第15話「深田先生」
それにしても松坂。こいつは一体何者だ?
まさか、こんな掘出しモノをこの学校で見つけられるなんて思ってもいなかった。
田辺もそうだけど、こいつは特に半端がない。間違いなく本物だ。
モノが違う。
でも、本当に運が良かった。
もし、あの時に私がたまたまグラウンドを眺めていなかったら、こいつは間違いなくそのまま埋もれて出てこなかったであろう。間違いなく100%の確率で......。
「先生すみません。明日はちょっと親戚の法事があるのでお休みを頂きたいです。さすがに法事なら仕方がないですよね。さすがに法事は休ませてもらわないと僕も困りますよ。場合によっては教育委員会も――」
「ほう。そうか、松坂もか。確かついっさっき田辺も親戚の法事で休ませて欲しいと私に言いに来たよ。すごい偶然もあるもんだ」
「へ、へぇー、グウゼンですねー」
「あと、お前のお父様には既に今週のお前の予定を聞いているんだがなぁ、一言もそんな言葉はでて来なかったなぁ」
「グ、グ、グウゼンですねー」
なんせこの通り、何故か本人はサッカーをすることに全く乗り気ではないみたいだからな。何故か隙あらば地中へまた戻ろうとする。何故かは本当にわからんが。
「で、教育委員会が何だ?松坂」
「すみません。ちょっと自分勘違いしていたみたいです。なのでとりあえず明日は出ます。あー、あれ来月の話だったか、ちょっとまた確認しときますね」
「わかった」
そしてとりあえず、こいつは嘘がものすごく下手だ.....。
別に私はお前のお父さんにそんなことは一切聞いていない。カマをかけただけだ。
中学生みたいな嘘をつきやがって。
ちなみに平日ではあるが田辺の方はまさかの嘘ではなかった。
当然、あいつは希望どおりに学校ごと休ませる。
まぁ、私も教育者として松坂にもそこまでの無理強いをするつもりはない。ただ、言葉とは裏腹にどうしてもサッカーををしているこいつの姿を見ていると手放したくなくなってしまう。サッカーをやらせたいという気持ちになってしまうのだ。
スイッチが入った様に人が変わるこいつを見ていると。
本当にサッカーが嫌いな人間はあんな目をしないはずだから。
とりあえず、今度じっくりとこいつの過去については聞いてみたいとは思っている。色々と謎な部分が多いしな。
こいつの強さの秘密や、なぜこいつほどの男が中学の記録にでて来ないのかなど、本当に聞きたいことは山程ある。
それになんだそのふてくされた顔は
逆に可愛くなってきたぞ。おい。
というか、顔も悪くない。
なのに何でこんなにこいつはサッカーの話なるとこんなに残念な奴になるんだ。
別に担任として見ている限り、頭も全然悪くないし。
謎だ。
ただ、でもやっぱりこいつは面白い。
あの松坂陽介と同じ名前というのも面白いが。正直私の見る限り、あっちよりもこっちの方が.......。
ふっ、面白い。
蓋を開ければ、他にも今年は面白い奴等がいることだし。
転属先が三峰と聞いて正直期待はしていなかったが、中々どうして。
悪くない。むしろアリだ。
私も個人的にお返しをくれてやらなきゃいけない奴もいるしな。
まぁ、それはあくまで二の次だが。
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