第26話 プランA/B 8/5(水)
今日も2話です。連チャンで流しておりますのでお間違えなく。
コチラ2/2話です。
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駅でスズカと待ち合わせ。
駅前にある郵便局前の
田舎の駅前には噴水もないし、待ち合わせ場所に丁度いいオブジェなんてものはない。
噴水なんて子供の頃連れて行ってもらった何処かの遊園地で一度見たことがあったぐらいだと思う。
だからこの周辺の住民はみんな駅前の郵便局然りコンビニ然りを待ち合わせ場所にしている。最悪、通勤通学時間帯でなければ改札前でも十分待ち合わせ場所として機能する。
初デートくらいは待ち合わせで『待った?』『ううん。ぜんぜん、今来たところ』なんてことをやってみたいじゃないか? スズカとの初デートは一度限りなのだからさ。
それで欅の木の下を待ち合わせ場所にしたんだ。夕方から夜にかけては群れで飛ぶよくわからない鳥がピーチクパーチク
いつもの駐輪場に自転車を停めると急いで欅の木の下を目指す。待ち合わせ時間の30分以上も前に着いてしまったけど、スズカを待たせるよりは俺が待ったほうが断然いいに決まっている。
駅の入口の階段を通り過ぎて、欅の木までは20メートルぐらい。欅の木の下には男性が一人いるだけなのでスズカより俺のほうが先に着けたようだ。
「無壱くん!」
「へ?」
うしろから声を掛けられ振り向くと、駅の階段をスズカが降りてきているところだった。
「おはよう無壱くん。随分早いね」
「そういうスズカだって早いじゃん。まだ、待ち合わせ時間の30分ぐらい前だぞ」
「だって、待ち遠しくって家でウロウロしていたら、お母さんに目障りだから早く行っちゃいなって追い出されちゃったんだよ」
「ははは。追い出すとかすごいね。じゃあ、今日は送ってもらったんじゃないんだ」
スズカのお母さんは朝採り野菜を収穫後、道の駅に納品して帰ってきてゆっくりしようとしていたところにスズカがウロウロしているものだから邪魔くさくて早くに出かけさせられたそうだ。邪険にされる程ソワソワとうろついているスズカを思い浮かべると面白いしカワイイ。
今日は思う存分楽しまなくてはな。
ただ、それより前に俺には大事なミッションがある……
「す、スズカ。今日はまた…その…すごく可愛らしな。そのワンピースもとてもスズカに似合っていていい感じだよ」
「‼」
双海にまずは挨拶より前に彼女の服装や容姿を褒めること、とキツくお達しが出ていたので頑張ってみた。
ファッションなんてこれっぽっちも分からないので、見たまま自分の気持ちを素直に伝えた。
スズカはもじもじと俯いているが、見えている耳が真っ赤なので照れているようだ。
なんだコレ。すごく可愛い。こんなにも可愛いスズカを見ることが出来るならこれからもどんどん褒めていくことにしよう。
「こんなにも可愛いスズカの横に俺が並んで歩けるなんてホント嬉しいよ」
「も、もうっ‼ それ以上言わないで!」
あれ、ちょっと頬を膨らまして怒らせてしまった? え? 何で???
「あ、なんかごめん」
「いやいやいや、謝らないで! 恥ずかしかっただけだから。無壱くんもすごく爽やかでかっこいいよ」
「へへ、ありがとう」
出掛けに双海のファッションチェックが入ったからな。
俺が最初に来ていた服は、双海の目の前で全部脱がされて、着替えさせられた。
妹の眼前でパンツ一丁にさせられる兄貴ってどうよ?
まあ、おかげでまともなファッションはしてもらえたので妹には感謝しています。
ただ、ポケットに自分のパンツを仕込んでいやがったので発見速ゴミ箱行きにしてやった。
『あ~んっ、ちょっとした悪戯だよぉ~ そのおパンツお気になんだから捨てないでよ』
『まず初デートの兄のポケットにハンカチ代わりにそんなモノ忍ばすんじゃねえよ!』
なんて一幕が朝あったのだけどな。
「双海ちゃんのコーディネートなのかな?」
「え? わかる?」
「だって、無壱くんファッションに興味がありそうに無いんだもん」
「はは、そりゃそうだな。じゃあ、暑いしちょっと早いけど行こうか」
俺はスズカの手をとって駅の階段を上がる。
スズカと手を繋ぐのは躊躇すると何時になっても繋げないと思ったので勢い任せだ。
手を振りほどかれたりしないで、逆に握り返されたので安心したけどお互い恥ずかしくって手は繋いでいるのに暫く顔をみることが出来なかった。
設備の良い大きな映画館に行こうということになり上りの電車で1時間ほど行った先にあるシネコンに向かった。
あれこれとデートプランを練ったもののコレと言った妙案が浮かばず、昨夜結局また双海に相談してしまった。
それで、出来上がったのが、音響もスクリーンもよいシネコンでの映画鑑賞。見終わったら、シネコンのビルの裏手にある小さな隠れ家的カフェで昼食の予定。予約もバッチリ。
食後はシネコンの入った複合施設内でゲーセンに行ったりショッピングをしたりして、暗くなるまでにスズカの自宅まで送っていくと言う予定だ。
テンプレのような気もしなくもないが、妙にしっかりした案だったのでそのまま採用させてていただいた。
情けないことに双海様さまなのは否めない。次からは自分でしっかりやろうと思う。
★★★彡
「すごく楽しかった」
今はもう自宅最寄り駅を離れ、スズカの自宅に向かっている最中。
スズカは朝、駅までコミュニティバスで来たらしいのだけど、夕方にはその便に丁度いいのが無かった。俺は自転車を押しながら、スズカと並び歩いて家まで送っていく。
バスがなくてよかったし、もしバスがあっても俺が送っていくことを提案していた。
違法なのは分かっているけど田んぼ道を自転車の二人乗りで夕日のなか送っていくっていうのも有りかなって思っている。
空を真っ赤にしている夕焼けがキレイだ。もう少し歩こう。
「無壱くん。今日は楽しかったね」
「うん。俺も楽しかった」
「流石双海ちゃんプロデュースのプランAだね」
「え゛⁉ し、知っていたの?」
マジか? 恥ずかしい。
「私も初デートなんてどうしたらいいか分からなかったから双海ちゃんに無壱くんの好みとか聞いていたの」
「あ、そうなの?」
「で、双海ちゃんが『それなら最高のプランA/Bを考えるから』って」
「受験生なのに世話を掛けてしまったな……」
「お兄ちゃんたちが楽しんでくれると勉強にも張り合いが出るって……」
「そうか。俺もあいつの勉強をしっかりと応援してやらないとな」
双海には帰りに高級なアイスクリームをお土産に買って帰ってやろう。
ん? プランA/Bとか今言ったような気がするけど気の所為かな?
凉風は双海に提案された二つのプランの片方、プランBを無壱に告げることは出来なかった。
「……お兄ちゃんの部屋の本棚にあるエッチい小説みたいな展開のプランBはもう少し待っていてね。いつかお兄ちゃんにも教えてあげるからね。ニシシシ」
昨夜布団の中で、双海はいったい何者なのだと、凉風が驚愕していたのは言うまでもない。
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