第21話「超肉食獣」
「おう、さすがだな松坂!とりあえず一回線は突破だぜ!やっふぉおおお!!!みたかよあいつの面!」
あぁ、結局勝っちまったのか......
何だよ、あのイタリア人くん。あんなに大きな口叩いていた癖に、盛大なフリと共に勢いよく落ちて行きやがった......。
もしかして、ふざけてたのか......?
でも今日勝ってしまったっていうことは、つまり来週も1日潰れるということ。
はぁ.......。ため息しかでない。
あのババアがいる限り逃げられるわけもないし......。
何してんだよ。イタリア人くん。
「よっしゃ打ち上げ行くか!おら!」
そしてまたかよ。仲居くん。
行くわけないだろ。ほんと口を開けば打ち上げだな。
もちろん今日も俺は田辺くんと共に早くこのロッカーから退散す.....って、そうか。
そうだ。田辺くんは何か用事があるとか言って試合終了と同時に着替えもせずに速攻で帰ったんだ。
一体どうしたんだろう。
ものすごく慌てて帰ったけど。
今日って何かあ........
「な、何だよ、これ」
何気なく開いていた俺のtwitterには、行きつけのアニメショップから1通の通知が流れてくる。
「う、嘘だろ、おい」
あ、あの『ぶいかつオールスターズのプレミアムピーチちゃんフィギュア』が数量限定で入荷!? そ、それも本日の17時!?
え? 今は......じ、16時30分。
ここからなら.......
ま、間に合わない。無理だ。
え、嘘だろ。田辺くん。
な、何で教えてくれない。
俺達は盟友だよ......な? 嘘.....だろ?
た、田辺君.......
絶対これに行ったよね......。
「か、帰ろ.......」
す、数量限定だもんな......。
絶対に一瞬でなくなるし。
そりゃそうなるか......。でも、それでも一言ぐらい......
俺達の関係ってそんな......
「お、おい!松坂!打ちあげだぞ、打ち上げ! 何一人で帰ろうとしてんだ!」
「うるさい......」
俺はもう、色んな意味でショックなんだ。
一人にしてくれ......。
一人に......。
◇◇◇◇◇◇
「はぁ.......」
とりあえず、うるさい場所から離れたら喉が渇いた。
まぁ、力も入らないしゆっくり帰ろ.......。
あぁ.....空がまだ青いことだけが救いだ。
俺の心はもう暗い......。
って、ん? 誰だ。
自販機の近くからこっちに向かって女の子が手を振っている。
「ん?」
そして後ろを振り返ると誰もいない
ってことは俺か?
あれ? でも、よく見たらさっきの.......美女?
それに手招きされてる?
「ふふっ、松坂洋介くんだよね。どうも!」
あ、やっぱり俺だった。何だ......。
「どうも......」
とりあえずよくわからないけど、ものすごい笑顔......。
あと、よく考えたら何で俺の名前を知っている?
「ねぇ、今日の試合すごかったね。愛梨、びっくりしちゃったよ」
ど、どういう意味だ。
あ、もしかして、彼氏が負けたことに対する嫌味でも言おうとしてる......?
それならちょっと、というか、かなりめんどくさいぞ。わざわざ名前まで調べて
今の精神状態でまた何でこんな追い打ちが......
ちょっと真剣に勘弁してくれ。
もうジュースは諦めよう......
って、え? ちょ、な、何だ!?
「へ?」
って、き、気がついたら、いきなり俺の身体をベタベタと触ってくる目の前の彼女。
は?
「ふふっ、やっぱり逞しいねっ。身体も愛梨好みかも♪ すごい」
そして何故か唐突に上目遣いで俺のことを見つめてくる.......
な、なんだこの子
じーっと俺の目を......
じーっと.......
「ん? あれ? 」
ん?
何故かそのまま彼女は小さく横に首をかしげる......
「え、あれ? もしかして君、愛梨のこと知らなかったりする?」
「え? すみません。知りません」
ふ、普通に知らない.....。だ、誰だ。
ん? でも愛梨? この前にどこかで聞いた様な気が。
「ふふっ、そうなんだ。へぇー。だからそういう反応なんだねー。しかも鈍感さん?」
む、むしろ何で知っていると思った。
って、何だそのいたずらな目は
あと、そういう反応ってどういう反応?
ん? 鈍感さん?
「もしかして.....。でも、それなら辻褄が合うかも......。本当ならますますアリかも......」
しかも今度は何かを1人でブツブツ言いだしたし.......。
い、意味がわからない。
「ねぇ、ちなみに洋介くんは彼女とかいるの?」
そして何だその質問.......。
「いや、いませんけど......」
というか、何で俺も言われるままに答えてしまっているんだ......。
「へぇー、意外ー!」
い、意外?
「とりあえず、そう言うことなら愛梨のこと覚えてもらっちゃおっかなー。私も君のこと覚えたんだし。ま、いたところで覚えてもらうんだけどねっ♪」
え? 覚える?
って、な、何がしたい......?
彼女はそう言ってただでさえ短い俺との距離をさらに近づけてくる。
「ふふっ」
てか、これもう、ち、近すぎないか
って、あれ、こ、これ、よく考えたら、な、何か当たってないかもう、これ....え?
ど、どういうこと?
あいつの彼女じゃないの?
何でこんな.....
って、何だこの状況は......
「さすがにこれはそうだよね。良かった。もし駄目だならさすがの愛梨でも自信なくしちゃうところだったよー。で、ねぇねぇ、洋介くんは愛梨のこと覚えれそ......?」
覚えれられそう?
って、やっぱり近い。か、顔も近すぎるだろ......
な、なんだ本当にこの状況
え、あ、と、とりあえず変に動かないでおこう......。
こういう時は『無』だ。
向こうでもとりあえず、意味がわからない状態に陥った時は心を『無』にして早急にリセットとならった.....けど、あ、当たってるよね。やっぱりこれ。
何で......あ、『無』になれない。
な、何でいつもの様に意識を......
「ねぇねぇ洋介くん♪ ふふっ、何で目をつむってるのかなー とりあえず愛梨、洋介くんとlineが交換したいなー。そうすればきっと、もっと愛梨のこと覚えられるよね!」
え、line?
って、もう、もう普通に覚えた、覚えたから、ちょっと......
「ねぇ駄目? ちなみにこう見えて愛梨って結構有名なんだよ!交換しておいて損はないと思うけどなー」
有名?
「えー、これでも駄目ー? もっとー? でも、さすがにこれ以上は無理だよー」
こ、これ以上?
一体さっきから何を.....
いや駄目とかじゃなくて単純に言葉が.......
「ただ、洋介くんが愛梨を今後さらにもーっとドキドキさせてくれたら、将来的には考えなくはないかもよ♪ 今日以上にさ」
そして俺はふいに耳元で彼女からそうささやかれる。
ど、どういう意味? いや本当に.....
な、なんだこれ。
「って、あーあ、もう人が来ちゃいそうー。残念。ふふっ、でもとりあえずはい。これ、愛梨のlineのID ♪」
「え? あ、はい」
「絶対に連絡してね!あと、佐竹愛梨ってネットで検索してみて!絶対だよっ!」
「あ、はい.......」
「ふふっ、じゃあね♪」
た、助かった.....のか?
とりあえず彼女はもう、行ってしまった.......。
でも本当に、な、何だったんだ.....
ふ、不覚にもドキッとしてしまった......。
あ、あんな可愛い子からあんなことをいきなり.....
彼氏もいるのに.......
で、でもそうか、あ、あれがあっちでもよく噂になっていた、俗にいう......
ビッチ.........というものか。
は、初めてみた。
で、でもいくら可愛くてもビッチはな.......
エドソンもビッチにだけは気をつけろって言ってたし......。
昔は何度も騙されてしまったって......。
うん。やっぱり二次元だな。
うん。いくら可愛くてもビッチは駄目だ
危険すぎる.......
二次元こそが至高だ。
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