第36話 お義兄さん 8/18(火)
昨日のバス移動はほぼ定刻通りで高速バスの停留所を降りた。降りた先では今度は路線バスに乗り換える予定だったのだけどお義姉さんとその旦那さんがわざわざ迎えに来てくれていた。
今回は8人の大所帯で来てしまったので移動一つとっても大騒ぎになっていたので本当に助かったと思う。
お義姉さんや義妹さんに買ってきたお土産も喜んでもらえた。高校生のお土産なのでたいしたものではないけど喜んでもらえると嬉しいものだ。
到着直後から大掃除を始めてさっさとゆっくりする時間を作る。
始めてきたスズカと双海はほぼ右往左往するばかりだったが、最後の方は慣れたようで一緒に拭き掃除をしていた。
最初のこの掃除があったせいか、長い移動のせいかは分からないけどスズカも双海も俺の友だちとだいぶ打ち解けていた。
二人共人見知りをするので心配していたけど杞憂となってよかった。
昨夜の食事はお義姉さんの差し入れで賄ったけれど、今朝からは全部自分たちでやらないといけない。
朝食の食材は昨日の掃除をしているうちに水琴と新で買い出しに行ってきてもらっていた。
「おはよ~ 朝ごはん作るよ~ 起きて!」
水琴は学校のある日はなかなか起きないと言うくせにこういう遊びの際はしっかりと定刻に起きる。
――ただちゃんと起きたのはこの日だけだった。
「昨日遅かったんだからもう少し寝かせてよ……」
日向がもぞもぞと何か言っているが、水琴が「じゃ、日向の分は無しってことで」と言うやいなや即飛び起きていたという。
そんな話をスズカに聞きながら朝食をいただく。
今回参加の女性陣は全員料理ができる。水琴と双海に関してはプロ顔負けの腕前だしスズカも日向も料理は上手だ。
それに反して野郎どもはテンプレの様な料理できない男子の集まりだ。一人くらい料理男子はいないのかね?
俺も出来ないから人のことは言えないけどな。
「無壱くんはお料理しなくていいですよ。私が全部作ってあげるからね」
「そだよ。うちにいる間は私がガッツリ胃袋掴んどくから、その後はお義姉ちゃんに任せるよ!」
ありがたいけどそういう話は外でするのはやめような。ほら、水琴はニヤニヤしているし、余り物男二人はまたもやどんよりモードに入ってしまったぞ。
「そんな朝からいちゃついていないでさっさと用意して出かけるぞ。俺達には移動手段が自分の足とバスしかないんだからな! タクシーなど言語道断なのだ」
雅義はそう言うとバクバクと食事を食べ始める。そうだな、その通り。取り敢えず遊び優先にするためにはちゃっちゃと食べちゃおう。
今回の予定は次のようになっている。
17日月曜日は移動と掃除。
18日火曜日、今日は隣街の有名遊園地に行く。
19日水曜日はBBQ大会。お義姉さんのところと義妹さんのところと合同で焼きまくる予定。
直克と新のフレンドの瑞江ちゃんと孝江ちゃんも来る予定。
20日木曜日は村内の有名スポットに行ってのんびり散策。半日ほどで後はフリー。
21日金曜日は超有名所湖にお義姉さんたちが連れて行ってくれる約束になっている。
22日土曜日。帰宅の途につく。本当は日曜日に帰る予定だったのだけどこの日ならオジサンが迎えに来られるということでこの日までに。
オジサンはマイクロバスで迎えに来てくれるって言うけど、何処からそのマイクロバスが出てきたんだろう? 後で聞いたらお勤め先の会社が貸してくれたんだって。いい会社に勤めていますね!
毎日遊んでばかりのようだけど、双海は受験勉強があるので夕飯作りなどは免除。昨夜も食後にみんながまったりしている時間にWi-Fi通信機取り出して授業の動画を見て勉強していた。
一人で寂しかろうと双海のところへと俺が行ったが、スズカと日向が双海の分からないところを教えてりしてくれているので任せてしまった。
俺も含めた残り5人は居間でゲームをやったりして過ごしていたが、雅義が一番寂しそうにしているのがちょっと笑えた。
双海勉強が終われば毎日遅くまでカラオケ大会や花火をやりまくる予定。もちろん今夜もそのつもり。
何しろ一番近所の家までも100メートル以上離れているので何をやっても迷惑にならない。
朝食を食べ終わったら、片付けは野郎どもの仕事。野郎どもの身支度などたかが知れているので、順場に洗い物をこなして着替えを済ませておく。
洗濯物も男女で分かれて片付けてしまい、女性陣の干し場には野郎は近づかないこととなっている。
因みにだが野郎どもにまともに洗濯物が干せる人員は一人もいなかったので、干した洗濯物たちはしわしわになっていた。
そのせいで日向に雅義が、スズカと双海に俺が叱られていた。直克と新は……以下略。
久しぶりの遊園地に俺達はオープン時間から帰りのバスが有るギリギリまで遊びまくった。
スズカと二人きりの観覧車ってやつを楽しみにしていたのにゴンドラに双海まで乗り込んできたので叶わなかった。
途中でその事に気づいたらしい双海がしきりに目を泳がしていたので、まあ許してあげよう。
俺はジェットコースターとうものが苦手だ。スズカも嫌いだという。なのに双海はアレが大好きなのだ。
まったく気がしれない。
とは言え、ジェットコースターが有名な遊園地なので、双海のことは水琴に任せ。俺とスズカは二人で遊園地デートを楽しませてもらった。
観覧車ももう一度二人きりで乗った。オレンジ色の夕日をバックに……とかなら雰囲気は良いのだけど日中はやっぱり暑いし、隣のゴンドラで何故だか日向と雅義がニヤつきながらコチラを見ていたのでそんな雰囲気にはならなかった。
あまりにも暑くって、絶叫系ではないが結構急降下するタイプの水の中にザバーンと入る乗り物に乗ってみた。
スズカはカッパを着ていたので被害などなく済んだが調子に乗った俺はずぶ濡れで、暫く日にあたっては下着まで乾かすはめになってしまった。
みんな最初こそ一緒に行動していたが途中からはそれぞれ好みの乗り物にバラけてしまったので、夕方のこの時間まで皆が何処にいたのかさえ分からなかった。
「お兄ちゃん! お義姉ちゃん!」
双海が水琴と一緒に駆けてきた。その後ろを直克と新がトボトボと付いてきている。4人は一緒に周ったみたいだな。
「よう双海。今日は楽しかったか?」
「うん! こんなに楽しかったのは久しぶりかもしれない! 水琴さんからもお料理の話いっぱい聞けてよかった!」
抱きついてきて俺を見上げる双海の姿はまるで子供のようだ。これを見られただけでも連れてきた甲斐がある。甲斐だけにな!
「そっか、そっか。良かったな。水琴、サンキューな」
「ううん。ぜんぜんおっけーだよ~ 妹が出来たみたいでウチも楽しかった!」
水琴には世話になっちゃったな。今度何か奢っておこう。
「「お義兄さん、俺達も……」」
殴っておいた。黙って……殴っておいた。
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