第9話  悩み相談 7/17(金)

今日も2話投稿します。コチラ第1話目です。

2話目は夕方から夜にかけてを目指します。

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 今日で期末テストも終わり、あとは1週間後に迫った夏休みを待つだけの暑く気だるい日々を消化するだけ。


 ただ唯一、俺には消化できない懸念事項がある。


 今週、月曜日の朝からずっと金曜日の今日まで駅の彼女からの反応は一緒。

 最初は目を合わせてくれず、7時27分の始発列車がホームに入ってくる直前に目を合わせてぷいっとする。

 昨日、イチかバチかで下り線ホームに行ってみたけどやっぱり以前と同じで彼女に会うことはできず、俺が上り線ホームに戻ると下り線ホームに彼女が現れたりする。

 

 もちろんその時もぷいっとされるのは一緒なのだけれど……


 そして必ず別れ際にはアカンベーをされるのだけど、これの意味が未だに俺にはぜんぜん分からない。しかも、そのアカンベーが妙に可愛いのでちょっとだけ期待している自分が居たりするのも困りもの。







 放課後の教室。人もまばらで、今日からテスト休み明けで始まる部活のために帰宅せず昼食をとっている生徒もいる。


「なあ、雅義、あれって何だと思う」

 駅の彼女のことを相談してみた。


「あれってどれだよ。おれは知らないし無壱が自分で頑張って聞き出してこいよ」

「聞けないから雅義に相談してんじゃん」


 相談する相手が間違っているような気もするが相談相手なんてそもそもそんなには居ないから仕方ないのだ。


「どうしたの? 無壱ちゃん例の彼女のこと怒らせたの? やっと話せたの?」

 しょうがない。陽向にも聞いてみよう。


「彼女とは話してもいないし、先週の土日は当然ながら会ってもいないのに今週になったらずっと不機嫌な様子なんだよ。陽向はなんだと思う?」

「な、陽向だって意味分かんないだろ?」


 雅義にはもう聞いてないんですけど?


「そーだね、分かるわけがないよね。無壱ちゃんが自分でなんとかしなきゃ、だね」

「そんな事言われたってさ……」

 万策尽きたということか。


「また例の女の子の話かい? イッチーはもう諦めてその子は僕に譲りなよ」

「始まってもいないし何もないんだけど? なんで直克に譲るとか譲らないの話になるんだよ? それにさ、もし俺のせいで機嫌悪いとかイヤじゃない?」


 実際、一番気になる理由って知らない内に嫌な思いをさせていたらどうしようってことなんだよね。


「なるようにしかならないんだから放っておけば良いんじゃないかな」

「まあ、実際それしかないんだけどな」


 新の言う通り、接触して話が出来ないのだから理由を聞くことも出来ないし、解決する方法がないのだよね。


「だからむーちゃんがホームでその彼女に大声出して愛を叫んじゃえば良いんだよ」

「……なんでそうなるんだよ。水琴はさ、話に加わらなくていいよ」

「むーちゃん。……ウチにはもう飽きたのね。ウチ、捨てられるのね」

 うるさいよ。黙れ。



「なあ、カガミの話なんてもうどうでもいいから夏休みの計画決めてくれないか?」

「どうでもいいって……アラタ。しどい」


 来週からは夏休みなので、このメンバーで遊びに行くことは決まっている。あとはどこに行くかなんだけどドイツもコイツもがどうにもこうにも優柔不断なので未だに行き先が決まっていない。


 一番まともそうな雅義がしっかりとリードしてやれば良いのに、みんなをそっちのけしてホワホワな陽向を面白がってかわいがっているから埒が明かない。


 直克は直克で、行きあたりばったりの適当なことばかりを調子よく言うだけなのでこういった計画を立てることは苦手。ワイワイガヤガヤ意見は言うが答えは出さないタイプだ。


 新はさっきの発言『計画決めてくれないか?』からも分かるように計画立案などは人任せだ。決して自分から『決めよう』なんて言わない。基本みんなの結論に追随するだけなので、自分から話を振ったくせに会話に加わっていない。もう少し主体性ってものを持ってもらいたい。


 水琴はそもそも話している内容を理解しているのだかも怪しい時がある。会話をしているにも関わらずにだ。かなりとぼけているのでちょっと困るときもある。悪い娘はではないのだが。


 俺は本当にコイツラと一緒に遊びに行けるのだろうか? 目的地に到着するのだろうか? 去年、陽向のオジサンの別荘というか田舎の空き家、そのオジサンの実家が貸してもらえることになったのだけど、着いたらまず掃除をすることが条件だった。

 陽向はそれをオジサンから聞いていたらしいのだけれど、謝罪は『みんなに話すの忘れてたぁ~ あはは、ごめんごめん』の一言で終わった。そのまま拒否して帰るわけにも行かず、半日は掃除に当てられることになったのだが、あれはあれで楽しかった。まさか今年もなのかな? それも悪くはないと思ってしまう。


 去年と同様でも俺は全く構わないのだけど、みんなの意見がホントまとまらない。

「俺もバイトがあるからちゃんと決めてもらわないとシフト出せないんだからよろしく頼むよ――」


 いっそのこと、どこへ行くかは後回しでもいいから、何時から何時までをそのに費やすかだけでも決めてくれたらいい。

 

「――というか、お前らこの前の期末テスト赤点とってないだろうな? 赤点だったら遊びに行くどころじゃないぞ」


 みんなを見まわすと、陽向はまあ学年トップ10以内だから余裕だと思う。雅義も俺よりは順位は下だけど、赤点は取らないだろう。


 さて、今俺の言葉で目を逸らしたのが3人。

「まあ、中間テストは赤点無かったし。まあ、ギリだけどなんとか。まあ、なんとかなっているんじゃないかな? まあ、大丈夫だと思う、よ?」

『まあ、まあ、』言いながら明らかに動揺しながらも大丈夫という新。


「今日も暑いなぁ~」

「なあ、直克。今回はどうだった? 中間テストは英語が壊滅的だったそうじゃないか?」


「……」

「直克? なーおーかーつーくーーーーん?」


「22点」

「ん?」


「だから、22点だよ。英語のテストの自己採点は! 赤点だよ、絶対補習だよ。ちぇっ」

 ハイ一人脱落。もうひとりは?


「ウチ?」

「そう。水琴はテストの結果どうだった?」


「えっとね。英語は3つ答えが分かったよ。物理はもう少し頑張ったかも。他のは30点ちょっとは多分取れたから今回は2教科で収まる予定だよ。凄いでしょう? 褒めてもいいよ」

 陽向に頭を撫でられてご満悦の表情をしている水琴は、2教科が赤点ということでいいんだな。




 数学はなんとか新も含め及第点を取れているようだ。今のところの予定としては、夏休みに入った直後に二人は補習授業を受け、補習のない残りの俺たちは、学校の自習室でさっさと宿題をやっつけることに決まった。

 夏休みに学校に来るのは面倒だが、家で一人きりで宿題をやるよりは確実に効率良さそうだし、分からないところを陽向に教えてもらえるっていうメリットもある。

 何処に行くかはそのときまでに煮詰めるとして、日程だけはお盆の時期が過ぎたら行く、とだけ決めてこの日は解散した。


 やっとバイトのシフトが決められるよ。





 おい⁉ 俺の悩み相談は何処行った????




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