第16話「うろ覚えと勘違い」
さすがに今日はいないみたいだな。
え? いないよな。
昨日は散々な目にあったから注意しないと。
よし、今日はいない。家の前には誰も待ち構えてはいない。
まぁ玲奈もそんなに暇ではないよな。
良かった。
昨日のあいつはほぼほぼ意味不明だったから。
『私は松坂を好きとかそういう感情は全くないから!わかっているよね。勘違いしていないわよね。ねぇ本当にわかっているわよね!』
いきなりそんなことを夜、家の前で言われたけれど。
もちろん当たり前だ。そんなこと勘違いしようがない......。
久々に会ったかと思えば、何で人のことを被害妄想バリバリの危ないストーカー勘違い野郎的な扱いにしてくれてんだ。
しかもあんなにぐいぐいと迫ってきやがって。
全力でわかっていることを主張しておいたけど、ほんと何であんなにほっとしてんだよ。
普通にショックだぞ。おい。
人間としてショック。
え? あいつの中で俺って一体どうなってんの.......。
嘘だろ? 俺ってそんな変な奴だったっけ.......
か、勘違い野郎認定されてる?
って、え? いやいや、ちょっと待てよ。
よく考えたら、玲奈と駅で会った時......
皆の視線があいつに向いた一瞬の隙に俺は田辺くんとサイン会へ逃げたけど
あいつもしかしてあの後にも変なことを言ってたりなんて.....
あれ? そう言えば今日、何か山岸さんがものすごくよそよそしかった気がする......。
いや、まぁサッカー部の奴らには何を思われてもいいか。
むしろ軽蔑されて辞めることができる可能性も?
いや、やっぱり勘違い野郎みたいに思われるのは一番いやだな。
『まぁわかっているんだったらいいけど。ほんとないから。ち、ちなみにこれは私までバカに思われるのだけは癪だから言ってるだけよ。か、勘違いはしないでね』
その後も玲奈の口撃は止まらなかった。
俺、何もしていないよな......。
なのに何で。
本当に勘違いの仕様もないのに。
もしかしてアレか?
確か、あいつのおばさんが言ってたっけ。
こいつとあっちの松坂をくっつけたいみたいなことを。
しかも玲奈もまんざらではないとかかんとか。
めちゃくちゃ早口だったし、ベラベラと長時間喋られたせいで途中から内容は頭にほとんど残っていないけどそんなことを言っていた様な気がする。
なんせもう聞いているフリをして全く別のこと考えていたから完全にうろ覚えだ。
ほんと長かったし。
でも、高校まであいつに付いていくぐらいだし、やっぱりそういうことなのだろう。
それをおばさんから聞いた俺が自分のことだと勘違いしているんじゃないかと思ってこの口撃か......。
なら辻褄もあうな。
あくまで私が好きなのはお前じゃなく、あっちの松坂だと言うことをあんなに熱心に俺に説明して。
でも、本当に勘違いなんてしてないし、あんな言い方をしなくてもな.......。
ま、あいつは昔からあんな感じか。
でもそうか、玲奈はそんなにあいつのことがね.........。
俺がいなかった6年間でそういうことにねー
まぁ俺には関係ないけど.......。
そうか。
まぁ、そうなったか。
そうか。
とりあえず、昨日のあいつものすごくやりきった顔で帰っていったな......。
満足気に......。
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