第42話「四触即発」


 「.........」


 何だかしっくりとこない。ものすごく自分にとっては良いことなのに、しっくりと来ない.......。本当に違和感しかない。


 呼ばわりした上に、さらにノルマの5を取れなかったのに......


 な、何も今日のところはおとがめなし?

 しかも終始笑顔で?


 は?

 な、何で。い、いや逆に怖い.......。

 どういうこと? いや真剣にどういうこと? どういう意図?


 ポカリくれたし.......。


 「.......」


 と、とりあえずあいつの気が変わらないうちに早いことずらかろう。

 田辺くんと菊田くんはあれ以降完全に消息を絶ってしまったけれど......まぁ今回ばかりは俺が悪い。逃げ遅れた俺が。

 それにしても怖いな。今回も念には念を入れてこっちの人通りの少ない方の出口から帰ろう


 それにしても今日も普通にまだ明るい。

 ほぼ夕方なのにまだ真昼間みたい。

 まぁ天気がものすごく良かったしな。


 って、あ.......。な、何で。

 

 ま、またあの娘があっちの木の横の自販機のところにいる。

 こっちに向かってものすごい笑顔で手を振って.......。

 先週もだけど何で.......。

 た、確か、佐竹さん......だっけ?


 やっぱりちょっと遠回りだけど、戻って違う方の出口から帰ろっかな。

 か、可愛い子だとは思うけど、やっぱり先週のこともあるし意味がわからなさすぎて怖い.......。


 こ、このままゆっくりと後ろに......


 「Apanhadoふふっ、やっとつかまえた


 ん? って、え!?


 「え?」


 な、な、なんでここに!?


 「Tammy!?」


 ほ、本当になんで.......


 「もう。ヨウスケ、ダマッテドッカイッチャウナンテそんなの

サビシすぎるじゃない」

 「え? え? しかも何で日本語を?」


 な、何でタミーが日本語を話して......?


 「フフ、ヨウスケともっとオハナシするためにズットがんばっテタにキマッテルじゃない。おひろめシヨウとオモッテタラどこかへいっちゃうんだモノ」

 「え? も、ものすごくうまいじゃん」

 「フフッ、キョウのプレーもさすがだったわよ」


 す、すげぇ。

 

 「え? で、でも本当に何で日本に?」


 あ、違、い、いや違わないか。日本語で別にもういいのか

 え? でも


 「フフ、そんなのヨウスケが二ホンにいるからにキマッテルじゃない」


 お、おおやっぱり通じる。

 す、すげぇ.........。本当に話せる。

 た、多分、意味的には彼女が思っていることとはかなり違う意味で話してしまっているんだろうけど、何となくわかるのはわかる。


 「す、すごいな」

 俺でも6年いてそこまでうまくならなかったはず。

 現にサッカーと日常で使う言葉ぐらいは話せるようにはなったけど。

 全然理解できない言葉もあったし。というかかなりあったし。

 本当にすごい。


 「フフ、アリガトウ。Te amoあいしてるわヨ。ヨウスケ」

 「お、おう」


 お、おお、久しぶりだ。

 このハグをされながら頬にキスをされるも初めのうちは全くなれなかったけど、さすがにもう慣れた。いや、慣れてないけど慣れないと仕方なかった。文化みたいだからな。

 ま、まぁこんなにガッツリと力強いハグをしてくる必要性があるのかどうかはわからないけど、そこは個人差なのだろう。

 ブラジル人は情熱的と言うし、全体的にこっちよりも距離感が近いから。


 ただ、サッカーづけの生活っていうのもあったんだろうけれども今思えば向こうで仲良くなった女性ってタミーぐらいか。

 別に嫌われている様な感じはしなかたっし、被害妄想なのかもしれないけど。何故か他の女の子は何かを恐れる様な感じであまり俺に近づいてこなかった。

 何というか、やっぱりあれは俺とは別の何かを........

 別に俺、女の子に恐れられるようなことはしていないし......

 まぁ今となってはどうでもいいし最後までわからなかったけれど。


 「ちょ、な、何を洋介くんにしているのかな? タミーさん」

 「え? あぁついこのマエぶりね。Raposa f女狐êmeaアイリちゃんじゃない。あのトキはをどうもアリガトウ」

 「ふふっ、どういたしまして! で、洋介くんに何をしているんですか?」

 「フフ、ただののアイサツよ。のね」


 あれ? いつの間にか佐竹さん?も隣に......

 というか話しを聞いている限り二人は知り合い?

 ん? なんで? あとRaposa fêmeaってどういう意味? わからん.....


 「へ、へぇー、その洋介くんの首に両腕を回して、ずっとおでことおでこを合わせながら媚びに媚びた視線をこれでもかと送り続けるその行為も、なんですか?」


 ん?こ、媚びた視線?

 え?これって普通の挨拶なんだよな?

 ん?


 「フフッ、ゴメンナサイアイリ。ワタシまだニホンゴカンペキではナイ。ちょっとナニをイッテイルかわからなかったカナー」

 「へ、へぇー、そうなんですねー」


 ん? 何だ。

 二人ともものすごい笑顔だけど、な、何か違和感が.....

 え? 何?


 「ふふ、ならアイリもその挨拶試してみたいなー。今後ブラジルにも旅行してみたいと思ってたし。練習の為にもそこ代わってくれます? タミーさん♪」

 「フーン、フフ、でもアイリにはちょっとまだハヤインじゃない? ねぇヨウスケ」


 「へ?」

 早い? てか、ぜ、全体的にどういうこと? 


 って、え!?


 「えー? なんでー? 別に早くなんかないよねっ、洋介くん♪ ね♪」


 え? いや、え? 

 ま、また、な、何で俺の腕をむ、む〇に.......

 え? か、勘違い? で、でもそれは、あ、明らかに......

 ちょ、え.....いや本当に何を

 そ、そんな柔ら.......


 「ね♪ 洋介くんも愛梨の練習につきあってくれるよね♪ 今日のプレーもほーんんっとに最高だったよ♪ 愛梨感激しちゃった!」

 「え、あ、え....あ」


 や、柔......


 「ウーン、チ、チョットアイリ、それはハシタナイんじゃないカなー」

 「へぇー、そっちがそれ言いますー?」


 って、タ、タミーも、い、いつもより長すぎない....か?

 そ、それに、そ、そんな、タミーまで.....

 

 え、な、何、本当にこの状況......

 へ?え.......? 


 お、俺、今......何を.....している?



 「え、な、何をしているの......?」



 ほ、本当に俺は何をしてた......っけ



 って、ん!?

 い、今の声



 「え? れ、玲奈!?」


 な、何で玲奈がここに.....!?



 「え? な、何この状況!? さ、サッカーのこともそうだけど。え? 佐竹愛梨!? そ、それに、この前のあいつをボコボコにした.........。え? よ、洋介と何をしている.......の? え? な、なにこれ」


 え?


 「あっ、いました松坂くーん!!!! 仲居くんが打ち上げ........に? え? な、なんですか、これ?」


 え? 山岸さん?


 「ど、どういう状況です......か? は、白鳳のマネージャーさんに、あ、え?さ、佐竹愛梨ちゃん!? あと、き、綺麗な外国の人......ですか? え?」

  

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