第24話 ファーストキスの相手 8/3(月)-2/2
スズカのお母さんはうちの父さんの知り合いなのかな?
「よっちゃんはさ、わたしと小中高とずっと一緒だった幼馴染なんだよ」
「ええええっ~」
ただの知り合いじゃなかった!
「子供の頃はよっちゃん
「は、はい。それはもう元気です」
「ふふ。よっちゃんはさ、初恋の人だし、わたしのファーストキスを捧げたヒトなのよね」
「「!!!!!!!!!」」
「中学の終わりに告白されてから高校3年ぐらいまで付き合ったのだけど、わたしがガサツ過ぎてよっちゃんに最後には振られちゃたんだよね。あはは、今でもガサツでスズカに叱られちゃうものね。付き合い始めの二人に別れ話は無いか! あははは、ごめんごめん」
スズカのお母さんは「夕飯の用意をするから、待っておいで」と台所に行ってしまった。
「私のお母さんと――」
「――俺の父さんが……」
「幼馴染で――」
「……交際していた」
「「……マジか⁉」」
俺とスズカの二人して暫し放心状態になる。いきなりの告白に正気でいろというのも無理というもの。
「あれ?! 夕飯って。俺はもう帰るから構わないでいいって言わないと!」
「た、食べていけば? そうすれば少しでも無壱くんと一緒に居られるし……」
スズカは俺のシャツの裾をちょこんと摘んで上目遣いでおねだりするかのように言ってくる。これ断れないやつ。というか少しでも一緒にいたいなんて可愛すぎる。
「あっ、うん……じゃあ、双海に連絡だけいれておく」
「にししし、お熱いですな」
「お、お母さん!」
夕飯の支度に行ったはずのスズカのお母さんはこっそりと柱の陰から俺らのことを覗いていたようだ。ガサツと本人は言っているが陽気で面白い人だと思う。ただ覗くのは反則だと思うけどね。
居間でスズカと他愛もない話をしているとスズカのお父さん帰ってきた。当たり前だけどもう夕飯時なのでお父さんだって帰ってくるだろう。両親の帰宅時間が遅い我が家基準で考えちゃ駄目だった。
俺は一気にに緊張してしまい自己紹介もカミカミになって非常に恥ずかしかった。
娘が男を連れてきたら父親というものは不機嫌になるものと思っていたけど全くの
最後には酒に酔い感涙に
農業と建設業で鍛えられたと思われるガッシリした両腕に掴まれてちょっと怖くて結構ビビっていたのは俺の心のなかに仕舞っておこうと思った。
因みにお名前は有働凉太郎さん。農業をしながら建設業の会社を経営してらっしゃる社長さんでもある。そしてお母さんは光枝さんで、同じく農業と夫の会社の経理担当だそうだ。
「凉ちゃん、おかえりなさい」
光枝さんが凉太郎さんのお迎えに奥の台所から出てきた。
「凉ちゃん。おの無壱くんは、ずっと前に話をしたよっちゃんの息子さんですってよ」
「よっちゃん? ……よっちゃんって、おまえの? あの、あれか⁉」
「そうよ。幼馴染のあのヒトよ」
「むむ、ミッチャン! お前マサカ! またソイツと?」
「そんな訳ないじゃない。おバカな凉ちゃんね、わたしにはあなたしか居ないもの。つんつん」
「そ、そうか。そうだよな。むふふ、ミッチャンはかわいいやつだな」
いきなりいちゃつき出すスズカのご両親。
俺はスズカの両親の何を見せられているのだろうか?
スズカも下むいて恥ずかしさに耐えて真っ赤になっている。
なおスズカには兄もいるが、今は大学に通うため家を出ているのでここにはいない。
「無壱くん、ご飯できるまで私の部屋に行っておこうよ」
確かにご両親の砂糖まみれの状態を見せつけられるのは心臓によくないな。
「うん、いいの?」
「散らかっているけど、我慢してね」
スズカの家は大きな2階建ての木造建築で、The農家なお宅である。
スズカの部屋は2階にあり、今は空いている兄の部屋と隣り合わせになっている。
「そっちが兄の部屋で私はこっち。どうぞはいって」
「ありがとう。お邪魔しま……ごめん」
「え?」
どうぞといわれ先に部屋に入ると、今日の洗濯物だろうか? 畳んであるが、一番上に黒い少しエッチな下着が一番上になった状態で置いてあるのが目に入った。
「うわああ~」
洗濯物に飛びつくスズカ。今更です。
「――片付けたからどうぞ」
「うん」
「見た、よね」
見ていなければ謝ることもなかったわけで、しっかと見届けました。
昨日うちに来たときにつけていたりしたのかな?
「い、い、いつあんなのじゃないからね。昨日だけだから……」
勝負下着を告白してしまい更に墓穴を掘りながら真っ赤な顔して言い訳をするスズカ。
家自体は古いけど、内装はリフォームしたようでキレイだった。
スズカの部屋はフローリングになっていて、白い壁にピンクのベッドにはぬいぐるみ等も置いてあって可愛らしい部屋だ。
勉強机の上には教科書やノートが色々広げてある。
「これ宿題?」
「うん。結構なボリュームあって、やっと7割方終わったところかな」
「無壱くんの宿題は進んでいるの?」
「うん、あとすこし残っているだけ。読書感想文ってやつ。入試の記述式試験の練習だから気を抜くなだって」
「か、官能小説で変なもの抜かないように……ね」
「スズカって思いの外エッチだねぇ~ って真っ赤になるなら、変なこと言わなければいいのに」
「ううううるへい……私はエッチじゃないけど無壱くんがエッチだから合わせてあげているだけなんだからねっ」
ちょっとふざけた後は今週のバイトのことなどを話してゆっくりとした時間を過ごす。スズカと一緒にいると落ち着くけど、ふとした仕草にドキドキすることもあって急に落ち着けなくなることもあったりする。
「昨日……むふふ。無壱くんが告白してくれたんだよね。えへへ、嬉しかったよ。おんなじ気持ちだったって」
「うん。自分の気持ちに気づいてからはあっという間だった。それにしても駅の
「え~ 髪型ちょっと変えて、少しだけお化粧しただけなのに? 最初メッセンジャーで変なこと聞いてくるからびっくりしちゃった」
「そうだよね。本人に対してあの人誰だか知っている? って普通は聞かないよな」
「私が必死に話題作りしたのにな。目指したものと違う意味で成果は出たので良しとはしますけど。あれって、あのまま学校いけないから一つ前の駅で降りて化粧はおとしたりしていて結構手間がかかっていたんだよ」
「あのままでは学校は行かないのか?」
「私は地味っ子ですから。目立つのが嫌いなのにじゃんけんに負けて生徒会の書記にならされたので、これ以上学校で目立つのは嫌だったの」
「え~ なんで? 可愛いのに」
「あまり可愛いを連発しないでください……照れるよ」
「可愛いのだからしかたないよ。それにスズカはきれいな髪もしているんだから、バイトのときの1本縛り以外の髪型も見てみたいな」
そういってスズカの髪に手をのばしてつい頭を撫でてしまう。
俺のその行為にうっとりするスズカだったが、急に真っ赤に。
「あ、ごめん。つい妹の頭撫でる感覚で手を出してしまった。すまない」
「あ、止めないで。もっと撫でてくれたら……許す」
「おほん。お取り込み中のところ悪いのだけど夕飯の支度できたから来てってさっきから何度も呼んでいるのだけど?」
光枝さんが扉から覗いていた。
慌ててスズカと離れて、光枝さんに謝罪する。
「ふふ、構わないわよ。よっちゃんとはもっとイチャイチャしていたから、わたし。凉ちゃんには内緒ね、そういう事言うとまたヤキモチ焼くから!」
口元に人差し指を添えて、シーッとやるようにして笑う。
「まあ、どうでもいいから早く来なさい。折角の夕飯が冷めちゃうわよ」
「「はーい」」
光枝さんの作ってくれた夕飯を皆でいただく。凉太郎さんはもう相当呑んだのか顔が真っ赤っかで非常にご陽気だった。最後は泣いてたけど……
帰りは辺りが真っ暗になっていたので軽トラに自転車を積み込んで光枝さんに自宅まで送ってもらった。
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