 『LAMBTON WORM』
『ラムトン家の跡取り息子は、釣りばかりしてる遊び人だった。ある日のこと、いつものように釣りをしていると口の両脇に9つの孔があるミミズに似た奇妙な生き物を釣り上げた。
悪魔のような醜悪な外見に恐れをなした男は、通りがかった見知らぬ老人の忠告を聞かずに、井戸に捨ててしまった。井戸に投げ込まれたその生き物はワームであった。ワームはどんどん成長していき、ついには井戸におさまりきらなくなると這い出て丘を新しいすみかとした。やがて丘を三周できる大きさまでになり、牝牛のミルクをすすり、家畜をむさぼりくらうようになった。息子は自分のしでかしたことの贖罪のために十字軍遠征に出かけた。その間にワームはますます手がつけられなくなり牛9頭分のミルクを求め、要求が通らないと暴れまくり村人たちを恐怖させた。多くの騎士がドラゴン退治にやってきたが、ワームは切られてもすぐに再生してしまう力を持っていたために倒せるものはいなかった。そして7年後、跡取りが村に戻ったときには故郷はすっかり荒れ果てていた。彼はなんとかこの状況を変えないといけないと決意し、ブルージーフォードの賢女に助言を求めた。賢女は槍の先を何本も取り付けた鎧を着てウィア川の突き出た岩の上で迎え撃つように言い、助言の代償に「ワームを殺して屋敷に戻った後、一番最初に出迎えた者を必ず殺す」ことを約束させ「誓いを破ればラムトン家の者は9代に渡ってベッドの上で息を引き取ることができない」と忠告した。跡取り息子は川の真ん中にある石の上にたち、ワームと対峙した。トゲつきの鎧によりワームは締め付けることができず、切られたところからすぐに元通りになってしまう力も、切り落とされてしまった部分がどんどん川に流されてしまい、再生できないまま切り刻まれて退治された。死闘を制した跡取りは、ラッパを吹いてワームを退治したことを知らせ、あらかじめ決めていたとおり、飼っていた猟犬を解き放つように合図した。 けれど彼の父は喜びのあまり犬を放つのを忘れ、帰ってきた息子を真っ先に迎えてしまった。「一番最初に出迎えた者」になってしまった父を殺すわけにはいかず、誓いを破ってしまったことにより、以降9代にわたってラムトン家はベッドの上で死ぬことができなかった』
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