第48話 彼の返事
私は思い切って告白した。彼の返事を待つ以外、何もできない。
「えっと……ひかりちゃん?」
「はい」
「あの、それは、僕の病気のことを話さないといけない、ってこと?」そこまで考えていなかった。情けない。情けない。情けない。
「すみません、何も考えていませんでした。本名と病気のことだなんて、全く……」
「ま、いっか。リスナーの皆様。僕は大きな大きな嘘をついていました。
これで離れていくようなリスナーさんがいないことを信用して、言わせていただきます。……でいいんだよね? ひかりちゃん」
「そう……ですね」それ以外になんと答えればいいと言うのだろうか。
「僕は、会社勤めではありません。フリーランスで、自宅に引きこもりがちなスマートフォンアプリ開発者です。
僕はとても孤独に仕事をする日々の寂しさを紛らわせるために配信を始めました。
それと同じ頃、腎臓を患っていることがわかりました。
そして、いま……僕の1週間は、4日しかありません」
「隆二さん?」
「ひかりちゃん、本名フルセット出すの、やめてもらえないかな?」彼は笑った。
「そういうわけで、僕は、週に3回透析に通っている透析患者です。ヘルプマークを付けています。外に出るときだけね」彼はおそらく、ヘルプマークをリスナーさんたちに見えるように出したのだろう、コメント欄のざわつきが止まらなくなっている。
「そんな毎日を過ごしているところで、花ちゃんがこの枠に迷い込んできたんです。
おそらく本当に迷い込んで来たんでしょう、なにしろ花ちゃんは目が見えないのだから」
「はい……適当にスクロールしていました」私は正直に答えた。
「だろうね。だって、金曜夜なんて、僕の配信には誰も見向きもしない枠だったんだよ。花ちゃんが来てから、少しずつ賑わい始めたんだ」そうだった。確かに、コメント数の少ない枠を選んで迷い込んだのは間違いない。
「じゃあ、改めて。僕の残り時間をすべて差し上げます。だから、24日は」彼が言いかけたところで、コメントの読み上げがかぶり、彼の言葉が途切れる。
「さくらさん:花ちゃんには話したのでコメントで失礼します。花ちゃんの母親です。その日は私の誕生日ですが、娘をどうかよろしくお願いいたします」
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