第25話 震源地は仲良し夫婦 8/4(火)
今日も2話です。連チャンで流しますのでお間違えなく。
コチラ1/2話です。
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昨夜家まで俺を送ってくれたのはスズカのお母さんの光枝さん。
スズカも一緒に行くと言い張ったが、残念ながら軽トラは二人乗りなので物理的にも法的にも不可能だった。
お父さんの凉太郎さんは『涼風に彼氏ができたことはめでたい』と喜び、俺と面通しをした後、早々からお酒を飲んでいたにも関わらず『俺が彼氏くんを送っていくぞ』と息巻いて車に乗り込もうとしたようだが光枝さんに一発殴られて撃沈。光枝さん怖い。
万が一、過去の二人が別れなかったら、この人が父の妻で俺の母親……はないな。母さんからじゃないと俺が生まれないからそれはないのか。ただ、そのもしもが現実化していたら俺もスズカもこの世に存在することはしなかったと言うだけだ。
帰り道、光枝さんに父さんの子供のころの話をたくさん聞けたのは良かった。父さんも子供の頃はやんちゃだたんだな。今はだらしなくおとなしい仕事人間だというのに。
家に帰った時、父さんがいれば面白いという思いといないでほしいという思いが交錯していたけど、20時前に父さんが帰ってきていることは稀で、且つ連休明けだから余計に在宅であることは考えられなかった。
帰宅すると父さんは不在だったが母さんは既に帰ってきていたようで、スズカのお母さんと和気藹々の話をしていた。
聞き耳を立てたけど、父さんとは幼馴染だって程度で思い出など細かい話はしていなかった。お互いの子供の交際についてありがとうございますだのよろしくおねがいしますなどという言葉だけが聞こえてきていた。
でも光枝さんは母さんに対して父さんのことを「よっちゃん、よっちゃん」と親密な様子を伺わせる思わせぶりな言い方はしていたから、今夜父さんが帰ってきたら、母さんと一悶着ありそうな予感がなくもない。予感というよりもう悪寒かもしれない。
光枝さんの表情を伺うといたずらに成功したかのような顔をしていたので絶対態とやっているであろうことが分かった。可愛らしいけどめんどくさい人だ。
帰宅したことをスズカにメッセージで報告。
何か聞かれたか何を言われたか、ひっきりなしにメッセージが飛んでくるけど、帰り道は父さんの話題しか出なかったので安心してほしい。
そう伝えると「それはそれで微妙な気分になるね」と最期にメッセージが届いた。
確かにね。
娘の交際相手に対して
お互いの両親ともそれぞれラブラブなので、うちの父さんとスズカの母さんにナニかが起こるって事はなさそう。あったら困るけどさ。
「松ぼっくりに火が着くってやつにならないといいよな」
そうメッセージを送ると直ぐ既読がついて返信があった。
『無壱くん。それ、焼けぼっくいに火がつくだよ。ニュアンス的に似ているだけで全くあっていないから、他では言わないようにね!』
…………もの凄く恥ずかしくて、これ以上無いほどの身体の熱さと止まらない汗に手に持っていたスマホを落としてしまった。
「お兄ちゃん。どうかしたの? なんだかこれでもかってくらい真っ赤だけど、平気?」
「なあ双海。松ぼっくりに火が着くって知っているか?」
「うん。焚き火とかで着火剤代わりになるって、キャンプ芸人が言っていたよ」
「ああ、うん。もう良いや……」
「そ? 変なお兄ちゃん」
「おはよう、お兄ちゃん」
今朝は双海と母さんが朝ごはんと弁当を作っている。
珍しく母さんがこの時間に家にいる。
「お母さん、今日は
それでどうせならと、双海と両親のお弁当を一緒に作っているらしい。
そう。俺の弁当スズカが用意してくれるから、両親と双海の分だけでいいのだ。
双海は昨日俺が自宅で夕飯を食べなかったのが気に入らなかった様子で俺が帰宅するまでプンスカしていたみたいだけど、今朝はいつもどおり美味しい朝食を用意してくれている。
母さんは突然半休するし何故かずっとニッコニコして鼻歌まで出ている。俺は昨夜父さんの帰宅前に疲れて寝ちゃったからどうなったか知らないけど、光枝さんのことでいざこざにはならなかったみたいでホッとした。
母さんの様子を見る限りは、いざこざどころか良いことが有ったかのような感じだ。そして双海によると出勤前の父さんはやけに眠そうに新聞を見ていて、たまに舟を漕いでいたそうだ。
寝不足なのかな? 連休をとった後だからって無理はしないでほしい。
朝食を食べながら俺はさっきからスマホでネットのニュースを見ているけど昨夜の地震の記事がない。寝ぼけて薄っすらぼんやりした記憶しかないけれど、昨夜家がガタガタ揺れていたような気がするんだよな。気のせいだったのかな?
バイト先に出勤すると今日は日用品の倉庫に回された。
洗剤類って重たいし、柔軟剤のこの匂いも苦手だ。
匂いが嫌だと社員さんに言ったら、活性炭入りの使い捨てカップマスクを渡された。
暑いからマスクをするのは嫌だったけれど、装着すると匂いが気にならないレベルまで低下したのでそのままつけて作業した。
お昼になったのでマスクを外すとマスクの中から滴り落ちる汗、いやはや、やばいね。
急いでスズカの待つ食堂に向かうと既にスズカはお弁当を出して待っていてくれた。
「遅れてごめん」
「いいよ。それよりもどうしたの? 無壱くん、口の周りにまあるく線がついていておもしろフェイスだよ」
スズカの作ってくれた弁当を食べながら話をする。
なんだろう。すごく幸せな気分に浸れる。
スズカの作ってくれた弁当は以前のような茶色ベースのやつではなく、葉物の緑色やトマトの赤、かぼちゃの煮物などが入った彩り豊かなものだった。しかも美味しい。
「こんなに沢山のおかずを作ったのでは大変じゃないのか?」
「ううん。残り物とかも使っているからそれほどでもないよ。彩りも栄養も完璧なところまでは達していないしね。目標は双海ちゃんだから強敵だね」
双海なんて目指さなくてもスズカの料理は美味しいのにな。
「そう言えばさ。あした、どこ行く? なにか希望とかってあるか?」
実は初デートの約束は、月曜日の昼休み中にしていた。
「あしたも暑いみたいだから涼しいところに行こう。こう毎日暑いと涼しさが恋しいね」
「あしたがこの夏一番の暑さになりそうだって言っていたからな」
海とか山に、せめてプールでも行きたいけど今日の明日じゃ準備が足りない。暫くプールにも行っていないので水着も持っていない。
「そうだよなぁ~ じゃあ、定番だけど映画見に行こうか?」
「うん。評判のいい恋愛映画が先週から公開されているよね。でも、無壱くんは恋愛映画なんか見ないかな?」
「いいや、俺はスズカとなら何でも良いよ。男女交際初心者の俺たちには恋愛映画が良いじゃないかな」
「えへへ。じゃあ、それを見に行こうね」
午後は食品倉庫に回されたけど、相手は須藤くんでスズカじゃなかった (・д・)チッ……
「僕ですみません」
「いやいや、良いんだよ。俺こそごめん。じゃあ、チャッチャと片付けてしまおう!」
そんな俺は不満そうに見えたのかな???
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