第15話 君は? 7/27(月)~29(水)

本日も2話投稿。

コチラ1/2話目です。ご査収ください。


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 夏休み3日目の月曜日。


 何が悲しくて夏休み入ったばかりなのに制服を着て学校に通わなければならないのか?

 赤点をとって補習授業を受けるためよりは大分マシだが、俺はみんなで宿題くぎょうをやるために学校に向かっている。

 そのの中には本当に赤点で補習授業がある輩が若干名いるけどな。

 なんだかんだ言ったところで結局のところ、みんなの自宅もそれなりにバラバラなので、一同に集まるとなると学校が手っ取り早い。


 中学が同じだった雅義も俺ん家と近いと言えば近いけど、俺ん家が田園地帯の奥の方なので、歩いていくには憚れるぐらいには離れている。雅義が電車通学を嫌がるのも駅から自宅が遠いからというのも理由の一つ。一番は満員電車が大嫌いという理由なのだけどな。俺に言わせりゃ彼のお宅はだいぶ駅チカ物件なのですが……

 雅義の自宅から駅まで徒歩で10分弱、学校最寄りまで電車で30分、駅から学校まで徒歩でもバスを使ってもルートのせいでだいたい同じ15分かかる。

 自転車なら自宅から学校まで直行して1時間弱で着いてしまうらしい。雨風を厭わないなら面倒はないということらしい。俺はその風雨が嫌なので電車通学をしていますけどね。


 閑話休題。

 さて学校に着いたらそのまま自習室に真っ直ぐに向かう。教室は補習授業が行われているので近寄っては邪魔になるしそもそも用事がない。


 自習室はエアコンも効いていて涼しいので、態々登校して宿題や受験勉強に励む生徒も少なくない。自習室がいっぱいなら図書室でも勉強はできるが図書室では私語厳禁なので、わからないところの教え合いさえも気を使ってしまうので友達と一緒に来る人が自習室で、独りで来た人が図書室で勉強するような棲み分けができている。


 直克と水琴は1~2時限目に英語の補習授業を受けている。3時限目が小テストで4時限目に答え合わせと追加宿題授与式(笑)だ。


 二人が授業を受けている間に俺と新、雅義と陽向は通常の宿題を粛々と進めていく。

 陽向は学力が学年6位だけあって、わからないところを聞くとだいたい答えて教えてくれる。

 どうしても分からなければ、補修が終わった頃を見計らって職員室に行ってみれば誰かしら教科の先生は居るものだ。生徒が夏休みでも教師は普通に出勤しているものらしい。


 宿題をやる合間、合間に夏休みの遊び計画をたてる。

「この前言ったとおり、お盆明けで社会人が少ない17~21日ねらいでどう?」

「学生は夏休み真っ最中で空いている確率は低いけどな」


 喧々諤々の議論の末――




 ――結局、去年と一緒で陽向のオジサンの別荘という名の実家かつ空き家に行くことになった。議論なんてしてないけどな、本当は。


 有名な観光地も程々近くにあって、駅からもちょっと離れているけどバスが通っているから交通の便は大丈夫。最悪、近くにオジサンの義理のお姉さんが住んでいるから頼るといいって言われていて、去年もお世話になったんだっけな。

 そこは所謂古民家ってやつで、オジサンの奥さん、オバサンの実家で今は誰も住んでいないけどオジサンが管理していて、釣りや登山に行くのにたまに使うのだってことだった。

『妹が相続したけど、使いみちはないし壊すのはお金かかるし、農家なんで手続きめんどくさくて売るに売れないしワタシもお嫁に行っちゃったからいらないもんだから困っているんだ』って去年もオジサンの義理のお姉さんがぼやいていた。


「雅義と私で跡を継いじゃってみる?」

 それもいいわよね、と義理のお姉さんが笑っていた。

 本当にそうなったら面白いんだけどな。なんかそうなるような予感もしなくもない。




 というわけで去年の同じ4泊5日男女混合旅行でこの夏の計画は決まった。

 借賃は去年とこれも一緒でその家の掃除。少なくとも半日は必須になるので覚悟が必要。掃除用具は去年と違い向こうで用意してくれるとのこと。 

 去年は掃除用具がなくて近所に借りに行く羽目になったんだよな。






 翌日の火曜日は補習授業はなし、昨日遅れをとった直克と水琴は、写し取る、は最終手段にしてちゃんと自分の頭で考えて宿題をこなしていく。

 出来上がっている答えを写し取るだけじゃ赤点は回避できないことが身を以て分かったのでしっかりやっている。




 水曜日。今日で一応みんな一緒に宿題をするのは終わりの予定。

 水琴は物理の補習授業で1~2限目まで捕縛されている。


「英語の小テストもクリアできたんだから物理もなんとかなると思うんだよねぇ~」


 こんな思いするなら日頃からちゃんと少しずつ勉強するって豪語していたから今後は平気、なハズ。



 一方、夏休みの宿題はほぼ8割方終わった。

 どうせならこのまま旅行前までには全部終わらせておこう。


 但し明日からお盆までは毎日バイトだ。朝から出勤して、夜は……宿題をするけど、スズカと話もしたいよな。


 最近は毎日スズカと連絡をしているので、完全に習慣化しているし、楽しみと言っても言い過ぎではないような気がしてきている。

 リビングに居るとピコンという着信の音が鳴る度に双海がニヤニヤしてくるで若干ウザイが、双海も週末からは受験勉強漬けになるんだから仕方ない、見逃してやろう。




 今はみんなと別れて帰宅の最中。自宅の最寄り駅に18時には到着。

 旅行の予定立てていて遅くなったとはいえ夏の夕方は長いので暗くなるまでにはまだ余裕がある。

 下り線のホームに降り立ち、改札に向けて階段をのぼる。


 栄えていないかつ夏休み中の駅とは言え朝の通勤通学時間帯と夕方の帰宅時間帯はそれなりに乗車客が多い。しかも上り列車も丁度到着したようで改札はそれなりに混んでいた。


(ん? あの娘だ!)


 毎朝、目が合っていたあの娘が僅か数メートル先にいた。朝のような化粧はしていないので何時も見ていたときよりおとなしめだけど、彼女であることは明白。人の顔を覚えない俺でもあれだけ毎日顔を合わせていたら流石に覚えた。自信はないが。


「ねえ、君!」


 俺は思わず彼女に声をかける。

 彼女は振り向きざまに俺と目が合った途端、ダッシュで改札を抜けて行ってしまった。


 やっぱり彼女だ!


 人とぶつかることも憚らない様子で走り去る彼女の姿が見えなくなる瞬間、キラリと彼女の耳元からなにか落ちていったのが見えた。


(え? 逃げられた? 避けられている? なんだ?)


 俺は呆然としながら遅れて改札を出ると、さっき彼女が人とぶつかったときに落としていたと思われるピアスが床に落ちていた。運良く誰にも踏まれていなかった。


(星型のピアス?)


「どっかで見たような気がするけど、どこだっけな? 珍しい形でもないので勘違いかもしれないけど……」



 俺はそのピアスをなくさないようにティッシュに包みバッグに仕舞った。



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続けて投稿しますので、よろしく願いいたします。星もね!

次回7月終わります。

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