第37話 BBQ 8/19(水)
起きたら既に時刻は10時過ぎだった。
昨夜も双海の勉強はスズカと日向に任せきりにしてしまった。もの凄く反省。
双海は俺の妹なのだから勉強を見てやることは出来ないかもしれないけど、一緒に居るくらいは幾らでも出来たはずなのに申し訳ない。
今夜からはちゃんとする。明日からちゃんとする詐欺にならないようにしなくては……さすがにスズカにも日向にも申し訳が立たない。
日向に昨夜、相手にされなくていじけていた雅義は取り敢えず置いておく。雅義、日向といちゃつくことしか頭にないのかよ? と以前の俺なら無下にするところだが今の俺はお前の気持ちはわかるぞ。折角だもんな、俺もスズカといちゃつきたい。
さて今日はお昼からお義姉さんのところと義妹さんところと一緒に庭先でBBQをする事になっている。
そして時間的にBBQの買い出しに出かける時間なのに今起きたってどういうことだよ。
普通にヤバい。本格的に時間が無くなってきている!
一緒の部屋に寝ている野郎どもを叩き起こして大慌てで身支度を済ます。
顔を洗って歯を磨いて、寝癖は直す暇がないので凉太郎さんにもらったJAの帽子を被る。
買うのをすっかり忘れていたが、案外とみんな他人の帽子などに興味がないのか農協の帽子だって気づかないので今シーズンはこれでもいいかと思っていたりする。
でも、この帽子を被るとスズカがすごく微妙な顔するので次に買い物に行ったときは必ず買いますけど。
「おはよ~ みんな起きているか?」
お義姉さんがやってきた。ギリギリ間に合った。間に合ったよね? 直克の寝癖がボンバーだけどそういう髪型だってことにしてしまえばいいだけだ。知らないけど。
女性陣はお義姉さんが来たタイミングで起きだしたけど、どうも寝起きのその姿は見せられるような状態ではないようで顔は出してこなかった。
「この後、妹たちが来るからソッチのほうをよろしくね。日向ぁ~ 聞いてる?」
「ふあ~い。それまでには用意しておくぅ~」
ちょっと怪しいけど、4人もいればなんとかなるだろうと俺達はお義姉さんの買い物に同行することにした。
買い物なら女性の方がって思うだろ? 違うんだよ。ジェンダーレスとかそういうのでもないよ。
お義姉さん、むちゃくちゃ買うんだよね。
たくさん買って夜まで食って、食って食いまくってをするので、買う量がすごいんだ。
それなので荷物持ち要員として男手が必要となってくる。肉も野菜もキロ単位だもん。
お義姉さん義妹さんの夫衆は夕方からやってきて、そこからが夜の部のスタートとなる。
夜の部が始まる頃にはどうせ俺達は腹がくちくなって何も入らなくなるから、大人はゆっくりとお酒を飲みながら楽しむ予定だそうだ。
俺達は義妹さんところの双子ちゃん達と花火大会に興じるとしよう。
「野菜はいっぱい持ってきたからね。無いものだけ買えばよし。あんた達締めの焼きそばは食べるんか?」
「飲み物はデカイペットボトルにしておいて! 酒はオバちゃんがいないと買えないからチョット待っていて」
「次はお肉屋さんだよ。クーラーボックス用意しておきな!」
「甘いものはいるのかい?」
兎に角たくさん買うし、よく喋る。俺達ただの日向の友だちって言うだけなのにものすごく俺達の面倒をよく見てくれる。
今年もここに来てよかった。
「雅義」
「なんだ?」
「おまえ、やっぱり日向と結婚してこっちに移住しろよ」
「⁉ ゲホゲホ……藪から棒に何を言い出すんだ?」
真っ赤な顔して咳をする雅義にお義姉さんも乗ってきて「うちで仕事は面倒見るから二人して嫁いでおいで!」ってそそのかす。
「か、考えておきます……」
雅義も嫁ぐんかい!
その日のBBQは大いに盛り上がった。義妹さんところの双子のお嬢さん、瑞江ちゃんと孝江ちゃんも来たし、二人のお友達も何人か連れて来ていた。
子どもたちはやたらとチョロチョロと動き回るので結局何人いたのか俺は把握してない。把握したところで意味ないと思うしね。皿もコップも食べ物も充分以上あるから大丈夫。
子どもたちは当然ながら、直克と新の担当。彼奴等のロリコン疑惑だけが深まっていった様な気もするがみんな楽しそうだったから見なかったことにしておく。
「お、お兄ちゃん……もう私は食べられないよ」
「大丈夫、双海ちゃん? そういう私ももう無理……」
双海とスズカはそうそうにギブアップしたけれど、日が落ちてからまた食っていた。食べたもののお肉はどこに行くんでしょう?
スズカも双海もサッと両手で自分の胸を隠すし、キッと俺を睨む。
いやいや、俺、心で思っても口では何も言っていないし、何なら視線もそこに向けていませんよ?
「お兄ちゃんはエロいから」
「官能小説を読みふけっているからね!」
二人の俺の読心術が向上しすぎていて怖いんですけど!
夜の帳がすっかり降りると満天の星空が見えてくる。都会では見ることが出来ない風景に暫し言葉を失う。
「私達の自宅の方も田舎だと思っていたけど、この景色をみると結構栄えているんだなと思うな」
「うちの方じゃなんだかんだ夜空もぼんやり明るいものな」
子どもたちがわいわい騒いでいるので、俺とスズカは隅っこの方でくちくなりすぎた腹を擦りながら星を眺めていた。
「ここは蚊がいなくていいよね。うちの裏山なんか雰囲気は似ているのにヤブ蚊だらけで無防備に入っていけないもん」
「スズカんちは庭も広いから無理して裏山にいかなくてもいいじゃん」
「それもそうだね。あはははっ」
「今度あっちでもBBQでもやってみないか? スズカんちが許してくれたらだけど」
「いいよっ、よくBBQはやっているから大丈夫だよ!」
「そうしたら涼しい秋になったら家族でBBQだな! BBQづくしだ」
「ねえねえ。お兄ちゃんとお姉ちゃんはラブラブなの?」
「え~ チューしないの?」
「パパとママはよくチュ~しているよね! ね~瑞江!」
「パパとママはお風呂も一緒だもんね! 孝江!」
いつの間にか俺達はガキンチョに囲まれていた。双子のご両親は仲がよろしいようで弟か妹も直ぐできちゃうかもね⁉
義妹さんが、顔を真赤っかにしてこっちに走ってくる。あの赤いのはお酒のせいじゃないよな。
双子ちゃんもぶっちゃけ過ぎだよ……
BBQの火の始末は大人の方々がやってくれるそうなので甘えさせてもらった。子どもたちも散々遊んで満足そうな良い顔して帰っていった。一方子どもたちが帰ってしまい直克と新が寂しそうだったのは言うまでもない。
結構遅い時間まで遊んだせいで、双海は勉強もせず寝てしまっていた。無理しても良いことないだろうし、気持ちよさそうな良い寝顔だったからそのまま寝かしてあげた。今晩くらいは良いだろう。
確か明日は双海一人だけ出掛けずに勉強の遅れ分の取り戻しをするって言っていたはず。
明日の遊びの予定は、俺はキャンセルして双海に丸一日付き合ってやろうと思う。
俺の手を握ってじっと顔を見ているスズカにはバレているんだろうな。
「ねぇ、チューしないの?」
水琴、お前うるさい!
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