第27話「すごい子」


 はぁ......。

 結局、今日も辞めることができなかった.......。

 ったく深田のババア、ガチで覚えておけよ。あいつ


 ま、今日はこの田辺くんからのブツがあるから特別にオールOK!

 全部許してやるけどな。


 そう。やっぱり田辺くんは俺のスーパーマイベストフレンド。

 まさか俺の分まで買ってくれているなんて。 

 深田の邪魔が入らない様に俺まで欺くとはまさに策士だな。策士。

 天才だ。天才でしかない。漢泣き


 ふふふ、プレミアムピーチちゃんフィギュア

 今日はじーっくりと、この娘で楽しんでやるぜ。じーっくりとな。

 いひひひひ、嬉しさで笑みが朝からとまらない。

 

 って、もう家か。


 「ちょっとそこの人!」


 ん? 

 

 「あなたのことよ!ちょっと待ちなさい!」


 え......なに


 って、だ、誰、この子.......。

 よくわからないけれど、ものすごく何かもう面倒くさい予感がする......。

 見た感じ塾か何かの帰りっぽい風貌だけど.......。


 誰?

 

 とりあえず後ろを振り返る俺の目には今、どうみても小学生ぐらいの女の子の姿。


 「ふむふむ、いいじゃない」


 何がいいんだ......。

 何故か俺の周りをうろちょろとする彼女。


 「あなたが洋介?」


 そ、そうだけど何だ。マジで誰だ。

 というか何で俺の名前を知っている?


 「まぁ......。そうですけど」


 なんだ。何故か俺は、腕を組んだ仁王立ちの小さな少女にガン見をされている......。


 「うん......。全然思いだせない。思いだせないけどイケてるからあり!」 

 「........」


 見た目は普通に可愛い感じっぽいけど。

 そ、それ以上にちょっと痛いっ子ぽいオーラが尋常じゃない.......。

 も、ものすごくウインクしてくるぞ......。

 超下手なウインクを......。


 「そうですか.......じゃ」


 関わったら絶対に長い。俺の直感がビンビンとそう感じ取っている。

 絶対に。


 「ちょっと!ちょっと!ちょっと!まだ話は終わってないわよ!待ちなさい!」


 いや、この顔.......。

 よく見たら誰かに似ている気がする。この子

 い、嫌な予感がしてきた。似てないけど似ている。


 「すみません。忙しいので」


 俺の本能が早くこの子から早く離れろと言っている。


 「ふん、私の名前は佐久間恵里菜!10歳よ!」


 あ、あぁ、やっぱりそうか.......。この顔。

 玲奈の妹か......。

 い、今思えば確かいたな。あいつにものすごく小さな妹。


 そうか、でっかくなってこうなったか......。

 こうなったか.......。

 いや、どうしてこうなった......。

  

 「どう? 私の彼氏にしてあげようか? 洋介! してあげる!」

 「いや、結構です」


 やっぱりすごいな.....。この娘。


 「もう!なんでよ!恵里菜の彼氏だよ!恵里菜の!これってものすごく光栄なことなのよ!」

 「そうですか」

 「だからそうですかじゃないでしょ!って何よ。その大事そうにもってるものは!見せて見なさい!」


 ちょ、バカ、そんな強引に。


 「う、うああああ!!!!!プレミアムピーチちゃんだああああああ!!!!!!!!え、うそ、ピーチちゃんだあああ!!!!!!!!」


 って、うるさ。

 耳が。耳が


 「あ、ああ、ピーチちゃんだ。俺はこれからこのピーチちゃんの為に忙しいんだ。じゃあな」

 

 本当に一刻も早くこの子から離れたい俺は、そう言って我が家の門を開けて玄関へ


 「うふふ、私もピーチちゃん好きなんだー!」


 いや、え.......


 「ちょ、えーっと、君? ここ、俺の家なんだけど.....」

 「ん? 何?  知っているわよ。そんなこと」


 いや、ん? じゃなくて、な、何でついてくる......。

 ここもう我が家の敷地なはず......。


 「ピーチちゃん可愛いよね!私も好きなのよ!!」

 「........」

 

 だ、駄目だ。話し通じねぇ


 「ピーチちゃん!ピーチちゃん!」


 はぁ......。埒が明かねぇ。

 多分、このまま何を話しても彼女とは平行線......。


 まぁ隣だし、あいつの妹ならいいか........。

 というか、しゃあないか。

 いや、いいのか.....?

 でもこのままだと俺の貴重なピーチちゃんへの時間が......



 「ふふ、おっじゃましまーす!」



 「.......」



――――――――――――――――――――


明日もまた朝に更新します。

いつも読んでくださってありがとうございます。

 

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