第40話 土産を買うだけ 8/21(金)

今日は二本投稿。こちら1/2です。


>>>>>


 予定変更。


 お義姉さん夏バテで寝込む。


 久しぶりに日中は若い連中と買い物という名の遊びをして、挙げ句夜は夜で結構呑んでいたので一気に疲れが出たらしい。

 熱中症ではないとのことで、そこは安心した。


 最初の予定ではアニメにもドラマにもなった某漫画で有名になった湖の辺りに行く予定だったけど中止。


「だから、今日は双海ちゃんも含めて全員でレンタサイクル借りて道の駅にお土産を買いに行こう」


 日向が言うには、明日はオジサンが迎えに来てくれるけど、オジサンは御殿場で一仕事終えた足で迎えに来てくれるのでのんびり土産など買っている時間は無いそうだ。

 明日は朝から布団を干したりシーツを洗濯したりしたら、帰りの用意をしてオジサンを待つだけになる。14時ぐらいには来てもらえるそうなのでそこに向かって動くだけだ。


 さて、明日のことは明日やるとして、今日は土産を買って終わりなのか?


「道の駅の横に富士山レーダードーム館ってやつとふじさんミュージアムっていうのがあるから、ソッチも見てみようぜ」

 説明を日向から雅義が引き継ぐ。でっかいアウトドアメーカーのショップもあるらしい。例の漫画にも出ているようだ。

 俺は比較的インドア派だけど今度スズカんちの裏庭でキャンプするのも面白いかもしれない。自己所有の山でキャンプ。そんな動画配信者がいたよね、なんてスズカと話をする。


 ちょっとだけお店を覗いてみるのもいいかもしれない。


 それにしても日向と雅義のコンビネーションはいつもながら素晴らしい。コイツラ、普段はおちゃらけていそうだけど、そこら辺の話のつなぎ方とかがとても自然だ。

 俺とスズカもお手本にしたいと思ってしまう。


「それで、帰りに余裕があれば温泉に入っていきたいと思いま~す」

「え? 温泉。あるんだ」


 俺が疑問を言うと水琴が答えた。

「昨日、水族館に行ったときね~ 川の反対側に温泉の文字が見えたの~ ウチが調べたら日帰り入浴OKだって!」


 ほう、案外と近くじゃないか。時間があえば温泉もいいかもしれない。


 親にも久しくそういったところには連れて行ってもらえてないからな。双海の受験が終わるまでの辛抱だけど、来年度は俺が受験生だ。そうそう遊んではいられない。


「私、行きたい!」

 双海が一番乗り気のようだ。ぴょんぴょん跳ねてはしゃいでいる。


「じゃあ、早速用意して行くとしよう」

「お~」(みんな)







「いくら曇っていたって暑いものは暑い……」

「ほぼ平らだったのがせめてもの救いだったな」

 新と直克がぼやいている。二日連続で乗り慣れていない自転車は辛いのかもしれない。


 毎日自転車通学の雅義は全く動じていない。いつもの通学時間の半分以下だから当然といえば当然か?

「双海も大丈夫そうだな」

「これくらいはなんとも無いよ。ばっちこーいだよ」

「山越えでも無い5Kmぐらいなら私も大丈夫だよ」

 双海もスズカも全く問題なく平気そうだ。


「そうだな、若干1名だけはゼイゼイハアハア言っているけどな」

「も、もう~ ウチはか弱いんだから仕方ないのだよ~ むーちゃんっ」

 メーター級のカンパチも捌けるぐらいなのに自転車で5Kmも保たないとはよくわからない。

 アレを捌くほうが体力いると思うんだけどな。

 一度水琴ン家の店で、水琴の親父さんと水琴が一緒にカンパチを捌いているところを見せてもらった事がある。

 あのときの水琴はかっこよかったな……今目の前でヘタれているやつと同一人物だとは思えない。


 外で一息ついていても暑いだけなのでミュージアムの中にとりあえず入る。

 展示品は目を引くものも勿論あるのだけれど、まあ、よくあるタイプの展示なので余程富士山に興味がない限り真剣には見ないかもしれない。

 そんななか、直克が異常に興味を示していたのが面白かった。

「来年度の受験がしっかり合格で終えられたら、登ってみたいんだよね」


 道路挟んで反対側の富士山レーダードーム館も「へ~」って感想だったけど、直克だけはしっかりと掲示物、展示物をよく見ていた。

 いつもは悪ふざけばかりの友達の見せる真剣な表情ってドキッとするよね。


 俺も夢中になれるものをスズカ以外に見つけてみたいと思うよ。スズカを超えることはまず無いだろうけどね。


 スズカを見つめると、スズカも見つめ返してきて二人の世界を形成してしまう。

「おまえらここ数日でちょっと変わったよな。人前でもちゃついてさ……なにかあったのか?」

「「どきっ」」

「あは! わっかりやすっ」

 日向に小バカにされた。悔しい……


「まあ、進展があって何よりだぜ。電車のときから一月ぐらいか?」

「いや、もうちょっと経っている。あのときは雅義にも世話になった」

「あ、あの節はごめんなさい」

「いいって、いいって! 二人が仲良く慣れたんだからそれでいいよ。な、日向」

「そだね~ あたしらも負けていられないよ! まーくん」


 その後アウトドアショップを店内一周だけ見て回り、道の駅の軽食コーナーで昼飯を食った。

 食事が済んだ者から順次隣のお土産屋さんに突入していくのだけれど、かれこれ1時間近く店から出てこない、女性陣が、ね。


 我ら男性陣は買うものをあっという間に決めたのだけれど、女性陣は未だ店の半分も見終わったか、いないかぐらいだ。

 同じところを行ったり来たり、手にとっては戻し、また他に移ってはもとに戻るの繰り返し。


「まあ、時間も無いわけじゃないし、いいんじゃないか?」

 雲が晴れて、顔を覗かしてきた富士山をスマホのカメラにおさめながら新がそんな事を言う。

「そうだな。明日には帰っちゃうんだし、十分満足してくれるならソッチのほうがいいもんな」


 俺の答えに、雅義や直克も頷く。それから男4人でソフトクリームを舐めたりしながら、40分が経つ頃にやっと買い物が終わって女性陣が帰ってきた。


「スズカに双海。満足したか?」

「「うん」」

 そいつは良かった。日向も水琴もホクホク顔なので満足していることだろう。

 後は温泉に浸かって身体を休めたらぐっすり眠って明日に備えよう。



 温泉は小さいながらもいいお湯だった。もうこのままここに泊まっていってしまいたいぐらいだ。

 全員が揃ったところで温泉宿を出る。


 ぐ~

 誰かの腹がなった。


 真っ赤な顔しているから、双海だろう。育ち盛りですもの(笑)


「ふっっふふ。お腹すいたね! 今日はなんとオバさんに遊びに連れていけなかったお詫びと言ってお食事奢っていただけます!」


 日向が高々と宣言するけど、奢ってくれる店はあるのかい?


「はい、そこの無壱くん。どうせまたうどんか、せいぜい蕎麦だろう? って思っていないかい?」

 人差し指を立ててチッチッチッと左右に振る日向がうざい。


「あ、お義姉さんがあそこの洋食屋さんの前にいるよ! ヤッホイ」

 双海がお義姉さんを見つけて全員がそっちに向かってしまう。

「日向、行かないと食いっぱぐれるぞ?」


 雅義や、オチが先にバレて灰になっているからはやく連れて行ってやれよ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る