第33話 聞き慣れた名前
そのまま彼だけと話していると、ある意味聞き慣れた名前で読み上げが流れた。
『名無しさん:全盲タグから来ました。私も目が見えません。仲良くしてください』
やはり、自分に名前を付けるのが苦手なんだな、以前の私を見ているようだ。そう思い、彼に提案することにした。
「名無しさんいらっしゃいませ! 私、最初の頃聞き専の潜りで、名無しって名前だったんですよ! それで、初めてコメントを打ったのがいま話しているアンブレラさんの枠で、アンブレラさんが私のアイコンを見て名前を付けてくれたんです!」
『アンブレラさん:そんなこともあったねw』
『名無しさん:素敵なお話ですね』
「で、アンブレラさん? この人のアイコンは何ですか? 名前を付けてあげてくれませんか? もちろん、名無しさんがイヤじゃなければですけど」
『アンブレラさん:おけまる』
『名無しさん:お願いします。41歳、男性です』
配信ツールと同時に名無しさんのアイコンを見るツールを使うことはできるが、私は敢えて何も使っていなかった。閲覧数を気にしながら話すのが怖かったからだ。
『アンブレラさん:インコ飼ってるのかな? 可愛いな。インコの名前は何?』
『名無しさん:ピピです』
『アンブレラさん:じゃあ、ププさん!』
『名無しさん:ありがとうございます! 名前、早速変えてきます!』
私とププさんは、盲人あるあるの会話を20分ほど続けて、初めての配信を終えた。アンブレラさんのコメントは、『なるほど』『そうなんだ』といったような内容がときどきあるだけだった。
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