第22話「クラスメイトと才能」


 すごい。やっぱり異質だ。

 松坂くんと田辺くんは。 


 何故だろうか。こんな朝っぱらから二人で怖いぐらいに濃密に抱き合っている.......。


 男同士で。それも皆がいる教室のど真ん中で.......。

 松坂くんに至っては何か涙を流して喜んでいるみたいだし。

 またまた意味がわからない。全くわからない。


 「........」


 でも、蓋を開ければそんな彼らもサッカーに関してはものすごい才能の持ち主......

 まさかの僕と違って他の数少ない1年生の子たちも.......。 


 はぁ、昨日の試合でも僕は全然だった。

 また僕はここでも.......。


 彼らはあんなにすごかったのに.....。

 

 やっぱり僕は君の言っていた様に辞めた方が良いのかな。サッカー。

 


 ―――——「おい! 才能ないんだからもう高校ではサッカー辞めた方がいいぜ。てか、ここでも3年間もベンチで何で辞めなかったの? マゾなのか? ハッハッハッハッ、あんなに練習しておいてずっとベンチだろ。俺なら辞めるどころか惨めすぎて死んじゃうね」――――—



 中学の終わりに、同じ学校だったあの松坂君に皆の前で言われた言葉の通りに......。


 多分、これからもまたベンチ......。

 サッカーは好きだし、やっぱりこのまま辞めるのは悔しかったからこの学校でも続けては見たけれど。結局ここでも僕はもうね.......。


 どうせ僕はいくら頑張っても才能のある奴には勝てないんだし。


 うん......。辞めよう。

 確かに続けるだけ惨めになるだけだ.......。


 それに、ここにいるのは全くの別人だけど。

 どうしてもという名前を聞くと気分が悪くなってしまう。


 まぁいくら人数が少ないとは言え、深田先生も僕が辞めると言ったところで止めないだろう。

 なんせ、3年間一緒にいた奴に名前を間違えられる僕だ。

 僕の名前はじゃなく.......。


 「皆、おはよう」


 どうせ僕は脇役。


 「大好きだ!田辺君んんんんんんんんんんん!!!!!」

 「松坂殿おおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」


 尚も抱き合い続けている彼らの様に目立つこともできないし.......。

 まぁこういう目立ち方はしたくないけれど......。

 

 とりあえず、後ろにいる先生にもまだ気が付いていないみたいだ


 「よし!あのババアが来るまでにブツの引き渡しを」

 「うむ。早急に」


 ふっ、何で君たちはいつもそうなんだ。


 「ババア? 誰のことだ」


 まただよ。まぁ見ている分には面白いからいいけども。


 「「え? って、あ、あ、あっ、あ、ちが、あ、あっ、あ」」


 とりあえず、体の良い退部理由でも考えて放課後すぐにでも言おうか。




 はぁ.......人生って不公平だよな。


 

 

 

 


   

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る