第5話「松坂陽介」
「先輩さーん、何でさっきのとれなかったんっすかー?」
「ちょ、止めなよ。松坂。すみません先輩」
本当に最悪。
何でこいつはこういつも......
「あぁ? 何で止めんだよ、玲奈。取れなかったこいつが悪いんだろ?」
「おい、テメェ!お前まだ1年の分際で何を調子に乗ってやがんだコラッ!!!」
「はい。弱い奴ほどすぐ吠えますねっと。だからいい歳して2軍なんですよ」
「ぶっ殺す!!!!!!」
「いや、ちょ、止めて、止めて下さい二人とも!すみません。先輩すみません!」
今日もまた揉め事。
こいつは自分が認めた人間以外はゴミだとでも思っているのだろうか
確かにこいつは強い。強いことは私も認めている。
現に超名門高であるこの白鳳でも入部時点でもうスタメンはほぼほぼ確定している様なもの。
実際に天才といっても過言ではない存在なんだと思う。
中学の頃なんてほとんど真剣に練習なんてしていなかったのにU-15の日本代表に選ばれてさらにその中で活躍まで。
でも、本当にもうかばいきれない。だってまだ入ってから数日よ?
どれだけ敵をつくれば気が済むの?
バカなの?
ただ、その癖こいつは監督や、コーチ、1軍の先輩の前ではいつも良い顔をしている。
だから今みたいな態度をとっているところはまだ見ていない。
要するに人によって態度を変える屑でしかない......。
完全に調子に乗っている。
「あーそう言えば俺、週末に取材が入ってるんだったっけ? しかも相手は最近雑誌やテレビとかでも有名なあの佐竹愛梨ちゃん。やべー、絶対連絡先交換しよ。確か同い年だし。もしかしたらワンチャン、いや俺なら普通にあんじゃね? 今年の高校サッカーの応援スポンサーが愛梨ちゃんで良かったー」
「チッ、なめやがってクソが!」
「せ、先輩本当にすみませんでした」
本当にもう嫌.......。
「なぁ、玲奈? もし俺が愛梨ちゃんと付き合っちゃったらどうする? 玲奈的にそれは困んじゃねぇの?」
「は? あんた何言ってんの? 意味わからないんだけど」
「またまたー、俺を追いかけてここに来たくせにー。いい加減素直になれって、な、玲奈」
「さ、触らないで!それにそんなわけないでしょ!ふざけないで!」
本当にふざけないで。誰があんたなんかを追いかけて。
私がここに来たのはサッカーが好きなだけだし、
そ、それにもしかしたら、本当にもしかしたらあいつが―—————
まぁ、ママから聞いた限りでは結局あいつは違う高校、それにサッカーすらもう辞めてしまったみたいなんだけどね......。
もう私も辞めちゃおっかな.......
「ふっ、まぁお前は嫌でも俺に素直になるさ。なんせもうすぐ本格的に俺、松坂陽介の名前はこのサッカー界で有名になるんだから。はっはっはっ、松坂フィーバーってか?日本中が俺の名前を知ることになる。だから玲奈もほんと今のうちにちゃんと俺のこと捕まえておいた方がいいぜ?おい」
もう言葉もでない。
確かにこいつの発言は否めないかもしれないけれど、私がこいつに惚れることは万に一つもないから。
こんな性格最悪野郎。
ありえない
「なぁ、だから明日練習さぼってどっか行こうぜ」
「はぁ? ふざけないで。明日は他校の練習試合の偵察なの」
「チッ、しょうもねぇ」
何がしょうもねぇよ。
しょうもないのはあんたよ.......。
本当にふざけないで。
それにしても、あいつが帰ってきてからまだ会えてないな.....。
ママが何か騒いでたっけ? うるさいからあんまりちゃんと聞いてなかったけど。
てか、戻って来たんならあっちから会いに来なさいよ....。
ふざけてんの?
あいつの分際でこの私を待たせるなんて.....。
泣き虫洋介の癖に......。
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