第44話「洋介の部屋」
「ブ、ブラジルで6年間ずっとサッカー漬けの日々!?」
「あぁ、そうだけど」
そうだけど、何をそんなに大きな声で。
うるさいぞ。それに何でそんなに前のめりに。
近い......
「な、なんでよ?」
「いや、普通に父さんの仕事の都合だけど」
俺だってあの時はかなりビビったわ。
というか意味がわからなさすぎて泣いた。
10歳の少年つかまえて、明日からいきなりブラジルなっておかしすぎるだろ。
「な、ならなんで私に嘘をついていたのよ.......。そ、それに出ていくなら私に一言ぐらい....」
嘘?
「いや、ついていないけど。嘘? 何だよそれ。」
一体何の話をしているんだ。
こいつ、玲奈に嘘をついた記憶なんてない。
というか、何で昔みたいに俺の部屋にしれっと上がっているんだよこいつ。
ま、まぁいまさらだから別にいいけども.......。
何年ぶりだ?
「な、何だよそれって、お母さんから聞いていたのよ。あんたは、あんたはもうサッカーは完全に辞めたって」
「いや、そんなの言.......」
い、いや、確か言った様な記憶も......
あまりにもうるさすぎたし、サッカーの話ばっかりしてくるから......
「そんなの何?」
「いや、忘れたな。うん。ごめん、ちょっと覚えてないわ」
うん。覚えてない。
覚えていないからその目はやめてくれ......
それにお前には別に何の影響もないだろうが。
しかも今後隙あらば辞めるつもりだからあながち嘘でもない
「そ、それにあんた、変わりすぎよ。変わりすぎ!」
「え? 変わりすぎ? どこらへんが?」
あんまり自分ではわからないけど。身長とか?
それなら6年もあれば誰だって身長ぐらいは伸びるだろ。
現にお前だって.......
「そ、それは....その、アレよ......」
アレ......? 何だ急にそんな言葉を詰まらせて。
「そ、そう。サッカー、サッカーよ! な、あんであんなに上手くなってるのよ!やばすぎるでしょ! 少なくてもあの頃のあんたからは全く想像もつかないレベル? あ、あんなの普通にプロでも即戦力になれるレベルでしょ。あんなの......」
ん? 俺が? は?
「いやいや、俺がプロで即戦力? ふっ、冗談にもならねぇよ。そんな甘い世界じゃねぇよ。何言ってんだ。まだまだ俺には力が足りねぇよ」
あ、あんな化け物だらけの集団で即活躍なんてできるわけないだろ。
去年の終わりから今年の始めあたりに何度かあの中にいれられて練習させられた記憶があるけど、それはもう死にものぐるいでついていくのが精一杯だった.......。比喩とかではなく本当に.......
思いだしただけでもゾッとする。あの殺気が充満したフィールド。
あそこで即戦力だと? バカかよ?
「.......」
で、な、なんだよ。そのきょとんとした顔は......。
「そ、そう。さすがね。そういうところは昔から変わってないのかもね」
は? どういうことだ。変ってるっていったり変わってないって言ったり、意味わからんぞ......
「ん?」
んで、とりあえず結局こいつは何をしに来たんだ.......
「あ、あとそれと、そうだ。ちょっと、あ、あの時のアレは何よ! 洋介! アレは!」
「ん? あれ?」
また何のことだ。
さ、さっきよりもいっそう不満げな表情をして.......
さっきから本当に意味がわからない。
「あの女の子たちよ! な、なんであんたが佐竹愛梨と! そ、それにあの外国人の美女は何? も、もしかして向こうでの......か、彼女とか?」
は? な、何いってんだこいつ。
「タニ―が彼女? はっ、ないない。ただの友達だよ。友達。タニ―が俺なんて相手にしねぇよ」
何度も思いだしたくはないけど.......
向こうではタニ―以外に女性なんて全然俺には寄ってこなかったからな。
こっちでもモテなかったし。あっちでもな........
ふっ、そんな俺の彼女があんな美女タニ―なわけないだろ。
ほぼほぼ、からかわれた記憶しかない。
本当に何を言っているんだ
「じ、じゃあ佐竹愛梨は何なのよ。なんであんたが芸能人と!」
「芸能人? いや、あの娘のことはまじでわからん。まともに話したこともないし。いつも何故か試合が終わったら俺のことを待ち伏せしている.......」
芸能人? あー、確かに何かそれっぽいこと言っていた気もしなくはないな。
そんなに有名なのか? 後でちょっと調べてみようかな。
「ま、待ち伏せ.....? そ、それってあんたのこと......」
「いや、ないない。それはない。確か、彼女は彼氏いたし。それに彼女がいくらアレでもさすがにない.....はず。ってか何だよ本当にさっきから」
そんな真剣な顔で。
「ほ、ほんとに本当に? また嘘をついているんじゃないでしょうね? って、てか、な、なら彼女いないの........? も、もしかしてマネージャーさんと,,,,か?」
「いや、いないから......」
何だよ......。その質問。
も、もしかして俺のことバカにしてんのか? その歳にもなって彼女いないなんて嘘よね? ってことか?
くっ.......こ、こいつ自分が彼氏いるからって調子に乗りやがって。
「そ、そう。いないんだ......」
な、何笑っていやがる。こ、こいつまじで......。
別に俺はお前等と同じ土俵で戦ってねぇし。
「まぁ、俺には昔から心に決めた人がいるからな」
どれだけ俺はあっちでの生活を嫁に助けられたか。
特に向こうに行ったばかりの頃に嫁さんには本当に元気をもらった。
そう。俺には【巫女みこパラダイス】のメインヒロイン兼、俺の嫁
である”巫女ちぃ”様がいるからな。
別にお前だけが特別じゃねぇよ。
マウントをとってくるんじゃねぇ
「こ、心に決めた人......。そ、それってちなみに、だ、誰とか......」
いや、言ってもいいけど、絶対知らねぇだろ。どうせ。
それに二次元の奇跡を知らないであろうこいつは絶対にバカにしてくる。
嫁を嫁をバカにされることだけは死んでも許さない
「さあな。まぁ、ものすごく近くにいるってことは確かだから」
ふ、俺のポケットに入っているスマホの待ち受け画面にいつもいる。
24時間、ずっと傍にいるぜ!
「そ、そう......。よ、洋介.......。そ、そうなんだ......。洋介.......」
ん? なんだ。今気が付いたけど、なんでこんなに玲奈の顔が赤い.......
え? この部屋暑い?
いや、そんな気はしないけどな?
ちょうどいい温かさだけど。俺的には。
ん?
ま、一応窓開けておくか。
「ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポーン!!!!」
って、何してるんだ......あいつ
窓を開けたらものすごく知っている奴の姿が俺の家の門の前に......
「ピンポン、ピンポーン、こらー、お姉ちゃんここにいるんでしょー!!!!!!
ずるいずるいずるい! 恵里菜も入れてー!!!!!!洋介ー!!!!!!!!!入れてーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
じ、自分の口でピンポンを連呼って......
せめてボタン押せよ。いや、ボタン連打もいやだけど。せめて
本当に俺の家の前で何をしてくれているんだ。おい。
「ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポーンだよーーーーー!!!!!!!」
こんなの、い、入れざるを得ないじゃねぇかよ。
まぁ、こいつもいるしもう一人も二人も一緒だからいいけど......。
って、何だよ。玲奈。俺のことをそんなにじっと......
しかも尚も顔が真っ赤な上に、今度はモジモジと......
え?
も、もしかして漏れそう的な......?
嘘......だろ?
てか、本当にこいつ俺の家に何をしに来たんだよ......。
ん?
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