第19話「仕方がない」


 それにしてもこっちでの2週間ってあっという間だな......。

 あっという間すぎるだろ

 もうかよ。早ぇよ。


 「くっ、そんで結局、初めから出されるのかよ俺は」

 あのババア......


 でも

 へぇー、期待の外国人ってあいつか

 確かに背も高いし、雰囲気はある。あるが、何だあいつ。


 投げキッス?

 イタリア人的な?


 そしてその視線の先には、笑顔で手を振っている女の子?

 誰だ。普通に可愛いけども。

 あいつの彼女か? あっちは日本人だな


 というか、既にフィールドに入ってもう試合も始まるというのにえらく余裕だな。

 

 まぁ、目を見たらわかる。

 あいつのそれは完全に俺達のことを舐めている目だ。

 俺もよくあっちに行った頃に受けた視線だ.......。


 おそらく俺達のことを敵とすら見ていないのだろう。


 「殺す、あいつ殺す」

 「絶対に潰す」

 「あいつ――ちゃんによくも、勝つ。絶対に勝つぞ」


 他の奴等もそのことにはさすがに気づいている様。

 さっきから殺気がすごい。

 ま、舐められたらそうなるよな。

 あんな目を向けられるとさすがにな.......。


 「ふっ」

 とりあえず皆はその殺気を糧に頑張ってください。

 俺は大人ですから君たちみたいに怒りなんてこみ上げてきませんし、冷静にやりますんで。

 負けたら引退!負けたら引退!

 期待しているぞイタリア人くん

 本気でやって負けたら仕方ないよね!うん。仕方がない。


 って、いよいよもう始まるな。

 とりあえず向こうボールからスタートか


 そしてキックオフのホイッスルと共にって......


 「マ、マジか!」


 キックオフのホイッスルが鳴ったと思えば、数秒後にはその外野の言葉と共に、もう次のホイッスルの音が俺の耳には聞こえてくる。


 「も、もう1点入りやがった。キ、キックオフシュートかよ。あの白人やべぇ」


 ほぅ.......


 「ヒュー、今日は愛梨ちゃんの為に10点決めマース」


 そしてまたさっきの女の子に投げキッスしている......。


 「宣言シマース。君タチが相手ならあと5分以内にまた1点ハイリマース。アレ?ソレダト20点イッチャウか!ハッハッハッハッ。愛梨ちゃーん。ミテクレマシタかー。アナタへのプレゼントデース」


 そうか。あと5分以内に1点入るのか。


 「へぇー.......」

 別に見ていた限り、今のはキャプテンが油断していただけであの程度ならもう次はないと思うけどな......。

 もしあれが本気ならだけれども――――――。



 そしてボールはまたセンターラインにいる俺のもとへ。

 仕切り直しか。


 「おい、松坂。わかってるよな」


 わかっているさ。仲居くん


 「はいはい。まぁ5秒かな」

 「おっしゃ!」


 とりあえず、ガッカリだ。

 いや、まだ始まったばっかだしわからないか。


 そしてまた俺の耳には試合の再会を告げるホイッスルの音



 「ハッハッハッ........ハ?」



 と共にまたホイッスルの音が聞こえてくる———————

 


 まぁ、本気でやって負けたら仕方がない。

 本気でやって負けたら.......。



 とりあえず、振り出しに戻っちまったみたいで残念だ.......。

 


 


 

 


 

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