第4話 知らない人 7/9(木)

投稿時間が一定でなくてスミマセン。

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 駅のホームで出会う彼女。上り線、下り線の別々のホームで視線を交わすだけの人。


 彼女は確実に俺のことを見ているし、毎朝目を合わすことだけを目的にしているような気がする。いや、ただ目を合わすことが目的だとしたら、彼女の存在を認知する以外その先になんの成果も発生しない。だから、彼女は俺と目を合わせ、彼女が何者であるかを俺に知らせようとしているのではないかと思う。あくまで勝手な想像の域は超えないけれども。


 だけれど、彼女がそもそもナニモノなのかがぜんぜんわからない。


 同じ駅を使っているということは、小学校や中学の時の同級生や先輩後輩だったりする可能性もある。が、俺は小中、そして高校と同級生先輩後輩の女性との接点がゼロではないにしろ殆どないので、例えば中学の時の誰それと言われてもさっぱりわからない。



 小中学校のときの知り合いという可能性がいちばん高いと踏んで、ずっと一緒の雅義に一緒に電車で通学してくれと頼んだが無下に断られた。


「無壱、俺はな、あの満員電車っていうのが大嫌いなんだ。だから、遠くても雨風が辛かろうとも自転車で毎日学校に来ているんだぞ」


「そこをなんとか、雅義様……」

 拝んでみるが、頷いてくれない。手伝うって言ったくせになんだよ。あ!


「……ご褒美、いらないんだな。陽向に言っておく」

「よし、一回だけだぞ。何時に待ち合わせだ?」




 いつもの時間を待ち合わせ時刻に指定し、雅義も遅刻せず駅に来た。

「うわ~ 人がいっぱいいるじゃないか。こんな田舎町の駅なのにどこから人が湧いてくるんだよ……」

「湧いてくるって、雅義の自宅の周りだって結構な住宅地じゃないか? ああいう人達の多くが通勤通学でこの駅を使っているんだから仕方ないさ」


 文句ばかりの雅義を宥め、乗車待ちの列に並ぶ。


 当然並ぶのは7時27分の当駅始発便の列だ。雅義がぐずったので先頭は確保できなったけれど、まずまずの好位置を確保できた。

 だけれども肝心の彼女が反対側の下り線ホームのいつもの場所に並んでいない。


「おい、無壱。お前の意中の彼女はどこにいるんだ?」

「いや、意中とかそういう言うのいらないけど、見当たらないんだよ……」


 どこに居るのかキョロキョロと探し回すと俺らから見て左の先に彼女を発見した。


「いたいた、あの子だよ。左の方の列の先頭の女の子。分かるか?」

「あ゛? 見えないよ、俺の視力舐めんなよっ」


 視力裸眼で2.0の俺と、メガネ矯正でやっと両眼視力1.2そこそこの視力の雅義では見えるものが違う。

 じゃあ、近づいて……

 そう思ったら丁度電車がホームに入ってきてしまった。仕方なく目の前の車両に乗車し、彼女のいた辺りを目指し車内を移動することにする。


 ただ、運行障害のせいで今日に限ってほぼ満員に近い車両内は移動が困難。混雑した車両内を嫌がる雅義と一緒に無理に移動するのはそもそも他の乗客等周りの迷惑にしかならない。移動するのは早々に諦め、いつものドア付近で身構えたところ電車は出発した。

 ゆっくりと速度をましていく電車。彼女がいるであろう車両まであと数メートル。

 一瞬すれ違う車窓に彼女と目が合う。ちょっと微笑んでいたかも?


「雅義、みえた?」

「何が? 俺は視力も悪いが動体視力はもっと悪いぞ?」


「じゃあ、なんでテニスなんてやっているんだ? 球が追えないだろ?」

「あれは趣味? 勝負とか拘らないし楽しければいいじゃん」


「はあ…… ま、お前ってばそういうやつだよな」

「はっは。さすが無壱。無駄に長い付き合いではないな」


 結局彼女のことは今朝も何も分からず仕舞いで終わってしまった。

 ただ、やっぱり俺が何かしら余計なアクションを取ろうとすると彼女の方はそれを避けるような行動をとっているってことは分かった。


 試練なのか?

 やっぱり私は誰でしょうクイズだったりする?


 ただ悪意は感じないし、むしろ好意さえ感じる。まったく過去に接点もない人にあのような行為を毎日することは無いだろうと思うので、絶対にどこかで会っているはずだと俺は思う。だけど、どこに接点があったのかはまったくもって未だにわからないんだよなぁ……


「なあ無壱」

「なんだよ」


「まだ着かないのか?」

「どこに?」


「高樹駅」

「まだ一駅しか通過してないぞ? まだまだあと20分ぐらいは乗っているようだから」


 雅義は満員電車に既に辟易した様子で早くも降車したくて仕方がないらしい。


「なあ、無壱」

「今度はなんだ?」


「さっきの女の子だけど」

「何かわかったのか?」


「知らないやつだった。見たこともないから、小中学校は一緒じゃないな」

「そっか。サンキュ」


 雅義は結構顔が広いので、雅義が見たことないって言うことは、彼女は学校つながりでの知り合いでは無いってことが確定したようなものだ。


 ただしこうなるともうどこの誰なのか、全く想像できない。でも俺のどこかでの知り合いなのだろうな、多分。

 よく行くコンビニのアルバイト店員? 何時もレジは男かオバちゃんだな。

 後は……あれ? 俺ってあまり出歩いていないな。

 買い物はコンビニかネットだし、外に出るのは学校かバイトだけ。

 偶に出かけるのもだいたいで隣町に行ったりするぐらいだ。

 女性との交流が全然ないのにあの彼女が誰なのかのアテすら見つけられない。



「どうだった?」

 学校につくと陽向が聞いてくる。


「知らないやつだったってことが分かった」

 雅義が答えたが、なんとも身も蓋もない答えだ。


「なーんだ。結局なんにもわかんないんだねぇ~ むーちゃんの愛しの人は」

 水琴がいちいちうるさい。


「ふりだしに戻ったというか、スタート地点からまだ一つも動いていない気がしてならないんだよな」

 ホント何も変わっていない。


「見つめ合う~視線のレイザー・ビームで朝空に描く 色とりどりの恋模様 この星の片田舎の4つの瞳が素敵な事件を探してるのさ♪」

 直克が調子外れの歌声をあげて、くだらない替え歌を歌い。


「じゃぱーんっ」

 新が合いの手を入れる。


 ちょとだけ面白かったので良し、としておこう。


「だけどよ。無壱」

「ん? なんだよ雅義」


「お出かけは何時も妹と一緒ってさ。お前ってシスコンだったのか?」

「なにそれ? 妹と出かけるのって普通じゃないなのか? それに何時もじゃない」


「確かにお前の妹はかなり可愛いとは思うけど……」

「お前には妹はやらんぞ。あと、直克も新もな!」


陽向と水琴が┐(´д`)┌ヤレヤレってポーズとっているけど、どうした?



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夕方にもう1話放ります。

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