第3話「理想の高校生活」


 「おい、体験入部の期間は今日までだからなー。わかっているとは思うが一応この学校はどこかしらの部活には属してもらうことになっている。ちゃんと届けを提出するように」


 「いや、何でアニメ同好会がないんだよ.......」


 普通どこの学校にでもあるんじゃないのか。

 俺が好きな漫画やアニメの高校には絶対にあったぞ?

 何で? 何で本当にないの?

 しかも何で誰も興味ないの? え? おかしくない?

 皆、アニメとか嫌いなの?

 え? 俺、本当にどうしたらいいの?


 「おーい、松坂。何を朝からまたお前は一人でブツブツと言っている。入学早々孤立したいのかー?」


 「「「「はっはっはっはっはっはっ!!!さすが松坂」」」


 ん? あれ? 何だ、いつの間にか教室の皆が笑っている?

 何かおもしろいことでもあったのか?


 「おー戻ってきた戻ってきた。よーし、とりあえず松坂。お前は今日学校が終わったら私のところに来い。ふっ、何故か入る部活もまだ決まっていないみたいだしな。お前とはじっーくりと話たいこともある。あと田辺、お前もだ。一緒に来い」


 ん? 何でだよ?

 何この流れ


 あれ? 

 いや、ちょっと待て。


 も、もしかしてこの流れって。


 教壇にたたずんでいる先生も改めてよく見たら.......

 いやよく見なくても


 見るからに気の強そうな美人。それにスタイルも上から下まで普通にナイスな......。

 さらにおそらく歳も見る限りでは20代後半で、うん。左手に指輪もない。

 と言う事は、いわゆるあの、あの


 ”三十路”というやつ!


 し、しかも国語の教師!?

 まぁ白衣ではないけれど........。


 「おい、松坂。何を私のことをそんなにジロジロと見ている。入学早々、今度は先生に向かってセクハラか? お前」


「「「「「「「あっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!松坂やべー」」」」」


 でもやばい。これ確変入っただろ。


 「先生!喜んで放課後、職員室へと向かわけていただきます!」

 「ふっ、僕も」


「「「「「「「くっ、もう、もうやめてくれ松坂。笑いで腹が、腹が痛い。何で喜んじゃってんだよ、何だよ。何だよお前。しかもデブの田辺まで!!!はっはっはっはっ!!!!!!!!」」」」」


 「あ、あぁ。何で喜んでいるのかはわからないが来い。絶対に来い」


 おっしゃああああ!!!!


 ふっ、そういうことね。いいじゃないか。最高じゃないか。

 中々凝った演出をしてくれる。

 これはもう昨日みたアニメにもあったあの特別な部活への入部の許可が降りた様なもの。

 まぁそういうことならば、アニメ同好会ではなくてもやぶさかではない。

 うん。良いねぇ。

  

 一時はどうなる事かと思たけれど、これで俺も輝かしき学園生活にようやく一歩目を踏み出せるというもの。


 うんうん。やっぱ高校生活はこうじゃないと。


 「やりましたな。松坂殿」

 「ああ、田辺くん。俺達の時代が来たな」


 もちろん、この天パが似合う田辺君もこの確変には既に気がついているようだ。

 そりゃそうだよな。唯一、今のところ俺とものすごく気が合う奴なだけある。

 さすが、その鞄につけている超限定物の『奉仕くん』キーホルダーは伊達じゃない。

 ひとめ見た瞬間に同士になれるとわかったからな。


 でも、うんうん。本当にこれで俺の失われたこっちでの学生生活もようやく――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る