第38話「ギア2」
「なっ.....そ、そんな」
あ、だ、駄目です......。
まさか、まさかあの轟木兄弟が白鳳ではなく守城にいたなんて......。
こんなの、こんなの......
3-2
こ、後半が始まってまだ半分ぐらいしか経っていないのにも関わらず、もう2点も......
あの松坂くんでさえ彼ら二人にはもう完全に抑えられて.......
萌香、さっきまでは本当にすごいと思っていたんです。
いや、すごいんです。松坂くんがすごいのは変わらないんです。
現に松坂くんは先生がおっしゃっていた通り、今まではまだ100%じゃなかったんです。
だから今日のさっきまでの彼のすごいプレーを見て本当に驚愕していたんです。
で、でも彼らはそんな松坂くんをさらに......
信じられないけれど、彼らなら確かにあり得ない話では......
「な、こいつ等、なんでこんなに。以前よりも.....」
仲居くんもかなり頑張っていますがまだその彼らを攻略することができていません......。
それに田辺くんはもう体力が完全に。
彼ら轟木兄弟の二人がすごいことはもちろんわかっていましたが、ま、まさかここまでとは......
最後に萌香が見た時よりもさらに.......
って、また抜かれて!
って、え、な、何で、また!? な、何で今ので鳴らないの?
おかしい、おかしいです!
そ、それにあ、駄目です。
そのまま行かれたら、あ、駄目です、あっ
ま、またホイッスルです.......。
こ、これで3点目。
こんなにあっさりと同点に追いつかれるなんて......。
やっぱり萌香たちでは守城には.......
それにあの天才たちには......
それにあの人たち......
「へっ、やっぱり三峰なんて大したことじゃねぇか」
「あぁ、所詮三峰だ。俺達の相手じゃねぇよ。てか、あいつ見てみろよ。また倒れてるぜ。弱すぎだろ。弱すぎ。へっ、サッカーは格闘技って何かの漫画に描いてあったぜー。弱すぎると死んじゃうよー、はっはっは」
「そうそう。サッカーは生きるか死ぬかの戦いだからー」
くっ、許せません。
先生もさっきのプレーには抗議をしてくれていますが、巧妙すぎます。
審判さんは全く気が付いていませんでした。今の暴言もあっちには聞こえない様に
中学の頃に噂で聞いたことはありましたが、ほ、本当だったとは.....
この試合でもまた
なんで強いのに、強いのにそんな......
「き、菊田くん!大丈夫ですか!」
「う、うん。痛っ、ま、まぁ、だ、大丈夫、ごめん。ごめん」
「そんな!菊田くんが謝る必要ありません!」
くっ、こっちを見てニヤニヤして。
「おい、轟木、コラア!!!!! テメエらふざけんなよ!!!!審判もテメェどこに目ぇ「 仲居!!!!!!! 」
な、先生が怒鳴って。
って、そ、そうか。そうです。あんな暴言、審判さんに吐いたら仲居くんは.......
あ、危ないです
「で、でも.....って、あ? 何だよ。松坂」
「いや、すまん。全部俺が悪い」
え? 全部俺が悪い?
って、そのまま松坂くんはボールをセンターラインに静かに.......
「ほおぅ、お前は冷静なんだな。さすが、ちょっとはできるだけあるよ」
「へ、そうだな。そこでウダウダ言っているバカとは大違いだ。まぁそうだ。お前等が弱いのが悪いんだ」
「テ、テメェ、マジでこ「やめとけ.....仲居くん」
「ま、松坂でもこん......」
ど、どうしちゃったんでしょうか。
ただでさえ鋭いピッチでの松坂くんの雰囲気がさっきよりもちょっと.......というか、かなり
「いや、本当に俺が悪い。こいつ等の動きがあまりにも面白すぎてつい観察することに気をとられすぎちまったよ。俺の悪い癖だ」
な、か、観察?
「危ない。危ない。このままだとあの糞ババアにマジで殺されるところだった」
へ? ま、松坂くん?
「はぁ? お前、何意味わからねぇこと言っちゃってんの? 何が観察だよ。オメェはオタクか? 漫画の見すぎで頭湧いちゃってんじゃねぇの? ちょっとできるだけで俺らより普通に弱い癖にかっこつけすぎだろ」
「はっはっはっ、しかも、その構え。また得意のキックオフシュートでもするつもりか? ふっ、アホの一つ覚えかよ。だからそれはもう入らねぇって」
そ、そうです。
もうそのキックオフシュートはあっちのキーパーさんに止められてしまいます。
な、なんで、なんでなのにキックオフのホイッスルと共にまたその右足を大きく振りかぶって.....
あっ
って、うっ、み、耳が......萌香の耳が、キ、キーンって......
相手の.......ゴールポストに松坂くんが蹴ったボールが勢いよく跳ね返って、ものすごい音が萌香の耳に.......
うっ......
「はっはっはっ、だから入らないって。バカなの? 俺らに完膚なきまでにドリブル封じ込められて頭おかしくなっちゃった? なぁ、零......って、ど、どうした零士!」
「ぐっ、耳が、耳が.......」
え、ど、どうしたんですか。
確かに、確かにうるさかったですけど、あそこまで.....って、あれ?
み、耳が......真っ赤?
「あー、外しちまった。確かに、忘れかけちまってたよ。そうだよ。お前等が言う通り、サッカーは生き死にの戦いだった。ようやく俺も本当の意味でギアが入った感じがするわ。ありがとな」
「な、て、テメェ」
「ぐっ......」
ま、松坂くん
「んで、次、舐めたことしたら、お前らマジで今度こそは決めるぞ、どこにとは言わねぇけど、本気でな」
「「くっ......」」
ま、松坂くんの迫力が、さ、さらに今までとは段違いで......
「ま、松坂」
「ま、もう俺のキックオフシュートで始まる機会は絶対にないけどね......。うし、行くか。仲居くん」
「お、おう」
こ、これって、も、もしかして松坂くんはまだ.......
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