第44話 見えない時間
夜の匂いがする。お酒を飲んでいるひとがいるんだろうな、と私は思う。
「隆二さん。私、慣れない靴なので少し疲れちゃいました。どこかで休憩しませんか?」
「あ、あぁ、うん、気が利かなくてごめんね。ソファが気持ちよくて、BGMが穏やかなお店があるんだ。そこでいいかな?」
「あ、はい。カフェとかでしょうか? 私、おなかもすきました……」恥ずかしかったが、正直に言った。
「えーと。ちょっと検索するね」隆二さんはスマートフォンを操作する音を鳴らす。
「食事だとミックスサンドにホットサンド、それから季節のスパゲティセット。スイーツなら苺タルトに苺のモンブラン。行く?」隆二さんは嬉しそうだ。
「じゃあ、是非そこで!」ようやくデートらしいデートをしている、そんな気がした。
***
隆二さんの言ったとおりの落ち着いたお店で、私たちは食事をすることにした。
「隆二さん、私、ミックスサンドとホットサンドで迷っちゃって、決められません……」
「ん? じゃあ、両方頼んでシェアすればいいんじゃない?」
まるで男友達に言うようにそう言った隆二さんだったが、私は高鳴る胸の鼓動の音を聴きながら、勇気を出して、言った。
「そ、そうですね。じゃあ、是非シェアさせてください!」
***
軽食とコーヒーを楽しんだあと、私たちはアップルストアへと向かうことになった。外はもう寒くなっており、時計を見ようとする私だったが、時間を忘れてデートを楽しもう、そう思った。
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