第22話 新しい日常

 朝7時。私はに対してどういう態度を取ればいいのかわからないまま、彼の枠を開いた。彼の優しい声が聞こえてくる。


「みなさまおはようございます。今日は、みなさまに大切なお話があります」


 読み上げ機能が追いつかないほどにコメントがざわつく。まさか、透析のことを……?


「といっても、大したことじゃありません。喜んでくれるリスナーさんと、悲しむリスナーさんがいるかな?」


 どういうことなの?

 私は、コメントを打てずにいた。


「花ちゃん、いますか?」彼は言った。

「ノ」私はわけもわからず、挙手だけをした。


「あぁよかった、来てくれてなかったらどうしようかと思ったよ。それじゃ、みなさまに改めて大切なお話です。この度、僕と花ちゃんは交際をスタートすることになりました。祝福してくださるとありがたいと思います。といっても、いつも通りの配信は続けますので、ご安心ください」


 祝福のコメントと、私に対する嫉妬のコメントがどんどん流れていく。


「金曜日の夜にでも、馴れ初めを話そうかと思いますので、聞きたい人だけ来てくださいね!」彼は笑いながら言って、今日だけはいつもより早めに配信を終了した。


 ***


 何が起きたのかよくわからず呆けていると、LINE通話の着信があった。相手も確かめずに出てみると、網谷さんだった。


「ひかりちゃん。さっきはびっくりしたでしょう? だから、直接通話しておきたくて、配信を早めに終わらせたんだ。あんなことされてもまだ、僕の残り時間を全部欲しいって思ってくれる?」

「もちろんです! 私たち、約束したじゃないですか!」


 7時半になり、彼はいつものクセなのか「そろそろ病院に行く」と言って通話を切ろうとした。


「網谷さん。今日はアップルパイが焼き上がる時刻に、ラムールで待ち合わせ、ですよ?」私はイタズラっぽい声を出した。

「あぁ、そうだったね。じゃあ、9時まで通話してようか」網谷さんは、少し照れくさそうな声を出した。

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